ランチのアッコちゃん 柚木麻子

 身がすくんで立ち止まっているうちに、出来ることはたくさんある。
(本文引用)
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 先日、プレジデント2013.8.12号を読んでいたら、こんなページが目に留まった。
 「あなたの稼ぎを上げる7つの学び方」
 その7つのポイントとして挙げられているのは、「自学自習をしているか」「日々の行動目標を立てているか」「自己アピールをしているか」「なりたい自分のイメージを演出しているか」「仕事の報酬は仕事を意識しているか」...etc.というものだった。

 これを読み、私はある小説を思い出した。まさにこれらを実践している人間たちが生き生きと飛び回る、とびきり面白い小説を。

 その小説の名は、「ランチのアッコちゃん」
 この、クウネルの「私たちのお弁当」(この本はお弁当本として秀逸)を思わせる愛らしい表紙を、書店で見かけた方も多いであろう。
 それもそのはず、最近、書店で何カ月も平積みになっており全国で話題沸騰中。はっきり言って、今さら紹介するまでもない作品である。

 さて内容はというと、ムムムムム・・・・・・・・・これは話題になるだけある!
 読みやすさは、その可愛い見た目と重なるが、中身はどうしてどうして、見た目からは想像もできないほどタフで深みのある、心技体そろった見事な人間&ビジネスドラマだ。
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 本書は、4話からなるオムニバス構成。
 それぞれの物語の主人公は、「今、立ち止まっている」-いや「かつて立ち止まっていた」と言ったほうがよいだろうか-ともかく、今現在の自分の状態に落ち込み苛立つ者たちだ。

 恋人に振られ、友達もなく、消えてしまいたい気持ちを抱えながら日々職場に通う、女性派遣社員。
 お嬢様学校に通っていたというブランド力だけを武器に、合コン通いに明け暮れる30代女性。
 一流商社をバックとしたベンチャー事業を任されたはいいが、日々ノルマ達成のために夜明け近くまで残業をし、社員共々心身を病みかけている男性社長。
 そしてあまりの無能ぶりに、その社長から忌み嫌われ退職する天然女性正社員。

 ・・・改めてこう書くと、ありがちな設定のように思えるが、彼女・彼らが人生の突破口を見出すプロセスは、もう全神経がシビれまくるほど面白い。






 まず表題作の「ランチのアッコちゃん」は、前述の女性派遣社員・三智子が、辣腕女性部長アッコに声をかけられ、一週間ランチを交換するというもの。
 三智子の地味な手作り弁当をアッコ女史が食べ続け、三智子は毎昼、当日朝に指示された場所へランチを食べに行く。店もメニューも食べ方も全くバラバラ。まるでスパイごっこか何かのようにしてランチをとりつづけた結果、三智子が得たものとは・・・?

 そして第二話「夜食のアッコちゃん」では三智子とアッコの背景が変わり、第一話からは想像もできない生きる道筋を見つけ、たくましく歩いていく。

 第三話「夜の大捜査先生」はやや目線を変えて、かつては自分を無敵と思い込んでいた元コギャル・野百合が、さんざん手を焼かせた熱血教師と再会し、自分をゼロから見つめなおすストーリー。

 そして、夫も私も「一番面白い!」と意見が一致した最終話「ゆとりのビアガーデン」
 体力とガッツを見込んで採用した女性社員・玲美は、恐ろしいほどミスが多い所謂「使えない」社員。
 社長の雅之はそんな玲美にさじを投げ、一切無視して仕事に取り組み、その結果いづらくなった玲美は退職する。
 しかしその1年後、玲美は驚くべき形で雅之の前に姿を現す。
 そしていつしか玲美は、傾きかけた雅之の会社の救いの女神となる。

 この玲美の姿が、もう言葉にならないほどかっこいい。
 冒頭で述べた「稼ぎを上げる学び方」・・・「自学自習をしているか」「自己アピールをしているか」「なりたい自分のイメージを演出しているか」「仕事の報酬は仕事を意識しているか」...etc.は文字だけ見ると何だか堅苦しく面倒なように思えるが、それらを全て体現したのが、まさしくこの玲美。
 すぐさま「あ、こうすればいいのかぁ」と真似できるものでもないが、玲美の言葉や行動の端々には様々な「生きるヒント」が隠されている。いや天晴れだ。

 もしも今、自分が停滞している、気分が乗らない、生きている意味がわからない・・・などと目の前に靄がかかっている状態ならば、ぜひ読んでほしい。
 読みながら、目に映る景色が霧が晴れたように明るくなり、思わず地面を思い切り蹴って、歩き出してしまうはずだ。

※僭越ながら、ドラマ化熱望。4夜連続・各2時間で。
●キャスト(妄想)(敬称略)
アッコ女史:天海祐希、三智子:大島優子
カレー屋:斎藤工、社長:北村総一朗
野百合:北川景子、ゾノせん:山下真司
玲美:南明奈、雅之:田辺誠一、ビル管理人:笹野高史

失礼しました~。



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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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