千住文子さんを偲んで ~【再掲載】千住家にストラディヴァリウスが来た日~

 2013年6月27日、エッセイストであり教育評論家でもある千住文子さんが亡くなられた。
 真摯で情熱的で、でも軽やかな千住さんのエッセイが、私は大好きだった。

 今回は、以前ご紹介した千住さんのご著書「千住家にストラディヴァリウスが来た日」のレビューを、改めて載せたいと思う。
 
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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「私、これから一生懸命働いて働いて、このヴァイオリンの重荷が少しずつ軽くなっていくことを考えると、とっても嬉しくって・・・」
(本文引用)
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 一流になる人物とは、いったい何が違うのだろう。
 才能だろうか。努力だろうか。運だろうか。はたまた資本だろうか・・・。

 どれもあるのかもしれないが、一流になるのに最も欠かせないもの、それは「胆力」である。

 「胆力」・・・それはいわゆる「肝っ玉」であり、物事に対して恐れたり、尻ごみしたりしない精神力。一流になるために、そして一流の人物がさらに一流になるためには、この胆力こそが必要なのだ。

 そう教えてくれたのが、今回ご紹介する「千住家にストラディヴァリウスが来た日」である。


 千住家でヴァイオリンの話とくれば、国際的ヴァイオリニストの千住真理子さんの話であることは容易にわかるであろうが、この本はその話だけではない。

 日本画家の千住博氏、作曲家の明氏という2人の兄はもちろん、母親の文子氏、そして何より慶應義塾大学名誉教授である工学博士の父・鎮雄氏ら家族全員の、苦難と戦いと覚悟を描いた手に汗握るドキュメンタリーだ。
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 ある日、スイスの大富豪が亡くなり、隠し持っていたストラディヴァリウスが発見された。
 それは300年以上も前に、製作者アントニオ・ストラディヴァリの手元から忽然と姿を消した一丁だったという。
 その「幻のヴァイオリン」が、時空を越えた旅を重ねて、ついに日本にやってくる。そして千住真理子氏は、その持ち主となる千載一遇のチャンスに出会うことになる。

 しかしその名器の所有者となるには、何億という目のくらむようなお金がいる。
さてどうするか。

「近道を探すな。そういうずるい方法を考えるな。遠い道を苦労して歩きなさい。そして、音を上げずに頑張りなさい。」


 一家の大黒柱であった父・鎮雄氏のそんな言葉を思い出しながら、千住家は一丸となってストラディヴァリウスを手にするべくお金の工面に走り回る。
 世界最高の音を清らかな心で奏でるために、どこまでも清廉な方法で手に入れようと、彼らは東奔西走するのだが・・・。
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 以前、DeNAの創業者である南場智子さんのインタヴューを読んだとき、印象に残っていたのが、「自分のした選択を最高のものにする」という言葉だった。

 ああ、成功する人物というのは、自分の選択をいちいち振り向かない、いったん選択をしたらそれが正しかったというふうに己を持っていくのだな、と、ある意味逆転の発想に胸を突かれた。

 そして千住家の人々もそうなのだ。

 長男の博氏が芸術系の道に進みたいと打ち明け、滑り止めなしで東京芸術大学を受験すると決めた時。
 次男明氏もまた、芸術の道を歩むために慶應大学工学部の籍を抜いた時。
 そして長女真理子氏が、このストラディヴァリウスを手に入れた時。

 各界で一流となっている三人だが、みな「自分の選択は全て自分が責任をもとう。そしてその選択を最高のものにしよう」という前向きさとエネルギーが並大抵ではない。

 そしてそれを見守る両親の「どんなに遠回りになっても正しい道を歩め」という、良い意味での頑固さ、辛抱強さに驚かされる。

 これは家族の姿を描いたドキュメンタリーであるだけでなく、家族という「解散させるわけにはいかない」一企業の財政面や人材育成を、経営者の目からみて描いたビジネス書のようともいえる。
 そしてまた、家族ひとりひとりが「自分の人生という企業の経営者」であり、その企業の浮沈を乗り越えようと邁進する社長たちの「胆力の物語」なのである。


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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
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