岡田斗司夫の「風立ちぬ」を語る。

 彼は最後の最後までずっと今まで僕が語ってきた「この映画の中で宮崎駿が語っていること」とかに気づかぬまま、ずっと美しいものを見つづけて、追いつづけるだけで終わっちゃうんですよね。
(本文引用)
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 先日、映画「風立ちぬ」を観てきた。
 
 堀辰雄の「風立ちぬ」と堀越二郎の「零戦」を融合させたような作品なのかな?と予想しながら観たが、そんな御託は抜きにして、不覚にも泣いてしまった。
 なぜ泣いたかを書いてしまうと、思いっきりネタバレになってしまうので控えるが、劇中、涙が何度も眼球の前にプックリプックリせり上がり、ユーミンのエンディングテーマを聴きながらついにダムが決壊。ハンカチを目に当てながら、「ウウッ・・・」と嗚咽してしまった。

 というわけで、このたび読んだのがこちら、「岡田斗司夫の『風立ちぬ』を語る。」


 自称「2000の男」としても知られる(凡人が3~5、釈迦・キリスト・マルクスが100~200らしい)岡田斗司夫氏による「風立ちぬ」分析である。
 (ちなみにこちらは電子書籍版のみなので、Kindleで拝読した。)

 一言でいって、この分析はすごい。
 消費者と生産者の違いとでも言ったらよいだろうか、アニメーションや映画の作り手と、単なる鑑賞者とでは、これほどまで「作品の観方」に開きがあるとは。こんな評論を読んでしまうと、「いったい私は作品の何を観ていたのだろう」と愕然としてしまう。

 これから映画をご覧になる方に差し障りがあるといけないので、あまり深くは触れないが、いきなり驚いたのは「二郎君が最初に恋をした女性」についての分析である。

 もうこれは、腰が抜けるほど驚いた。
 言われてみると「ああ、確かに・・・」と大いにうなずけるのであるが、それを頭に入れたうえで二郎と菜穂子の言動を反芻してみると、二人の恋模様に今までになかった補助線がスッと引かれたような新鮮味が加わり、より味わい深くなる。

 さらに唸ったのが、「声優・庵野秀明を岡田斗司夫が語る」の章。
 この映画の評価については、以前から「声優・庵野秀明氏を受け入れられるかどうかがカギ」といったようなことが語られていた。
 私もその点については、少々、いやかなりドキドキしながらスクリーンを見詰めたが、結果としては杞憂だった。
 一言目はやや違和感を感じたものの、すぐに「二郎さんはこういう声でこういう話し方をする人」と慣れてしまった。一緒に観た夫も同様であった。

 その感想を以て岡田氏の分析を読むと、もう合点の嵐。
 あえて本業の声優ではない人を、主役の二郎に据えた理由が、腹の底にストーンストーンと落ちまくるように納得した。なーるほどねぇ。

 さらにさらに、「これはもう製作を生業としている人ならではだな」と思える見事なものが、「菜穂子が二郎から来た手紙を読むシーン」の分析。
 読みながら、「そうか、だから菜穂子は・・・」とその後の菜穂子の行動を思い返し、また涙してしまった。二郎さん、あんたって人は・・・。

 本書では、その他、作中に登場するドイツ人が持つタバコのパッケージから、そのドイツ人の職業を当てるあたりなど、まあ細かい細かい。そこまで作りこむ「風立ちぬ」スタッフの方々も素晴らしいが、それを見破る岡田氏の眼力にも驚愕した。

 あまり書くと、この評論だけでなく映画の内容もわかってしまいそうなので、そろそろ筆を置くが、この評論を読むためだけに「風立ちぬ」を観に行っても良いと思う。
 少々、誤字や変換ミスが目立つが、内容は値千金。私など、これを読み、もう一度「風立ちぬ」を観たくなってしまったほどである。

 次はぜひ、本書に基づいた、宮崎駿×岡田斗司夫氏の対談を読んでみたい。
 (岡田氏の突っ込みが鋭すぎて、ケンカになどならなければ良いが・・・)

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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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