伝説の灘高教師が教える一生役立つ学ぶ力  橋本武

 必要以上に勉強したことがゆとりにつながる。これが本当の意味での「ゆとり教育」なのです。
(本文引用)
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 何ときらめきに満ちた一冊であろうか。

 この本には、楽しく学び、遊び、そして生きるためのヒントが詰まっている。

 だがそれは、手を抜くことや怠けることとは全く違う。

 時に猛烈に苦しみ、時に体ごとぶつかり合い、泣くこともある。決して平坦な道のりではない。しかしその途上で、もし「幸せか」と聞かれれば、きっと誰もが自信をもってこう答えるだろう。「このうえなく幸せだ」と。

 「伝説の灘高教師が教える一生役立つ学ぶ力」。これは、そんな道を歩き続けた教師と生徒たちがおくる、至高の人生指南である。


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 著者の橋本武氏は、中学3年間をかけて中勘助「銀の匙」を読み込むという型破りな授業を行い、灘高を東大合格者数日本一に押し上げたといわれる伝説の教師だ。テレビや新聞等で見たことがある人も多いであろう。

 だからといって、本書からすぐさま東大に入るメソッドを得ようとすると、やや期待はずれかもしれない。
 しかしこの本には、それをはるかに上回る価値がある。受験というものを飛び越えた、一生の宝となる「真の学力のつけ方」を説いてくれるのだから。

 そのポイントは、大きく分けて2つ挙げられる。1つは「『遊ぶ』と『学ぶ』の融合」、2つめは「『自由』と『責任』の両立」だ。

 まず第1のポイント「『遊ぶ』と『学ぶ』の融合」について。
 一昨年、橋本氏は27年ぶりに灘中の教壇に立ち、生徒たちに「『あそぶ』と『まなぶ』という言葉についてどう思うか」と問う。そこでひとりの生徒がこう答えたという。

「『遊ぶ』は好きですけど、『学ぶ』は嫌いです」


 橋本氏はその言葉に落胆し、それならば、と授業の方針を固めていく。「遊ぶ気持ちで学んでいけるよう仕向けよう」と。
 
 かくしてそれを実践した結果、その生徒は授業後、こう言ったという。

「『遊ぶ』と『学ぶ』の垣根がなくなったと思う」


 ここに、橋本式授業の真髄がある。

 言葉遊び、「銀の匙」のスローリーディング、カルタや短歌作り等に興じながら、国語の力を着実に育んでいく。その成果は、生き生きとした表情で授業に励む生徒たちの写真が物語っており、引いては「東大の入試問題なんてヘッチャラだ」ということにつながっていく。
 もちろん東大合格が人生のゴールでないことは、言うまでもない。しかし「遊び」を通して主体的に学んだ姿勢が、このような一定の成果を生む様は、実に痛快だ。

 そして第2のポイントである「『自由』と『責任』の両立」。こちらは学力という枠を超えた、本当の生きる力を教えてくれる。(もしかするとこちらのほうが、橋本先生の本懐かもしれない。)

 本書の中で、橋本氏は「自分とは違う考え方を尊重する」ことの大切さを、繰り返し繰り返し唱えている。
 その信念のもと、橋本先生は実に自由に生徒たちを導いていくが、そこからが重要だ。
 橋本氏は、「自由」には必ず「責任」が伴うことを強く主張する。

 その「責任」とは突き詰めれば、人に対する「思いやり」だ。先生は、何か発言をする前には一瞬でもいいから立ち止まって相手の気持ちを考えるよう熱く語る。
 そして、自由という看板を掲げて利己的な行動をとることは、断じて許さない。これは真の学力から連なる「真の人間力」の育成である。

 「はじめに」のなかで、橋本氏は、

この本を読んで、教育や子育て、あるいは日々生きていくことのヒントを得られたとしたら、著者としてこれ以上の幸せはありません。

と語っている。
 いやもうこれは、ヒントどころか、そのままバイブルとなりうる一冊だ。子供の教育の一環として買ったつもりだったが、その前に私自身大いに学ばされた。おそらく私はこれからの人生で、「銀の匙」のごとく、本書をじっくりと何度も読み返すであろう。自分自身のために擦り切れるほど、何度も何度も。

 それだけに、大往生とはいえ、先ごろ亡くなられたのが大変悔やまれる。これからも色々教えていただきたかった。先生が希望されたように、120歳まで生きていただきたかった。

 しかし今はただただ、感謝の言葉しかない。
 
 ありがとう、橋本武先生。
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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