ぼくらの頭脳の鍛え方 ~必読の教養書400冊~ 立花隆/佐藤優

 私がこの出版不況の中で、今、一番危惧を抱いているのは血液型占い本の流行です。(本文引用)
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 これは「頭脳の鍛え方」を伝授する本ではない。日本を代表する知識人2人が、「ぼくらの頭脳の鍛え方」の一端を披露した本である。
 よって、脳科学に基づく「脳の鍛え方」でもなく、頭を良くする具体的なハウツーでもないため、即効性は見込めない。

 しかし、これを読めば、自分の頭と心に、盤石な「知」の土台を作ることができる。「すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる」、「急がば回れ」――そんな精神を地で行く「教養のつけ方指南書」である。
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 本書は、立花隆氏と佐藤優氏の対談形式で構成されている。


 まず両氏は、脳を作るのに読書は必須であることを主張。かつて、民衆を操作しやすくするために、読書を禁じ思考回路を停止させたという独裁者らのエピソード等を用いて、紙の本を読むことの重要性を唱える。
 対談はその後、20世紀への振り返りや、ニセ科学への警告、教養、知の全体像へと話が移っていくが、そこで感じるのは、「今こそ、本を読む時代だ」ということである。

 そういうわけで、本書では「必読の教養書」が400冊紹介されているわけだが、面白いのは「古典に限っているわけではない」点である。
 無論、思想の土台を作ったものや、歴史を辿るものが多いため、若干古典に偏りがちではある。が、それよりも事実を冷静に書いた誠実な本、つまり刺激的なものに騙されない・煽られないようにする心構えを作る本が選出されているように思う。

 その姿勢は、第三章「ニセものに騙されないために」に如実に表れている。
 「ホロコースト否定論」が飛び出した経緯等に触れながら、人間が簡単にニセ科学を信じてしまうメカニズムを解説。そこから「100%当たる人気占い師」のカラクリに迫り、国会での禅問答のような答弁にまで言及。そしてそんな世の中だからこそ、論理学の基本を学ぶ必要性があると佐藤氏は語る。

 このように本書では、世界レベルの話から身近な話にまで視野を変えて、現代を生き抜く教養書をどんどん紹介していく。
 そのなかには難解そうな本も多いが、ビジネスパーソン向けに「だめだこりゃ」(いかりや長介著)等も薦められているので、肩肘張らずに、書店の棚を眺める感覚で読み進めることができる。

 ちなみに、読みどころのひとつとして(ミーハー心丸出しで申し訳ないが)、佐藤優氏の現場感覚あふれる話が挙げられるだろう。
 刑務所時代、隣の房にいた死刑囚の素顔、日本では考えられないロシア裏事情・・・さすがの立花隆氏も立ち入ることのできない場での生々しい体験談には、思わず息を呑む。


 知の「巨人」と「怪物」によるビッグ対談「ぼくらの頭脳の鍛え方」。
 21世紀を生き抜く処方箋として、ぜひ読みたい一冊だ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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