中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?

 私はNHKが「みなさまのNHK」だけでなく「みなさまがNHK」でもあって欲しいと思っています。
 (本文引用)
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 前回ご紹介した「何者」は、今考えると二重構造の物語だったような気がする。
 
 直接会って話をする所謂リアルなコミュニケーションと、もうひとつ、ツイッターでの言葉。
 どちらが実像でどちらが虚像なのか、それを惑わすのが小説「何者」の魅力だ。

 今やもうひとつのコミュニケーションとして、すっかり定着の感のあるツイッター。


 最近では警視庁まで導入し、オレオレ詐欺への注意喚起を促す内容から、「みかんの汁がささくれにしみます」といったユルい内容までつぶやき、フォロワー獲得に力を注いでいるということだ(2013/01/28 日本経済新聞夕刊より)。

 さて、そこで読んでみたのがこちら「中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?」である。
 
 NHK広報公式アカウントである、NHK_PR1号氏によるツイート。
 これでもか、とばかりに真面目で堅いオーラを放つNHK。しかしそのつぶやきは、これでもかとばかりにユルい脱力もの。
 アイコンが指す時刻は、ずばり「おやつの時間」
 その脱力系キャラが受けたのか、今やフォロワー数541,618(2013/02/02現在)。
 そんな大人気ツイートの軌跡を、1号氏自らがつづった渾身のドキュメンタリーである。
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 本書では、NHK広報の公式アカウントをとるまでの経緯(もとは公式ではなかったというのに驚いたが)、アイコンができあがるまでのフォロワーとのやりとり、アカウントの性格設定など、それこそNHKが「何者」かになろうとするまでのプロセスが丁寧かつユーモラスに書かれている。

 時には、曜日を間違えるなどという凡ミスをしたり、bot(=「自動的にツイートをするプログラム・アカウント」(本文引用))と真剣に会話をしたりと、読んでいる私が赤面してしまうようなエピソードもあるが、そこがまたこのユルツイートの良いところ。
 「わたくし、フォロワーの方々と共に成長していきたく存じます」といった殊勝な心がけがうかがえ、たいへん好感がもてる。

 さらにこのPR1号、ただ単にユルいだけではない。
 まるで天然系の女の子が合コンで一番モテてしまうかのように、PR1号氏は他局の広報とユルユルと交流し、着実にメディア全体のシナジー効果をあげていく。
 その様子は、かつて「欽ちゃんのどこまでやるの」発のアイドルわらべが、「ザ・トップテン」や「ザ・ベストテン」に出演したときの興奮を思い出させる。
 (※「欽どこ」はテレ朝、トップテンは日テレ、ベストテンはTBS。ある特定のテレビ局発祥のグループが他局の歌番組に出るということは、当時非常に画期的なことだった。)

 しかし私が思う本書の魅力とは、PR1号の愛らしさではない。
 ツイッターの声とは、そのまま世間の声なのか?という問題をズバッと提起している鋭さだ。

 小惑星探査機はやぶさの帰還、そして東日本大震災・・・日本中が心にとめた出来事に遭遇したとき、このPR1号氏は何を感じ、何をつぶやいたか。
 そしてフォロワーたちは、それらをどう受け止めたか。
 さらにフォロワー以外の人たちは、それらの事象についてどう感じているか。
 その三者間の意識のギャップを描いたエピソードは、ツイッターというものの側面、いや本質をついたものといえる。改めてハッとさせられ、非常に興味深く読むことができた。

 そして震撼する。
 そもそもツイッターというものの中には、人が存在するのだろうか?と。
 私という姿をしたプログラムが、自動的につぶやいているだけなのではないか?と。

 そんな問題を容赦なく投げかけてくる、この3時のおやつ。
 どうやら、なかなか食えない奴のようだ。

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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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