オレたちバブル入行組 池井戸潤

 「この銀行で、上司をコケにして出世しているのはお前ぐらいのものだぜ」
 (本文引用)
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 GO!GO!半沢!(GO!GO!半沢!)
 いけ!いけ!半沢!(いけ!いけ!半沢!)
 お~前が討ぅた~ぁなっきゃ~、明日は雨~、半沢~!

 ・・・7月7日より、いよいよドラマ「半沢直樹」が放送される。
 好きな小説がドラマ化されるのは嬉しいものだが、自称「半沢直樹ファンクラブ会長」(※そう名乗る人物が、おそらく日本に数万人はいるであろう)の私にとって、これほど心躍ることはない。
 今年は最高の七夕になりそうだ。

 さて、その半沢直樹なる男が正義の鉄拳をくらわせる、池井戸潤の「オレバブ」シリーズ。
 以前、シリーズ3作目の「ロスジェネの逆襲」について書いたが、今回ご紹介するのはその1作目「オレたちバブル入行組」


 バブルと共に銀行の安全神話も崩壊した日本。
 そのなかで、一人の銀行員が、一人の人間として、世の中の理不尽に果敢に立ち向かっていく物語の、記念すべき第一幕である。
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 メガバンクの一角、東京中央銀行で融資課長を務める半沢直樹は、窮地に立たされていた。
 融資先の鉄鋼会社が倒産し、5億円もの巨額貸し倒れが発生。
 その責任を、すべて半沢がとらされそうになっていたのだ。

 粉飾決算を見破れなかったのも、信用不安があったのに融資を承認したのも、全部半沢のせい。
 もしそうなれば、銀行員としての明日はない。

 しかし、融資を強引に取り付けたのは、上司である支店長・浅野。
 半沢は、その不自然な行動から、鉄鋼会社社長と浅野との関係を徹底的に洗っていく。

 そしてもちろん、絶対不可能と思われる5億円の回収も-。

 しかし刻々と過ぎる時間の中、浅野をはじめ、その息のかかった連中の間で「半沢斬り計画」が着々と進められていく。

 半沢直樹、もはや絶体絶命か?
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 ・・・読みながら、これほど喜怒哀楽できる本もない。
 
 まず、何といっても“怒”。
 自分の責任を、見るに堪えない汚い手口で部下になすりつけようとする上層部たち。
 一体どういう人生を歩んできたら、こんな人間になるんだ?と首を傾げたくなるほど傲慢な国税職員。
 そして何より、一文無しのような顔をしながら、裏ではとんでもない生活をしていた鉄鋼会社社長・・・。
 もうどれもこれも、怒!怒!怒!

 作中、

頭のフタが抜けそうなほど怒りが沸騰


 という表現があったが、まさにその通り。読みながら、敵のあまりの狡猾さに怒り過ぎて、頭のフタが抜け耳から煙が出てショート、全身のブレーカーがバンッ!と落ちそうであった。(ドラマでは、ぜひCG等で堺雅人さんの頭のフタを抜いていただきたい)

 ちなみに解説で新野剛志氏が「池井戸さんは怒りキャラ」と語っているが、そう、池井戸潤の小説は、いつも何かに激しく憤怒している。表紙に耳を当てるだけで、マグマの流れる音が聞こえてきそうなほどだ。

 だからこそ、後から表れる「喜」と「楽」が実に映える。徐々に半沢に追い風が吹いてくる過程が、悶絶するほど痛快で面白い。

 意外なところから発覚する社長の不正、愛する家族にだけは絶対に知られてはいけない浅野の痛恨のミス、エリート然とした者がその驕慢さゆえに見落とした“動かぬ証拠”・・・。

 なかでも、車の後部座席に置かれたティッシュの箱から、社長の隠された真実を手繰り寄せていく場面なんぞ、もう背筋がゾクゾク。
 企業小説で、極上の推理小説級の謎解き感覚を味わわせてくれるあたり、さっすがミステリー出身の池井戸さんだ。

 最後は、池井戸作品お決まりの大逆転ホームランへとつながり「あー、気分スッキリ!読んで良かった!」と相成るわけだが・・・読み終えてすぐ、この小説がそんなに単純なものではないことがわかる。

 どんなに自由人に見える半沢でも、今現在生活していくためには、銀行員として生きていくしかない。どんなに軽蔑する職場でも、辞めるわけにはいかない。
 我らがヒーローとどんなに崇めても、結局は、組織の歯車、駒のひとつでしかない。

 これが喜怒哀楽の“哀”。そんな悲哀が、この作品をただの勧善懲悪で終わらせない深みを持たせている。

 だからこそ、私はこの「半沢直樹」という男を信じて、ついて行きたい。
 世間では「晴れの日に傘を差し出し、雨が降れば取り上げる」と言われ、行内では邪魔者扱いかもしれないが、この男は、こんな言葉を信じさせてくれる。

「たまには正義も勝つ!」


 よっしゃ、半沢はん!
 頭取になるまで、ついて行きまっせ!


 ※ドラマ化に際して、改めて本作を読み直してみたが、「半沢さんって、こんなに喧嘩っ早かったっけ?」と驚いた。
 「ロスジェネ~」のほうが、だいぶ人間が練れているように思う。
 このように成長を見守れるのも、シリーズ小説の醍醐味なんだろうな。


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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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