極北 マーセル・セロー

 人は誰しも、自分が何かの終末に居合わせるであろうことを予期している。誰も予期していないのは、すべての終わりに居合わせることだ。
(本文引用)
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 「本当の虚構などない」

 この小説を読み終えたとき、まずその言葉が降りてきた。
 
 人はなぜ、作られた物語に感動するのか。なぜ嘘の話だとわかっていても、心を揺さぶられるのか。
 それは、その嘘の中に、必ず事実と真実が入り込んでいるからである。

 身を切る酷寒、次々と消えゆく生命、壮絶な孤独、敵意、憎悪、殺戮、そして絶滅。
 それらが作り上げる「無の世界」は、21世紀の日本に住む私にとっては想像もできない世界だ。


 しかし、この小説を読んでいると、その荒廃した世界がとうてい他人事とは思えなくなってくる。いや、もしかすると明日にでも、この世界はやってくるかもしれない。
 「虚」の中で、虚以上にすさまじい「実」が巨大な力で押し寄せてくる物語。
 それが、この「極北」だ。
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 舞台は極北の地、シベリア。
 主人公のメイクピースは、米国からの開拓者の子供として、この地で生まれ育つ。
 しかし気がつけば、多くの住民たちは姿を消し、残っているのはメイクピース1人だけとなる。

 ある日、そこに飛行機が墜落する。
 それを見たメイクピースは、飛行機に乗っていた者たち、そして作った人間たちに思いを馳せ、絶望の中に一筋の光を見出す。

 自分は一人じゃない。他の世界があるのでは。

 そしてメイクピースは、旅に出る。自分の知らない「何か」を見つける旅に。
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 メイクピースは、その飛行機を北極星としながらただひたすら歩いていくが、その道のりは当然ながら生易しいものではない。
 誰かと出合い安堵するのも束の間、異文化同士で排除が起こり、人は獣と化す。
 そうして歩くうちに、人間の敵は「目に見えるものだけではない」ことに気づく。
 それは、人間が何かを得ようとして支払った、残酷なまでに大きな代償だった。

 ページをめくり、そこに辿り着いた瞬間、私は叫んだ。
 「これは虚構じゃない!」

 ある人は、この物語を原始的な過去の世界というだろう。
 またある人は、途方もない未来というかもしれない。
 しかしその実態は、今、私たちが目の前にしている現代社会そのものである。

 戦争、テロ、原発事故、人口減少、異物の排除・・・寓話のような顔をして、人間の負の側面をむごたらしいまでに見せつける本書を読み切るのは、正直に言って苦しい。
 しかし、メイクピースが飛行機を北極星にして歩いたように、本書を北極星にして歩いても決して損にはならないだろう。いや、これからの生き方の道標とすべきかもしれない。

 なぜかって?

 理由はただひとつ。

 21世紀の日本に住んでいるからである。

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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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