子どもの「10歳の壁」とは何か?~乗りこえるための発達心理学~ 渡辺弥生

 外国旅行をしたときに、現地の世界地図を見るのも、新しい学びを教えてくれます。オーストラリアではオーストラリアが、イタリアではイタリアが、地図の真ん中に描かれているからです!(本文引用)
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 いや~・・・・・・、勉強になった!今、「実のある読書」をした満足感でいっぱいだ。
 
 こう思うのは、わが家に小学生の子どもがいるからかもしれない。しかし先日、あまりに悲しい少年事件が起きたため、そんな個人的な事情を超越して本書に没入した。

 大人は子どもをどのように見つめ、どのように支え、育んでいくべきなのか。
 自尊心と社会性と道徳性をバランスよく持たせるには、どのように子どもと関わっていくべきなのか。
 それについて、発達心理学上「飛躍の時」とされる9歳、10歳に焦点を当てて解説していく。


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 まず本書では、様々なメディアで謳われる「10歳までの~」といった表現に惑わされないよう忠告する。
 「●●は10歳までで決まる」「9歳でつまずかないための××」・・・科学的根拠も示さずに、いたずらに親たちを焦らせる「10歳の壁」神話。そんなものに躍らされて、無闇に早期教育に走ることに、著者は苦言を呈する。

 だからといって、著者は「10歳の壁」神話を頭から否定するわけではない。「10歳」という年齢が、発達心理学上重要であることに間違いはない。そのうえで著者は数々の研究結果から、思春期直前の子どもとの向き合い方をじっくりと丁寧に説いていく。

 本書では、9~10歳を中心に、その前後の年齢の子どもたちの特性を細かく分析する。
 例えば「運動場でのボール捜し」では、6歳頃は一直線に見て帰ってくるだけ、8歳頃は捜す範囲は広がるもののあてずっぽう、10歳を過ぎてようやく計画性を持った経路で隈なく捜すようになるという。
 また「友達作り」も年齢によって大きく違う。最初は「物理的な距離(家、座席等)が近い子」が友だちだったのが、次第に心理的に似通った子と親しくするようになり、ハイティーンになると「個々の違い」も認めたうえで友情を深めていくという。

 その他、非常に多くの「10歳」「10代」の研究結果が紹介されているのだが、なかでも目を引いたのが、「複雑な気持ち」や「他人の視点」を持つことへの「道のりの長さ」だ。

 例えば、子どもたちにこんな質問をしてみる。
 
 「『台所で遊んではいけません』という注意を守らず、ふざけてお皿を1枚割ってしまった場合と、お手伝いでお皿を拭いていたとき、誤ってお皿をたくさん割ってしまった場合とでは、どちらが悪いと思うか」
 「一生懸命勉強した春夫君よりも、あまり勉強しなかった夏夫君のほうがテストの点数が良かった場合、春夫君はどんな気持ちになるか」

 そんな問いに対し、小学校低学年以下と4年生以上とでは答が違ってくるという。
 それらの結果には、驚きつつも非常に納得。他人に対する心遣いといった社会性や「何が良くて何が悪い」といった道徳性は、身に付けるまで相当の時間を要するのだ。その結果は、ある意味、子育てへの不安や焦りを取り除くものであるといえる。

 しかしだからといって、放っておけば良いわけでは決してない。
 健やかな生活を送るためには、「社会性」や「道徳性」、そして友と気持ちよく付き合うための「親密性と自律性のバランス」が欠かせない。その育成のためには、大人の理解と支援が必要だ。

 友達との関係不和、自信の喪失――そんな壁にぶつかった時、その葛藤経験を肥やしにする力や、憤懣を攻撃的な行動に向けることなく解決する力が、子どもには要される。このたびの少年事件は、その力の極端な不足が起こしたものといえそうだが、その力をつけさせる役割を担うのは、誰あろう我々大人なのだ。

 本書の最終章には、その力を育むための手法「ソーシャル・スキル・トレーニング」が、実例を交えて詳しく紹介されている。
 お金もかからず、ちょっとした心がけ・言葉がけでできるプログラムだが、その考え方は目から鱗。「どうしてこんなこともできないの?わからないの?」とイライラしてしまう保護者(私のことだが)には、非常に参考になるだろう。
 いきなりそこまでできない、という場合も大丈夫。
 朝きちんと起きて、適切な時刻にご飯を食べ、夜更かしせず眠るという生活を送るだけでも、子どもの社会性の土壌を作るそうだ。まずはそこから「保護者としての自分の姿」を見つめてみても、大きな収穫があるだろう。

 豊富な研究結果から、温かくも毅然とした筆致で大人の役割を説く「子どもの『10歳の壁』とは何か?」
 本書を通して、「あの事件で大人は何ができたか」「このような事件を起こさないために、大人は何をすべきか、何ができるか」を、腰を据えて考えていきたい。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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