ココロの盲点 池谷裕二

 人はみな偏屈です。脳のクセを知れば知るほど、自分に対しても他人に対しても優しくなれます。
(本文引用)
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 錯覚を起こす本、錯覚を起こしていると自覚させられる本。そういう本は、脳を浄化し、気分爽快にしてくれる。「ストレス解消にミステリー小説を読む」という人が多いのも、そんな理由からではないだろうか。

 今回ご紹介する「ココロの盲点」は、まさにそんな本。
 知らず知らずのうちに築かれている己の「認知バイアス」すなわち「思考の偏り」を、ドリル形式でバリバリと暴いてくれる。そして気がつけば、心と頭は生まれ変わったようにリフレッシュされているという頼もしい一冊だ。

 え!?自分は公平な人間だからそんな必要ないって?
 そう思った方は、まずこの問題を解いてみてほしい。


 「自由や平等とは名ばかり」「陰湿な世の中で」と前置きをしたうえで・・・ 

 さて、あなたは「世間の平均」に比べれば、それなりに公平に振る舞っているほうでしょうか。
 そんなアンケートをとると、次のどちらの答えが多いでしょうか。

 1.平均より公平です。
 2.平均より不公平です。

 この解答と解説を読んだ瞬間、私は「自分に認知バイアスがある」という事実を認めざるを得なくなった。
 お恥ずかしい話だが、実はひそかに「私はバランスのとれている人間」だと自負していた。が、それはもろくも崩れ去った、と言うかぶち壊された。

 巻末の「認知バイアス用語集」によると、人間の心理には「平均以上効果」と「平均以下効果」があるらしい。
 たとえば「車の運転など日常的な能力について」「平均以上効果」が働き、「一輪車などの難しいことをこなす能力について」「平均以下効果」が現れるとのこと。
 なかには一輪車は日常的な能力で、車の運転の方がはるかに困難という人もいるであろうが、それはさておき、自分なりの「これは平均より優れている」「これは平均以下だな」というケースを思い浮かべてみると、なかなか面白い。それを逆転させて考えてみると、今まで考えもしなかった「己の真の姿」が見えてくるかもしれない。

 また、こんな「認知バイアス」もある。

A=1×1×2×2×3×4×5×9×8×7×6
B=9×8×7×6×1×5×4×1×3×2×1

 上の2つの式をパッと見て、どちらが大きい数になると思うか。

 これもまんまと引っかかった一問。「きっと引っかけなんだろうなあ」と思いつつも、感じたままに答えたところ、情けないほどあっさりと引っかかってしまった。
 珠算が得意な人なら間違えないのかもしれないが、この問いが暴く「認知バイアス」に見事にはまり、ここまでくると、自分の何を信じてよいのかわからなくなってくる。

 さらに、もし身近に左利きの人がいれば、その人と一緒に読んでみるのもお勧め。
 「前髪の分け方」の問題で、右利きと左利きとで答および解説の読み方が変わってくる可能性があるからだ。(実際、私自身が左利きで、答と逆になったから言っているわけだが。)
 そして本書の理論から考えると、利き手によって、街にあふれる広告やディスプレイ、新聞や雑誌の見え方まで異なっている可能性が高い。ということは、右利きの人=日本の大半の人は、私よりも世の中が魅力的に見えているのか?(小さくガーン)・・・とまあ、こんな疑いをもつことができるのも、本書の効用のひとつだ。

 最後に、もしかすると今いちばん求められているかもしれない、心理作戦をひとつ。
 選挙で投票率をアップさせたい場合、こう言うと良いらしい。
 それは「投票することは大切です」ではなく・・・?

 ちなみにこれは、「人格同一性効果」というもの。こう言われてしまうと、どんなに頑固だった人でも、「う、うん・・・そうだね」と態度を軟化させてくれそうだ。

 こんな驚きの「認知バイアス」30問。「前例のない『絵本』に仕上がった」と著者が言うように、文字がビッシリというわけではないが、得るところは非常に大きい。
 真っ当で公平で偏見などもなく誰とでもうまくやれる、と思っていた自分が、実はとんでもなく偏った脳の持ち主だった!それを知ることは、これからの人生に大いにプラスであろう。

 まあそこまで考えなくても、ちょっとした友達との心理ゲームや、職場での親睦会などでも活躍しそうな一冊。新しい出会いのある春には、特にお薦めしたい本だ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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