わが盲想 モハメド・オマル・アブディン

 青春だ、これは。青春だ。
 好きな勉強をして、好きな趣味に没頭できる毎日に、ぼくは終わりかけた青春をもう一度取り戻すことができた気がした。

(本文引用)
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 今年の夏休みの課題図書は、これで決まり!
 そう断言したくなる、青春一直線、青春真っ盛りの一冊がこれだ。

 盲目のスーダン人が、はちきれそうなほど大いなる夢と希望と熱意を携えて、19歳で日本に上陸。
 以来、様々な言語や異文化と戦いながら、オヤジギャグまで使いこなして人生を疾走する、自称「盲外黒人」の体験記-その名も「わが盲想」

 ある有名な本をもじったとしか思えないタイトルといい、帯の「ぼくが書いたよん」というコメントといい、そこはかとなく大笑必至のにおいが漂いまくっている一冊だが、これは笑いだけではない。


 夢をもち、諦めずに生きることの素晴らしさ、自由に意見の言える世界の貴重さ、そしてそれができないことの残酷さをも訴える、大真面目な本でもあるのだ。
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 著者モハメド・オマル・アブディンは、弱視で生まれ、12歳で視力を失う。家族は、優しい母、彼を含め3人が盲人という5人の兄弟、そして、雷親父を地でいく超恐ろしいライオンパパだ。

 ある日、アブディンは、友人から「日本で鍼灸を学ぶ留学生を募集しているらしい」との話を聞きつける。
 
 大学で法律を学んでいたアブディンは、日本に行きたい一心で急きょ進路変更をし、留学生選考試験を受ける。
 あまりにも未知の世界に足を踏み入れようとする息子に、父親は猛反対。しかし、親戚中まで巻き込んでの説得の末、アブディンは日本行きの切符を手に入れる。

 かくして、初めて見る雪景色に迎えられ、アブディンの日本での生活が始まる。
 しかし、そこで突き当たる様々な壁は、父親など目ではないものだった。
 日本語、点字、鍼灸の専門用語etc.
 勉強についていけなければ、スーダンに強制送還されてしまうアブディン。
 
 アブディンの運命やいかに!?
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 とまぁ、こんな風に思わせぶりに書いてはみたが、アブディンは(元々、非常に優秀な頭脳をもっていると見受けられるが)不屈の努力と、岩をも通す意志の強さで、次々と道を切り開いていく。

 鍼灸の国家試験に合格し、次は情報処理を学び、ついには東京外国語大学の留学生試験をも突破し、政治や歴史、文学を学ぶ道へと進む。
 そしてその突破力は、学問だけではない。
 日本人とより親しむために漢字を学び、タンデムで自転車旅行も敢行、素晴らしい女性と結婚し、新しい命も授かる。
 そのパワフルな生き方は、南スーダンの内戦で命を散らした親友たちの分まで生きようとするかのようだ。

 さらに私が感銘を受けたのは、アブディンを支える人たちの、底抜けの明るさだ。
 「天才的な説明」で「時差ボケ」の意味を説明し、デコピンを連発する、留学生受け入れ団体の理事長。
 アブディンが視覚障害者であることをすっかり忘れ、あわてて粘土と割り箸を使って、必死に漢字を教える先生。
 毎晩毎晩、ハイレベルのおやじギャグでアブディンを打ち負かす、ホームステイ先のお父さん・・・。

 このお父さんのおかげで、アブディンが

「スーダンは日本より数段広くて、数段暑い国だ」


 というギャグを完成させ、初対面の人と打ち解けられるようになったとの件には、いつの間にか目から涙がこぼれていた。その涙が、笑いによるものなのか感動によるものなのかは、未だにわからないのだが。

 そしてとりわけ印象的だったのが、靴ひもを結ぶ講座。
 目が見えないことから、ずっと他人に靴ひもを結んでもらっていたアブディンに、盲学校の先生が自力で結べるよう指導する。

「モーハメド君、きみはこの作業を15年前にできてないとあかんかった。プライドが許さないのはわかるが、これが最後のチャンスだと思って真剣にやってくださいな」


 猛特訓の末、アブディンは自分で靴ひもを結べるようになるのだが、この「生後19年と9か月目」にして達成した小さな出来事が、後の生き方に多大な影響を与えるのである。

 このように、アブディンを囲む人々は、彼がこれからより自信を持って堂々と人生を歩めるよう、影となり日向となり尽力するのである。
 アブディンもすごいが、常にユーモアを忘れず、彼の力になろうと心を尽くす周囲の方たちの姿には、もう本当に頭が下がる思いだ。

 最高に痛快で、最高に笑えて、泣けて、驚きもいっぱいの輝ける人生賛歌「わが盲想」。
 この夏の課題図書に、心から推薦したい一冊である。

 最後に、留学生受け入れ団体の理事長が、アブディンとすれ違うたびにささやいたという言葉を載せておきたい。

“Where there is a will , there is a way.”



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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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