縮みゆく男 リチャード・マシスン

 おれはたしかにまだ生きてはいるが、自覚を持って生きているんだろうか(本文引用)
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 人は、何をもって「生きている」とされるのか。家族や社会に何も貢献できず、何も生み出すことができず、ただ生きているだけではダメなのか。ただ消滅を待つだけでは、生きているとはいえないのか――。
 大量の毒物を浴びたばかりに、体が縮む病に侵された男の物語は、読者に「生きる意味」というものを鋭く問う。
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 主人公スコット・ケアリーは、地下室で戦っていた。追いかけてくる蜘蛛、手の届かない場所にあるクラッカー、満たされることのない欲望etc.
 普通の人間ならば容易に叶えられることが、今のスコットにはなかなか叶えられない。なぜなら彼は今、豆粒のように小さく、あと6日で消えてしまう体だからだ。


 190センチあった体が1年半でここまで縮み、もはや最期が目の前に迫った今、スコットは人生に何を見出すか。
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 かつて「縮みゆく人間」として映画化もされたと聞き、単純なホラー、あるいはファンタジー小説かと思っていた。が、その予想は良い意味で裏切られた。これほど哲学的問題を含んだ内容だったとは!

 体がどんどん縮んでいくにつれ、スコットは、自分がいかに社会的関係のなかで成り立っていたかに気づいていくのだが、その過程は残酷だ。
 妻からは次第に男として見られなくなり、身長が120センチ近くにまで縮むと、外に出ても子供として見られてしまう。


 きちんと社会生活を営んできた成人男性が、精神は大人のままで、社会で子供扱いされる――そのことが、これほどまでに一個の人間を苦しめるのかと目の覚める思いがした。

 そしてその苦しみと、どう向き合うかがこの物語の要であるわけだが、そこには「生きるヒント」が大量に詰まっている。
 他人の評価を気にしながら生きるか否か、運命にどこまで抗うか、あるいは沿うか、笑って生きるか泣いて生きるか・・・。

 スコットのように体が縮む事態に遭遇する人は、現実にはいないであろうが、そこに孕む課題は誰にでもあてはまるものだ。
 単なる超常現象を描くだけでなく、その超常現象から「人としての生き方」という普遍的な問題を浮き上がらせている点が、この小説の名作たる所以であろう。

 もしこれから、何らかの難局にぶつかったり、先が見えなくなったりしたら、この物語を思い出したい。
 最後にスコットの出した答が、私を力強く支え、生きる力を与えてくれることだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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