そして、星の輝く夜がくる 真山仁

 「きっとみんないつかは飽きちゃうと思うんだ。人助けって疲れっから。それに、小野寺ちゃんもそうだけど、帰る場所があるだろ。いずれは去っていく人なんだ。だから、みんながいなくなるまでの間は甘えて、しっかり体力を蓄えておこうって思ってる。そっからが本当の勝負だから」
(本文引用)
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 「『人を助ける』って、本当に難しい――よなぁ・・・」。読みながら、そう考え込まざるをえなかった。
 大量の瓦礫、絶えず漂う粉塵と異臭・・・そのなかで子どもたちの心を開かせようと奮闘する小学校教師を描いた本書は、 柔らかな文体ながら「真の復興とは何か」を鋭く問いかける、「問題作」ともいえる小説だ。
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 東日本大震災から2か月後、被災地の小学校に、ある1人の教師が赴任してくる。名前は小野寺徹平。彼はいきなり「まいど!」と子供たちに挨拶し、絶妙なボケで子供たちの心を解きほぐす。
 しかし少しでも余震が来ると、小野寺は厳しく「机の下に隠れろ!」と指導する。しかしそれに従う児童はわずかだった。皆、地震に慣れてしまっているのだ。

 そこで小野寺は叱る。

 「地震をなめんな。せっかく生き残った命やろ」

  そして、小野寺の最も大事にしている鉄則を子どもたちに伝える。

 「こわがりは最強や」


 実は小野寺は、阪神淡路大震災で妻と娘を亡くしている。一時は後を追うことも考えた小野寺が、生き直すがごとく東北の地に向き合い、得たものとは――。
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 本書は、6話からなる連作短編集だ。全編を通じて登場人物はほとんど変わらないが、それぞれしっかりとテーマがある。
 大人たちの苛立ち、そのなかで感情を吐きだせなくなった子どもたち。
 津波に飲み込まれた場所で、生死を分けたもの。
 ボランティア。
 被災者や遺族たちの本当の願い。
 そして、最終的な「命の守り方」・・・。

 それぞれ、当事者でなければなかなか思いが至らない現実に斬りこんでおり、「復興、復興」などと軽はずみに口にしてはいけないのだと胸が軋む。

 特に唸ったのが、ボランティアを描いた第4話「小さな親切、大きな・・・・・・」だ。

 震災からやや時が経ち、被災者たちの間で、一部のボランティアに対する不満がくすぶりはじめる。
 そんな時、何とボランティアの若者が、夜中に花火を始めてしまう。小野寺がそれを厳しく叱りつけ、ことはいったん収まったかに見えた。
 が、翌日、ボランティアの代表という女性が現れ、彼らに厳しい処分を下したと話す。
 実は彼女はボランティアに、異常なまでの統制を敷いてきた。
 それは逆効果じゃないのかと諌める小野寺だが、彼女の真意は思いのほか深いところにあった。
 それを知った小野寺は、言葉に詰まるのだが――。

 この章の面白さは、2つのボランティア団体が比較対照されている点である。かたや厳しく管理され、かたや規則はないに等しい。しかし、仕事はきびきびとこなすという点では共通している。
 ではなぜこのような違いが生じるのか。そのどちらが正しいのか。本章の最後の最後まで結論はもつれこみ、小野寺だけでなく読者にも判断をゆだねるのだが、とにかくその判断材料の豊富さに圧倒される。日本の震災のみならず、アメリカのハリケーンにまで話を広げ、「ボランティアとは何か。人助けとは何か」をギリギリまで問うていく。

 そのような事態に直面するたびに、小野寺が躓き迷い嘆き、しかし必死で立ち上がる姿には、思わず息を止めて読みふけった。

 被災者であり遺族であり、でも余所者でもある1人の人間の苦悩と格闘は、実に多面的に「真の復興の意味」を考えさせる。
 それに大きく一歩踏み出す大団円には、思わず拍手。子どもたちの底力に感動するとともに、改めて「一番大事なこと」を知らされハッとした。

 震災に限らず、何か困った時、手助けがほしい時、何かに手を差し伸べたい時、そして何かから立ち直りたい時・・・この小説は大いなるヒントをくれることだろう。

 驚くべき洞察力をみせる、校長先生にも注目。

※ドラマ化希望につき、勝手にキャスティング
小野寺:宮迫博之、校長:志賀廣太郎、教頭:ベンガル、まどか:新垣結衣、
さつき:夏目三久、伊藤:銀粉蝶

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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