そうまでして君は ~「小惑星探査機はやぶさの大冒険」~

 さて、現在公開されている映画「はやぶさ/HAYABUSA」。
 この映画、何と宇宙ステーションでも試写会が行われ、近く全米でも公開されるという、グローバルにおさまらない宇宙規模の展開を見せている。

 そしてご存知のとおり、昨年から都内はじめ全国で、持ち帰られたカプセルの公開ツアーが催されている。
 実は私も、「こんな世紀の大公開、見ないわけにはいくまい!」と、張り切って上野まで見に行った。

 展覧会は大盛況。はやぶさ本体(燃え尽きてしまったのでレプリカ)の前は写真を撮る人たちでごったがえし、当の「はやぶさカプセル」は、厳重に厳重を重ねた監視の上でヒッソリと公開されていた(ただしここまで入ってくる観客はほとんどおらず・・・)。


 カプセルの前に張られたロープの両脇には、厳格な面持ちの警備員が立ち、そのロープに手でも触れようものなら、容赦なく注意されるという警戒ぶりであった。

 それもそのはず、そのカプセルの中には、人間の起源、生命の起源、果ては宇宙の起源がつまった物質が隠れているのかもしれないのだから。

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 しかし実際のところ、このはやぶさカプセル帰還のニュースが、なぜこんなに騒がれるのかわからない人も多いのではないだろうか。実は私もその一人だ。博物館に見に行ったのも、正直、話のネタに・・・ぐらいの感覚であった。

 しかし、この「はやぶさの大冒険」を読むと、
 そもそも「なぜはやぶさを飛ばそうと思ったのか」、
 そして「その標的がなぜ小惑星イトカワだったのか」、
 そしてここが重要なのだが、「なぜ帰還したのがこれほど奇跡的だったのか」、がよくわかる。

 はやぶさに関わったスタッフの方たちに行われた、真剣かつユーモアにあふれたインタビューは、本当に肩の力を抜いて読むことができる。 そして「アハハ」と笑いながら、気がつけば、この世紀の大冒険と成功の謎が頭に入っているという凄い本だ。

 とにかく、プロ集団が素人にわかるように話してくれているので、比喩が満載なのがいい。 

「はやぶさが小惑星をピタリととらえるのは、東京から2万キロ離れたブラジルのサンパウロの空を飛んでいる体長5ミリの虫に、弾丸を命中させるようなものなんですよ」

・・・といった気の遠くなるような話から、はやぶさの姿勢を維持させる話では、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんの話まで出てくる。
 そして小惑星イトカワが、その形から「星の王子様」キャンペーンが展開されたり、JAXA内ではラッコちゃんと呼ばれて大活用されていたり・・・「へぇ~!そうだったの!?面白い!」と手を叩いてしまうエピソードが満載だ。

 また、このはやぶさプロジェクト成功に向けて頭を悩ませる話でも、おもちゃ屋さんから大きなヒントを得るなど、もう明日にでも友達に話して聞かせたい話がページからあふれているのだ。

 そしてそのユーモアの裏には、プロジェクトメンバーの方たちの、本当に本当に涙ぐましい努力があったことも見逃せない。

 子供を保育園に送ってから、はやぶさのトラブルを少しでもキャッチするために職場に泊り込み、早朝に帰宅してまた保育園・・・などという生活を送っていたイクメン職員。
 やるべきことをすべてやった末、日本中の、宇宙や科学にまつわりそうな神社をめぐり願掛けをする技術者・・・。

 今はこうして笑って話しているけれど、当時はどれほど心身をすり減らしていたことだろうと、数々のエピソードからうかがい知れる。

 この本の第9章は「そうまでして君は」と、体を燃やしてカプセルを地球に送り届けてくれたはやぶさについて書かれているが、私は言いたい。はやぶさプロジェクトのメンバーの方たち一人ひとりに、「そうまでして君は」と。そして心からの拍手を、いつまでもいつまでも送りたい。




ちなみに本書からは、プロジェクトマネージャー・川口淳一郎氏の判断力と決断力が大きく奏功していることがよくわかる。
その天才・川口氏の頭の中を知るには、この本↓もオススメだ。(特に、小学校6年生の川口少年が書いた作文は必読!!)


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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