数学序説 吉田洋一・赤攝也

 これを聞いた人はこう思うに違いない。ニューヨークは大都会なのに、なぜアメリカの首府ではないのであろうか。また、大都会であるというだけでローマがイタリアの首府であるのなら、なぜ東京はイタリアの首府ではないのであろうか――。
(本文引用)
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 以前、数学アレルギーを治す本として、「とんでもなく役に立つ数学」という本をご紹介した(この本に書かれている、「論理の階段をのぼる数学トレーニング法」は本当にお勧め)。

 そしてここにまた、数学嫌いの特効薬となりそうな本がある。
 いや、本書を読んだ自称「数学嫌い」の人は、こう思うかもしれない。

 「あれ?もしかすると自分は、数学が好き・・・なのかな・・・?」

 そう、「数学が嫌い」というのは単なる思い込みで、本当は「数学が好き」という自分の姿に気づいてしまうかもしれない。そんな一冊が、この「数学序説」


 半世紀以上前に書かれ、今なお色あせることなく数学の魅力を語り続けてくれる、不朽の名著である。
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 本書はまず、「パスカルの説得術」から始まる。
 世には“口説き上手”なる者がいるが、それは生来のものである。しからば、そうでない者は、いかにして“口説き上手”に近づくべきか。

 その方法のひとつとして、パスカルはこう語る。 

「理づめにとことんまで議論して、相手を‘論破’すること」

 であると。

 あれれ?数学の話じゃないの?とお思いかもしれないが、そこは焦らず願いたい。
 その説得術には、3つの規則があるとパスカルは説く。
 それは「定義」「公理」「論証」である――と。

 さらにその3つには、それぞれ細かな規則が存在する。
 たとえば「定義」には、「いくぶんでも不明もしくはあいまいなところのある用語は、定義しないままにしておかないこと」
 「公理」ならば、「必要な原理は、それがいかに明晰で明証的であっても、決して、承認されるか否かを吟味しないままに残さないこと」などである。

 要するに、猫の子1匹アリ1匹も通さないほど、理論をヌケモレなしに詰めていくことが、説得術、引いては数学の肝であるという。

 さて、ここからがどんどん面白くなる。

 後の数学者たちは、さらにパスカルの説を発展させて、細かな定義や公理を定めていく。
 それらは皆、小学生でもわかるような平易なものだ。

 たとえば、
 

「線とは幅のない長さである」

 

「等しいものに、等しいものを加えれば相等しい」


 どれもこれも、「そんなの当たり前じゃないか」と失笑するようなものだ。しかしこれら「当たり前のこと」を馬鹿にしてはいけない。やや極端に言えば、それを疎かにしてしまうことで、数学がわからなくなる悲劇が起こると言ってもよい。

 このような「当たり前」のことは、すでに疑う余地のない=「隙のない」ものだ。
 その「隙のない」定義・公理を1つひとつはめこんでいくと、あら不思議、少々の難問はスルリと解けてしまうのである。

 さらにこの解法のすごいところは、さまざまな定理や公式の素も解ける点である。

 数学が苦手と感じてしまう主な原因として、「公式や定理を覚えられない」ことが挙げられるだろう。
 ならばなぜ「公式や定理を覚えられないのか」。それはすなわち、それらを本当に理解していないからである。

 そんな悩みに、本書は抜群の効果を発揮する。
 本書の唱える「当たり前」のことをジックリと辛抱強く組み合わせていくと、見事に公式や定理の根拠が見えてくる。そうなればしめたもの。覚えられなかった公式や定理が、もう決して忘れることはない、あなたの血肉となるだろう。

 こうして問題を解いているうちに、あることに気がつく。

 「このプロセスって、まるでクロスワードパズル!?」。

 数学は苦手でも、クロスワードや数独などは好きという人は多いであろう。本書を読んでいると、まさにその“ノリ”で数学と向き合うことができる。
 よって、「数学は苦手」というのは実は思い込みで、「本当は自分は数学が好きなのではないか。いやもしかしたら、得意ですらあるのかもしれない」という光明が見えてくる。

 本書冒頭「文庫化に際して」において、著者ご自身も、

 本書は「数学者」を増やすためのものではない。素人でも数学を楽しむことができることを説明したい

 と書かれているが、本書は見事にその役割を果たしているといえよう。

 ちなみにブログ冒頭に挙げた引用部分は、「正しい推論の形式」からとったものだ。 

 ローマは大都会である。
 それゆえ
 ローマはイタリアの首府である。

 これは果たして正しいか否か。正しくないのであれば、なぜそういえるのか。
 そんなことを、ごくごく簡単なことを積み上げて論証してみよう。驚くほど複雑な推論の正否も、本書を片手にゲーム感覚で解き明かすことができるかもしれない。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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