64 ロクヨン  横山秀夫

 一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。
(本文引用)
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 すでにこの作品の評判は、聞き飽きるほど聞いていた。
 「警察小説の金字塔」「桁が違う」「この作品が読めただけで十分お釣りがくる一年」・・・etc.

 横山秀夫7年ぶりの新刊という期待に加え、「このミステリーがすごい 2013」での1位獲得、そして絶賛の嵐。
 これは読まないわけにはいかないだろう!と思いつつ、読んでしまうと他の作品が読めなくなってしまうのではないかという恐怖感が募り、昨年から書棚にしまったままだった。
 しかし、とうとう意を決して読んだ。

 そして思う。

 やはり読まなければ良かった。読んではいけなかった。
 こんな小説を読んでしまったら、他が読めないじゃないか!

 ・・・嫌なような嬉しいような予感は、まんまと的中したのであった。
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 主人公は、某県警で広報官を勤める男、三上。
 社会への窓ともいえる広報は、日夜、事件事故の情報をどこまでマスコミに開示するかに頭を悩ませている。

 実名か、匿名か。
 被害者と加害者、そしてその家族。
 彼らの人権と、実名で報道することの意義とを秤にかけて、警察と記者クラブとの間を往復する毎日だ。

 そんなある日、警察庁長官がある事件の遺族宅を視察するという。



 
 その事件とは「ロクヨン」。
 昭和64年・・・昭和最後の年に起きた誘拐殺人事件だ。
 未解決とはいえ、風化しかけているこの事件。
 10年以上の月日を経て、なぜ今さら警察庁トップによる訪問なのか。

 実はその裏には、にわかには信じがたい思惑があった。

 三上は、広報官として、警察の人間として、そして現在行方不明中の娘をもつ父親として、全身全霊でこの事態に臨むのだが・・・?
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 とにかく、密度が濃い。

 実は私は、横山秀夫の文体に若干苦手意識がある(巧みすぎて頭がついてかない)のだが、もうそんなことは言っていられない。
 文体が皮膚だとすれば、内容は血、骨、内臓。
 この小説の骨と内臓の強靭さ、そして流れる血の濃さは尋常ではない。
 そしてそれらは本という体から飛び出し、強烈な握力をもって読者の内臓を引きずり出し骨抜きにする。
 読み終えた瞬間、私は体中の力がダランと抜けて、しばらく動けないほどであった。

 さり気なく、実にさり気なく張られたいくつもの伏線。
 緻密に書き込まれた人物像、他人を慮る者、陥れる者、怖気づく者、立ち向かう者、懐柔される者、されない者。
 大量の油の中に水を投げ込んだような、職業人としての誇りをかけた激しいぶつかり合い。
 そして・・・。

 「このミステリーがすごい 2013」でのインタビューにおいて、横山氏は「面白さは青天井」という言葉を用いて、作品に取り組む姿勢を語っておられたが、この小説の面白さはまさに青天井。
 序盤から終盤までその面白さが緩められることはなかったが、最後の最後に明かされた真実には、思わず「ええっ?」「ええっ?」「ええーーーーーーっっ!!」と何度も叫んでしまった。
 そして同時に、私はその真実に隠された事件当事者の心を思い、涙が止まらなかった。
 人間ドラマとミステリーの融合、ここに極まれり、だ。

 そんな緊張と緩和の大波が間断なく襲ってくる647ページを、難破することなく読み終えることができ、今、私は心から幸福感に浸っている。

 横山秀夫先生、本当に本当にどうもありがとうございました。

 (それにしても次、何読もう?)

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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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