ナオミとカナコ 奥田英朗
「殺すって言うのやめようよ。排除するだけだから」
(本文引用)
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(本文引用)
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おっっっ・・・もしっろい!面白い面白い面白い!
これほどまでに、ちょっとのスキマ時間を縫ってでも読むのに没頭したことは、なかったかもしれない。
電子レンジをかけている2分間、スーパーで子どもがゲームをしている5分間、小学校行事の始まる前の7~8分間、ホースで亀の水槽に水を入れる間の10分間・・・。
ハードカバー438頁の本をどこにでも持ち歩き、ほんの少しでも時間があればページを開き、時を忘れた。それぐらい目が離せない傑作だった。
だから読み終えた今は、何とも寂しい。とびきり豪華な旅行や、大好きな人との2人だけの時間が終わり、自宅に帰ってきてしまったかのような寂寥感でいっぱいである。ああ、これを読む前の私に戻り、何も知らずに読み始めた時に戻りたい!ドラえもーん!
これほどまでに、ちょっとのスキマ時間を縫ってでも読むのに没頭したことは、なかったかもしれない。
電子レンジをかけている2分間、スーパーで子どもがゲームをしている5分間、小学校行事の始まる前の7~8分間、ホースで亀の水槽に水を入れる間の10分間・・・。
ハードカバー438頁の本をどこにでも持ち歩き、ほんの少しでも時間があればページを開き、時を忘れた。それぐらい目が離せない傑作だった。
だから読み終えた今は、何とも寂しい。とびきり豪華な旅行や、大好きな人との2人だけの時間が終わり、自宅に帰ってきてしまったかのような寂寥感でいっぱいである。ああ、これを読む前の私に戻り、何も知らずに読み始めた時に戻りたい!ドラえもーん!
まぁ、奥田英朗氏の本なので面白いのは当たり前ではあるのだが、まさかこれほどとは思わなかった。
大学時代の同級生である「ナオミとカナコ」。表紙に描かれる女性2人は、親友という絆のもとにとんでもない計画を立て、実行する。
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ナオミこと小田直美は、一流百貨店の外商部に勤めている。直美は日々、富裕層を相手に何十万、何百万という高級品を売っているのだが、ある日盗難事件が起こる。
直美はその事件をきっかけに、ある中国人の女社長と懇意になり、チャイナタウンを出入りするようになる。
一方、カナコこと服部加奈子は専業主婦。以前は一流企業に勤めていたが、結婚と共に家庭に入る。銀行員である夫が許さないためだ。
実は加奈子は、夫から暴力を受けていた。些細なことで顔が腫れあがるほど殴打され、毎日毎日まるで召使のように扱われていたのだ。
ふとしたきっかけで、そんな加奈子の惨状を知った直美は、加奈子に離婚を勧める。
しかし加奈子がそれはできないと言い張ったため、しびれをきらした直美は、ある案を提示する。
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これだけ聞くと、単なる「DV夫殺害計画」にしか見えないかもしれないが、とりあえず何も言わずに読んでほしい。その設定の細かさに驚くはずだ。
「百貨店外商部とその顧客」という選ばれた世界、日本と中国の意識の差、そこから巧みに練られる犯罪計画、そして細い一本の糸が手繰り寄せられるように綻んでいく完全犯罪・・・。
ナオミとカナコ、そして彼女たちを囲む者たちの心理はもちろん、その情景の微に入り細を穿つ描写は、もはや神業。
なかでも、加奈子の義妹・陽子のキャラクターがいい。兄の行方を何としてでも突き止めようとする、その執拗さには背筋が凍り、冷や汗がダラダラと出た。
いや、彼女は正しいことをしているわけだから、何も私が戦慄することはない。恐れるのは直美と加奈子だけで良いはずだ。なのに私は読んでいる間、この「陽子」という女性が恐ろしくてたまらなかった。そして、「陽子」を排除したくて仕方がなかった。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの義妹」。
そんな言葉が、本当に口から飛び出しかけた。それだけ私は、この「親友でありながら共犯者」である「ナオミとカナコ」に同化していたということだろう。帯に「やがて読者も二人の<共犯者>になる」とあるが、まさにその言葉通りとなったわけである。
ああ、ややしゃべり過ぎた。これ以上は、とにかく「読んで!」としか言いようがない。そして読み終えた時にはきっと、タイトルを「ナオミとカナコと<あなたの名前>」に書き換えたくなるだろう。
そして思うだろう。「ナオミとカナコ」に知り合う前のあなたに戻りたい、と。
大学時代の同級生である「ナオミとカナコ」。表紙に描かれる女性2人は、親友という絆のもとにとんでもない計画を立て、実行する。
さて、2人が企てた犯罪とは?「だからさ、何度も言うけど、わたしたちは共犯だから。加奈子が落ちたら、わたしも落ちる・・・・・・」
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ナオミこと小田直美は、一流百貨店の外商部に勤めている。直美は日々、富裕層を相手に何十万、何百万という高級品を売っているのだが、ある日盗難事件が起こる。
直美はその事件をきっかけに、ある中国人の女社長と懇意になり、チャイナタウンを出入りするようになる。
一方、カナコこと服部加奈子は専業主婦。以前は一流企業に勤めていたが、結婚と共に家庭に入る。銀行員である夫が許さないためだ。
実は加奈子は、夫から暴力を受けていた。些細なことで顔が腫れあがるほど殴打され、毎日毎日まるで召使のように扱われていたのだ。
ふとしたきっかけで、そんな加奈子の惨状を知った直美は、加奈子に離婚を勧める。
しかし加奈子がそれはできないと言い張ったため、しびれをきらした直美は、ある案を提示する。
そこからナオミとカナコの人生の歯車は、轟音を立てて動き出す――。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
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これだけ聞くと、単なる「DV夫殺害計画」にしか見えないかもしれないが、とりあえず何も言わずに読んでほしい。その設定の細かさに驚くはずだ。
「百貨店外商部とその顧客」という選ばれた世界、日本と中国の意識の差、そこから巧みに練られる犯罪計画、そして細い一本の糸が手繰り寄せられるように綻んでいく完全犯罪・・・。
ナオミとカナコ、そして彼女たちを囲む者たちの心理はもちろん、その情景の微に入り細を穿つ描写は、もはや神業。
なかでも、加奈子の義妹・陽子のキャラクターがいい。兄の行方を何としてでも突き止めようとする、その執拗さには背筋が凍り、冷や汗がダラダラと出た。
いや、彼女は正しいことをしているわけだから、何も私が戦慄することはない。恐れるのは直美と加奈子だけで良いはずだ。なのに私は読んでいる間、この「陽子」という女性が恐ろしくてたまらなかった。そして、「陽子」を排除したくて仕方がなかった。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの義妹」。
そんな言葉が、本当に口から飛び出しかけた。それだけ私は、この「親友でありながら共犯者」である「ナオミとカナコ」に同化していたということだろう。帯に「やがて読者も二人の<共犯者>になる」とあるが、まさにその言葉通りとなったわけである。
ああ、ややしゃべり過ぎた。これ以上は、とにかく「読んで!」としか言いようがない。そして読み終えた時にはきっと、タイトルを「ナオミとカナコと<あなたの名前>」に書き換えたくなるだろう。
そして思うだろう。「ナオミとカナコ」に知り合う前のあなたに戻りたい、と。
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