売国 真山仁

 <真ちゃん、世の中には簡単には正体を見せへんぬかりないものが案外、そこらへんに潜んでるんです。>(本文引用)
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 真山仁氏の本は、必ず買う。よって、「勝手知ったる・・・」といった気持ちで読み始めるのだが、今回はちょっと違う感触をもった。構成等いろいろな面で、今までの真山仁作品とは異なる面が、本作にはあるのだ。
 それを好むか好まないかは読者次第だが、私にとっては非常に面白く、寝る間も惜しんで読んでしまった。それはおそらく、私がミステリーやパズルが好きだから。

 全く違う2つのストーリーが、いつ重なり合うのか。手帳に書かれた数字は、いったい何を示すのか。 

国破れて正義あり

 

正義ありて国甦り


 そんないつもの真山節も健在ながら、ミステリー色も強い本作は、社会派エンタテインメントとして十分楽しめる小説となっている。
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 この物語には、主人公が2人いる。
 1人は東京地検特捜部検事、冨永真一。もう1人は宇宙工学の大学院生、八反田遥。
 冨永は大規模な疑獄事件を追い、遥はロケットを飛ばす夢を追う。本作は、彼ら率いる2つの物語が交互に現れる形で進んでいく。

 それぞれの物語が面白く、つい別物として読みふけってしまうが、ふと気がつけばこれは「売国」という小説のなかの一部。冨永と遥の物語は、どこかで必ず重なり合うはず。そう思うと、ますます読む手が止まらなくなった。

 その間にも、冨永は疑獄の要となる人物に接触し、失踪した親友の行方を必死で追い、遥はロケットの技官だった父親の衝撃的な過去に出会う。
 そんな2本の道がやっと1本道になるのは、後半もかなり過ぎてから。それまでちょこちょこと伏線はあったものの、まさかここまで引っ張るとは思わなかった。それだけに謀略の「深く静かに潜行する」様がうかがえゾッとする。

 真山作品らしく、読みながら特定秘密保護法、国家間の宇宙開発競争、検察のあり方など社会問題もじっくり考えることができる。特に、冨永の親友失踪事件からは、秘密法の問題点がくっきりと浮かび上がってくる。ジョージ・オーウェル「一九八四年」のビッグ・ブラザーの足音が、着々と近づいてくるのが聞こえてくるようだ。
 
 そのような深刻な問題に、暗号や謎解きを交えている点は、さすが「読ませる」ベストセラー作家だ。またその「謎解き」が、冨永と親友の絆の深さを伝えておりホロリとさせる。社会全体だけでなく、人間1人ひとりのつながりにまで目配りされている点も実に魅力的だ。

 いつもの「真山仁らしさ」もたっぷりありながら、「新しい真山仁」にも出会える小説「売国」。
 睡眠不足必至のため、休日前日に読み始めるのがお薦めである。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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