みんなの少年探偵団 万城目学/湊かなえ/小路幸也/向井湘吾/藤谷治

 「あなたがいなくなったら、明智や少年探偵団は、ふつうの人になるしかありません。しかしあなただって、彼らがいなかったら、ただの人騒がせなどろぼうでしかなくなってしまいます」(本文引用)
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 最近、書店はちょっとした江戸川乱歩ブームだ。
 それというのも、昨年は生誕120周年、今年は没後50年。しかも今年で著作権保護期間が終わるということもあり、今後ますます江戸川乱歩ブームは盛り上がっていくと見られている。

 というわけで、私もその時流に乗って、こちらの本を手に取った。
 万城目学、湊かなえら作家5人が、少年探偵団と怪人二十面相の世界を描いた「みんなの少年探偵団」
 もう、この表紙を見るだけで思い切りノスタルジーに浸ってしまうが、内容は意外と新鮮。
 明智小五郎や少年探偵団は、どうやって生まれたのか?怪人二十面相が世間を騒がせる真意は何なのか?
 あの黒マントの向こうに隠された“謎”が、80年の時を経て今明かされる!

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 本書には、5つの物語が収められている。それぞれ違う作家が書いているため、どれから読んでも良さそうな気がするが、そこはどっこい、順番通り読んだほうが良い。一見バラバラの物語のように見えて、実はしっかりとつながっている。

 たとえば一話めの万城目学「永遠」では、「明智小五郎誕生秘話」が描かれている。

 この物語の主人公は、10歳になる双子の兄弟。両親を共に亡くした2人は、泥棒を稼業とする祖父に引き取られる。
 ある日、百貨店でクレオパトラ像が盗まれるが、その事件以来、祖父の動きがどうも怪しい。祖父が事件に絡んでいるのではないかと疑った2人は、こっそり捜査を進める。
 しかし、その途中で祖父が急死。直前に祖父から渡された箱を開けると、そこには謎の暗号が――。
 2人は祖父が伝えたかったことを、読み取ることができるのか?

 かくして最後に、意外なかたちで明智小五郎が誕生するのだが、このラストが何ともユーモラスかつ爽やか。万城目学が放つ新しい明智小五郎像に、読者は思わず胸をときめかせることだろう。

 ミステリーという点では、向井湘吾の「指数犬」が面白い。
 ある日、少年探偵団のメンバーである少年が、1匹の犬をもらう。その犬は「魔法の犬」といい、毎日2倍ずつ数が増えていく犬なのだという。
 そのとおり、犬は倍々ゲームで増え、アッと言う間に飼いきれなくなり、少年は犬を大量に捨ててしまう。

 この物語はトリックの巧みさもさることながら、怪人二十面相の「憎めなさ」が前面に打ち出されているのが、とても良い。社会的メッセージが盛り込まれているという点でも、個人的に最も気に入った一篇だ。

 他、少女探偵団になろうとした体操少女の物語等、新鮮味あふれるエピソード満載の5篇だが、本書のすごいところは「新しいだけではない」点である。
 新鮮であると同時に、少年探偵団シリーズの魅力に改めて気づかせてくれるのだ。

 明智小五郎が、少年探偵団が、そして何より怪人二十面相がこんな人だから、みんなこのお話が好きだったんだ。「ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団」って歌いながら道を歩いていたんだ。「少年探偵団」は、「みんなの少年探偵団」だったんだ。

 21世紀の作家陣が描く少年探偵団が、あの頃の熱い気持ちをここまで思い出させてくれるとは、ただただ感動である。

 来年以降、江戸川乱歩関連の作品が続々と書店に並ぶであろう。
 ここで一歩先に、江戸川乱歩の世界に心ときめかせてみてはいかがだろうか。
 もしくは中年(老年?)探偵団なんてのを結成して、新しい明智小五郎や小林少年像を作ってみるのも悪くない。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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