光とは何か 江馬一弘

 光は、自分一人では何もできないし、何の現象も起こしません。
 光がほかの物質と出会うことで、初めて「何かが始まる」のです。
 何だか、人間と似ていますよね。

(本文引用)
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 小学1年生の子どもが、保育園の頃からしばしばこんなことを聞いてくる。

 「どうして鏡は右と左が反対になるの?」、「どうして水は透明なのに、絵だと青色なの?」、「なぜ空とか海は青くて、木は緑色なの?」、「なぜ夕方になると、空が赤くなるの?」「どうして虹はできるの?」「あ!ストローが曲がって見える!どうして?」・・・等々。
 できるかぎり答えてやるようにはしているのだが、なかなか子どもを納得させることができない。うーん困った。
 
 そんな時に救世主のごとく現れたのが、この「光とは何か」


 日経新聞「目利きが選ぶ今週の3冊」で紹介記事を読み、「これを読めば、子どもの質問に答えてやれるかもしれない」と購入。そして読み始めた瞬間から、期待をはるかに上回る本であることが確信できた。
 これほど「わかりやすさ」「面白さ」「深さ」の三拍子が見事にそろっている本だったとは!
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 本書はまず、1問のクイズから始まる。 

「この絵には、大きな間違いがあります。それはいったい何でしょうか」

 その絵とは「宇宙遊泳をする宇宙飛行士が、目の前を横切る光線を見つめている」というものだ。
 一見、どこが間違いかわからない単純なイラストだが、光の性質-直進・反射・屈折-を知るためには、まずこの難問を突破しなければならない。これを越えればしめたもの。「光とは何か」「私たちはどのようにして光を認識しているか」がわかり、後の説明がグッと頭に入りやすくなる。

 たとえば光の速度の測定は、光の直進性を使ったものであり、我々がものを見ることができるのは、光の反射性によるものだ。そして「ストローが曲がって見える」光の屈折性は、メガネや蜃気楼、ダイヤモンドの輝きのもととなっている。

 それら光の三法則から、身近に起こるあらゆる不思議を解き明かしていくのだが、これがもう目からウロコの大行進。
 まず驚いたのが、「鏡で逆になっているのは左右ではない」という解説だ。

 実は鏡で逆になっているのは、何と「前後(手前と奥)」だという。
 本書ではまず、光と鏡それぞれの性質から「鏡に映ったリンゴが、鏡の向こう側にあるように見える謎」を解説し、そこから「なぜ人は、鏡では左右逆に映ると認識してしまうのか」を説いていく。

 そう、この「なぜ認識してしまうのか」が本書のカギだ。
 ややページは飛ぶが、本書内「色のしくみ」の章で、著者はこのような言葉を述べる。 

色とは、この世界に実在するものではなく、光の波長の違いを脳が「色」というイメージで認識しているだけなのです。つまり、色を実際に「見ている」のは脳であり、色という感覚を作りだしているのは心なのだといえます。

 本書の説明から考えると、「鏡は左右逆に映る」というのもそれと同様、私たちの脳の働きが大きく作用しているようだ。
 事実は「左右ではなく前後が逆」になっている。だけど我々はそれを、ある「脳の思い込み」から「左右が逆」になっていると捉えてしまう。
 光のことだけを知るつもりが、無意識のうちに行っている脳の誤解や錯覚まで知ることができたのは、思わぬ大収穫であった。

 また、本書の特徴として何より忘れてはならないのが、惚れ惚れするようなわかりやすさだ。
 身近なものや事象を用いた比喩と、シンプルでキュートなカラーイラストで、光にまつわる様々な秘密を簡潔明瞭に解説。今まで数々の「わかりやすいと評判の科学本」を読んできたが、本書のわかりやすさは秀逸、もはや達人の域だ。

 なかでも感動したのが、光の屈折の解説だ。
 なぜ光は、空気中から水中に入った瞬間に曲がるのか。これは、空気中と水中とで光の速さが異なることから生じるのだが、そういわれても今ひとつピンとこない。
 そこで著者は、その謎について、小学生でもわかるように解説をしていく。
 たとえば、自動車が舗装された道路から砂地に斜めに入った場合、車輪はどうなるか。砂浜から、海で溺れている人を見かけた時、どのルートを辿れば最も早くたどり着くか。
 このような、誰でも想像できる事例で説明されると、自分でも驚くほどスイスイ理解できる。ただただ感激のひと言である。

 本書には他にも多数、このような巧みな解説が登場する。あるときは夏祭りのヨーヨーでガラスが透明に見える秘密を説明し、あるときはCDやDVDなど光ディスクの表面を、蝶やタマムシ、クジャクの色と重ね合わせる。

 ページをめくりながら、そのような名人芸と出会うたびに「光って何て面白いんだろう」と興奮せずにはいられなくなる。そして「光を知るって、何て楽しいんだろう。何かを学ぶって、何て幸せなんだろう」と、著者の方に感謝せずにはいられなくなる。

 本書によると、来年2015年は「光および光技術の国際年(仮称)」とのことらしい。それに伴い著者江馬氏は、「光の魅力をもっと知ってもらえたら」との願いを込めて 

光に、もっと「光」を当てよう!

 と語る。

 しかしこのような本が出版されたからには、その心配は無用と思われる。
 読めば必ず、「光」に魅入られること間違いなし。
 「光に、もっと『光』を当てよう!」と多くの人が叫びだす日も近いであろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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