科学は未来をひらく 桐光学園+ちくまプリマ―新書編集部・編

僕は、最後に将来を決めるのは才能ではないと思う。最後はやっぱりガッツ。倒れた後に、もう半歩繰り出せるかどうか。
(本文引用)
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 最近、「読みたい本が見つからない」という声をしばしば聞く。私もなかなか見つからず、何日も足踏みすることがあるが、そういう時の秘策がある。
 それは、「好きな作家や学者が参加している本を買ってみること」。

 私にとって、その一人は「渋滞学」の西成活裕先生だ。というわけで、読みたい本が見つからず彷徨っていた私は、西成先生が参加しているという一点のみで本書を購入したわけだが、やはりドンピシャリ!間違いのない良書であった。
 (西成活裕先生による講義「とんでもなく役に立つ数学」のレビューはこちら
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 本書は、ちくまプリマ―新書編集部と桐光学園との共同で編まれている「中学生からの大学講義」シリーズの一冊だ。
 参加している講師陣は錚々たるメンバーで、科学史家・村上陽一郎氏、生命誌研究者・中村桂子氏、宇宙物理学者・佐藤勝彦氏ら8名である。

 これだけ聞くと、ひたすら豪華な人達を集めたのかな?と思いがちだが、読めばすぐに、「このメンバーで」「この順番で」授業を進めたことの意味がわかる。
 それぞれの専門分野はバラバラであるものの、見事に「科学が人類の未来を開いてきた道程」になっているのだ。

 まずトップバッター村上陽一郎氏は、科学=“science”という言葉の本当の意味を解説する。




 いざ「科学の意味は?」と聞かれても、たいていの人は困ってしまうのではないだろうか。「何か、理科系の~・・・」「医学とか宇宙とか~・・・」のような感じで、シドロモドロになってしまうのではあるまいか(私だけか?)。
 
 しかし落ち込む必要はない。なぜなら、そんな考えでは到底追いつかないほどの「驚きの解説」が、ここでは待ち受けているからだ。
 19世紀に、あるイギリス人がつくった“scientist”(サイエンティスト)という言葉。今では、誰もが普通に使う言葉だが、実はつくられた当初、“What an ugly word!”(「何て汚い言葉だ!」)と酷評されたという。
 まるで、今(2015年3月現在)注目のピン芸人・厚切りジェイソンの“Why Japanese people?”を彷彿とさせる反応だが、とにかくこの“scientist”という単語は、英語のルールをまるで無視しているとケチョンケチョンにけなされたのだ。
 
 しかしそこから、「科学」という言葉の本当の意味が見えてくる。これは思わぬハラハラドキドキの展開だが、結末を読むと「なーるほど!」と納得せずにはいられない。
 この“scientist”という言葉が認められるまでのルーツを読めば、「科学」というものの見方がガラリと変わること請け合いだ。

 その講義で「科学」の意味を知った後は、一気に“この世界”の歴史に突入。宇宙の誕生、生物の進化、人類の登場、人間が起こす様々な問題、文明発達の功罪など様々な講義が展開されていく。

 そのなかでも、読んでいて非常に楽しかったのは、やはり(個人的にファンである)西成活裕氏の「社会の役に立つ数理科学」である。
 西成活裕氏といえば、前述したように「渋滞学」で有名であるが、本書では、その渋滞学の解説と、そこに行き着くまでの軌跡が語られている。
 交通渋滞はもちろん駅の混雑や避難経路、パケット障害や商品の売れ残りまで解決してしまう、この「渋滞学」。今でこそあらゆる場面で活躍しているが、日の目をみるまでの道は険しいものだったようだ。

 それだけに、若者たちに向ける西成氏のエールには説得力がある。
 西成氏は「社会で成功する人とは、どのような人か」を焦点に、生徒たちに生き方・考え方を指南していく。
 大学合格のために何をすべきかではなく、大学卒業後に伸びるために何をすべきか。何をどう考え、取り組んでいくべきか。それについて西成氏は、「思考体力」と「多段思考」の概念を用いて切々と説く。
 その熱く且つ具体的なメッセージは、他の人がやらなかったことを、決して諦めることなく真剣にやってきた人だからこそ言えるものだ。
 本書に登場する講師陣は、いずれもオリジナリティあふれる研究で一角の人物となった方たちだが、西成氏の言葉は、そんな講師陣の生き方を全て言い表したものであろう。

 このように本書は、「科学」という言葉の意味から、科学が未来をひらいてきた歴史をたどる本であるが、私はこれら8つの授業には、こんな思いがこめられている気がする。

 「科学の扉をひらく君たちが、未来をひらく」

 老若男女問わず、未来をつくる可能性のある人全てに読んでほしい一冊である。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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