あい 永遠に在り 高田郁

 人が生きる上で本当に取り返しがつかないことは、実のところ、そう多くはないのかも知れない。(本文引用)
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 「縦の糸はあなた 横の糸は私」。中島みゆきの「糸」という歌に、こんな一節がある。
 高田郁の新刊は、そんなフレーズを思い出させる。

 私利私欲に決して走らず、ただひたすら人々のために尽くしつづけた夫婦・関寛斎と関あい。その夫婦と家族は、時にもつれ合いながらも、強く美しい布を織りあげ世を彩っていく。
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 時は江戸後期。上総(千葉)の貧農の末娘として生まれたあいは、生来の利発さと器用さで、伯母の年子に見込まれる。
 見目も麗しいあいのもとには、多くの縁談が持ち込まれるが、あいは年子の養子・寛斎と結婚する。

 4つで実母を亡くした寛斎は、苦学の末医師となり、人々の命を救うべく日々奮闘する。あいは、そんな寛斎の無私の姿を心から尊敬し、一生添い遂げようと誓う。
 子を次々と失うという艱難辛苦を味わいながらも、世のため人のために生きつづける寛斎とあいは、やがて北海道開拓へと乗り出す。
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 実在の人物を題材としているため、「銀二貫」のような“運命の再会”や“天のお導き”といった驚きはない。
 しかし、誠実な人間は誠実にしか生きられないという清廉さ、いわば「高田郁作品らしさ」は十分味わえる。
 貧しい人からは決して医療費を取らず、他人の命を助けるために身を粉にして働く寛斎。そして、それを支えつづけるあい。時に小さな衝突を起こしつつも、二人で一本の道を歩む姿は、実に眩しい。多少娯楽色は添えられているとはいえ、「これほどの強い意志と愛情で、多くの人々を救った夫婦がいた」という事実には、深い感動を覚える。

 特に、あいの細やかな心配りと明るさには心が震える。この小説は、タイトルでわかるように「妻・あい」を中心に物語が展開していくわけだが、たとえ寛斎が有名人でなかったとしても、「関あい」の名で小説が一冊書けたであろう。

 家族それぞれが己の道を進む際にいちばん障害となるのは、意外と言おうか当然と言おうか「家族」である。
 寛斎の正しすぎる行い、それゆえの貧乏暮しは、しばしば周囲を戸惑わせ、子どもたちを息苦しくさせる。無論、反発心もわきおこる。

 そのような緊迫した状況のなかで、夫も子どもも、そして子どもの連れ合いまでをも慮り、関係を修復させていくあいの手腕は、見事としか言いようがない。
 憎しみからは何も生まれない。物事の良い面を見て気長に待てば、必ずやもつれた糸はほどけていく・・・あいの姿を見ていると、心からそう信じられる。

 妻として、母として・・・いや、家族として、社会に生きる人間として自分はどうあるべきか。関寛斎の妻あいの判断と行動は、その道標となりそうだ。

※ドラマ化希望!というわけで、勝手にキャスティング
 あい:桜庭ななみ・竹下景子
 寛斎:菅田将暉・渡辺謙
 年子:笛木優子
 俊輔:内野聖陽

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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