反論が苦手な人の議論トレーニング 吉岡友治

 「人それぞれ」という相対主義は、互いに人格を尊重するようでいて、実は徹底的に相手を無視する行為にすぎないのである。
(本文引用)
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 以前「小学4年生の世界平和」を読み、失敗を恐れず議論をしていくコツや面白さを学んだものの、なかなか実行に移すのが難しい。
 未だに、ついその場の空気に飲まれ、不本意な方向に流されて後悔することが多い。さらに情けないことに、劣勢を感じ取った瞬間に、意図的に話をすりかえてなだめようとする卑怯な自分ともしばしば出会う。嗚呼どうすれば、そんな自分とオサラバできるのか。

 そこで買ったのが、この本。
 帯の「自己主張したい・・・・・・でも、嫌われたくない人へ」という言葉に惹かれて迷わず購入した。
 そして読みながら、何度も膝を叩いた。「そうか!こうすれば良かったのか!」


 人に嫌われることなく、なおかつおもねることなく、自分の意見を明確に主張するにはどうすれば良いのか。本書では、そんな奇跡を実現する方法を懇切丁寧に伝授していく。
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 本書の特徴としてまず挙げられるのは、実例の多さだ。著者は、ツイッターや試験問題等様々な場面から「複数意見が対立した様子」を提示し、それらについて対話形式等を用いながら建設的な意見をあぶり出していく。

 例えばツイッターで紹介された、こんな一場面。
 バスの一番前の席(高くなっている席)に座っていた若者に、お爺さんが「席を譲れ。若いのは立ってろ」と叫んだという。若者が「この席はステップが高いので、子どもやお年寄りは乗らないように書いてある」と反論したところ、お爺さんは「俺は年寄じゃない」となおも叫ぶ。そこで若者が一言、「じゃあ立ってろ」。

 著者は、この若者の切り返しを称えながら、議論のゲーム・ルールとして 

一つの立場を保持し、最後まで主張し続ける+間違えたら、自分の最初の主張を撤回し、反対意見を受け入れる

 ことを挙げる。
 自分の都合の良いように立場をコロコロ変え、なおかつ頑として己の誤りを認めないという姿勢では、実りある議論など到底望めない。

 かといって、逆にこんな意見も困る。 

「人それぞれ」

 対立を避けたいがために、どんな意見を求められても「人それぞれだと思うし・・・」で済ませてしまう。これは確かに敵は作らないかもしれないが、それ以上に何も生み出すことができない。

 このような、議論をこじらせたりシャットアウトしてしまったりする言動は、誰でも行いがちだ。その結果、相手に腹を立てたり、虚しさを覚えたりすることも少なくない。
 しかし本書を読めば、その原因が当事者の怠慢にあるということがよくわかる。裏を返せば、ちょっとの努力で建設的な議論ができる、ということだ。

 例えば「ブラックバスを駆除するのなら、同じく外来種である孟宗竹も全て伐採すべきだ」、このような主張に対し、あなたはどう返すか。
 グラフや数値をもとに「●●年からいじめが急増した」、「××市は待機児童ゼロ」と言われたら、あなたはどうツッコミを入れるか。

 ここで「そんなわけないだろう!」と感情的になってはいけない。あくまで「主張が妥当かどうか」を念頭に置き、そもそも何と何が対立しているのか、事実や結論が歪められていないか等を徹底的に検討し、自分の意見を述べていく。そのようにして、冷静かつ丁寧に、頭にたっぷりと汗をかきながら議論を進めていくのが肝要なのだ。
 感情的な対立というのは、結局、それがいちばん楽だからしているだけなのではないか。本書に示される議論プロセスを読んでいると、そう思えてくる。怠惰や逃げからは、マイナスしか生まれないのだ。

 最後に、本書のなかで私が最も好きな議論を書き留めておく。

 バリ島の音楽を聞いて、ひとりは「音が狂っていて変」と言い、ひとりは「そんなことないよ。気持ちいいよ」と言った。この2人に対して、あなたはどのような返答をするかというものだ。
 一見、「音が狂っている」という主張を狭量と批判し、「気持ちいい」と言った人の感性を誉めたくなるかもしれないが、この主張をよくよく突き詰めると・・・。

 場の空気を乱すまいと、自分の意見を言いたくても言えない、そんな自分が嫌になる・・・そんな気の優しい人も、この結論を読めば堂々と自分の意見を言う勇気がもてるはずだ。
 対立するだけが、議論ではないのだ。


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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