すごい人のすごい話 荒俣宏

 竹村 もしかしたら、われわれの体のなかに、「浅草へ行け」という遺伝子が組み込まれているのかも・・・・・・(笑)。
荒俣 まだ幕府の仕掛けた街づくりをやらされていたのか!(笑)

(本文引用)
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 久しぶりに、脳みそが根底からかき回された。かき回されたと言おうか、盛大に壊されて建て直されたと言おうか。
 とりあえず、この本を読む前と読んだ後とでは、脳が大きく変わっている(であろう)ことは間違いない。
 
 博覧強記の代名詞・荒俣宏氏が、各界の泰斗に突撃した対談集「すごい人のすごい話」
 これは「すごい」と関心するだけでなく、ワハハと笑えてホロリと泣けて、時にズッコケもする、心の簡単洗浄丸のような一冊だ。
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 本書に収められている対談テーマは、実にバラエティ豊富だ。
 土地から江戸時代を見つめ、ストレスのない都市生活法を唱え、ウイルスやハゲとの飽くなき闘いを考察する。


 さらにハゼ研究から天皇陛下の横顔に触れたかと思えば、歌謡曲、漫画、オランウータンに思いを馳せ、最後は人生の終え方まで言及していく。
 どれもこれも肩の力の抜けた“雑談”といった風なのだが、内容は深く衝撃的。読み進めるうちに、いかに自分が凝り固まった考え方をしていたかに気づかされる。

 なかでも目を見張ったのが、第1回「竹村公太郎さんと楽しむ土地からの発想」だ。
 竹村氏は、大学で土木工学を学んだ後に建設省に入省。そこでダム・河川事業に従事し国交省退官後、現在は財団法人リバーフロント研究所で代表理事を務めている。
 そんな河川行政マンが語る「土地から読む日本史」が、もうたまらなく面白い。
 
 水はけの悪い関東平野を洪水から救った徳川家康の功績に端を発し、地形や河川から、時の大名の鋭さを説いていく。
 どれも実に新鮮な見解なのだが、なかでも唸ったのが赤穂浪士の謎だ(そういえばもうそんな季節ですね)。

 竹村氏曰く、赤穂浪士の主要メンバー16人が潜伏していた麹町は、旗本屋敷や徳川御三家が並んでおり、当時最も警護が厳しい場所だったという。そこでまず謎がひとつ。 

「果たしてそんな場所へ、テロリストが一六人も隠れていられただろうか」

 さらに謎がもうひとつ。吉良邸はもともと内堀の一等地にあったにもかかわらず、討ち入りの数ヶ月前にジメジメした隅田川東岸に移されている。
 竹村氏は、これを幕府の指示によるものに違いないと説き、「赤穂浪士は幕府にバックアップされて仇討ちをしたとしか思えない」と言う。

 さらに、竹村氏は浮世絵に描かれる河川と人々の様子から、幕府の隠された目論見を次々と解き明かしていく。 なかでも吉原遊郭に向かう男たちの絵を例にとり、「もろい堤防を男たちに踏み固めさせた」とする見解には驚き大笑いしつつも、妙に納得。同じ歴史でも、専門分野によって色んな見方ができるものだなぁと、感動すら覚えた。

 このように、本書に登場する対談は、固定観念を実に気持ち良く打破してくれるのだ。

 それは学問だけに限らない。
 救命救急センターの医師が語る人生の終え方、脚本家がお遍路を通じて語る夫婦のあり方などは、「生死」に対する固定観念を覆すものだ。
 満足できる生き方・死に方とは何だろう。自分にとって本当にかけがえのないものとは何だろう。私は今まで、無駄に何かと闘って闘って闘いすぎてはこなかったか?生命や人間と向き合う権威達による話は、そんなことを考えさせ、ふっと心を軽くする。

 そして気づく。「すごい人」とは、普通の人を緊張させるのではなく、緩和させるのだと。

 心や体がこわばり身動きがとれなくなりそうな時に、ぜひ読んでほしい。骨の髄から全身もみほぐされ、世界がグーンと面白く見えてくること請け合いだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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