「囚われの山」感想。八甲田山死の真相!なのに「山の話」ではないのが面白い!

「退却することも勇気だと誰も言わなかったところに、逆に軍隊の弱さがあるんです」
(本文引用)
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 個人的に「山岳小説にハズれ無し」と思っている。
 また著者が伊東潤さんということで、「骨太本格小説」というのは確実。
 
 テーマ・著者、どちらから見ても「読むしかない」と判断。
 買って正解。
 謎が謎呼ぶ展開で、ページをめくる手を止められず・・・購入した日に一気読みしてしまった。

 しかしこの「囚われの山」、「思ってたんと違う」のが正直な感想。
 「山岳小説」と思って読んでいたら、実は「山の話」ではなかった。
 いや、まぎれもなく「山の話」なのだが、真のテーマは「山の話ではない」。


 なぜ私が「山の話なのに、山の話ではない」と思ったのか。
 あらすじと共に述べていきたい。
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■「囚われの山」あらすじ



 菅原誠一は出版社・社員。
 
 現在、歴史雑誌の編集部に身を置いている。

 売上低迷の起死回生策として、「八甲田山遭難事件」に迫ることに。
 
 今なお「世界最大」といわれる「八甲田山遭難事件」。
 菅原は事件の資料を読むうちに、ある疑問に行き当たる。

 最初の報告書には「死者数200」とされていたのに、後日「199」となっている。
 軍隊が概数を書くとは思えない。
 最初の報告も、後の報告も正確な数であるはず。
 それにも関わらず、なぜ「死者数が異なっている」のか。

 菅原は八甲田山に赴き、「1名の謎」を追う。
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■「囚われの山」感想



 本書の魅力は「山の話」なのに「山の話ではない」点だ。

 だからといって「八甲田山の話はどこに行った?」というわけではない。
 八甲田山遭難事件の真相も、量・質ともに濃厚に書かれており、山岳小説としても満足できる小説だ。
 
 しかしそれなら、他の山岳小説と変わらない。
 本書が一線を画している理由は、「遭難事件」を通して「人生の不可思議」を書いてるから。

 主人公の菅原はプライベートでも大きな悩みを抱え中。
 物語は、そんな菅原の現状とリンクしながら進んでいく。

 そして終盤に向かうにつれ、こんなことに気づかされるのだ。

 山も人生も、とらえているようで、囚われてるのだ、と。
 自らつかみ取っているようでいて、飲み込まれているのだ、と。

 だから本書は「山の話」なのに「山の話」ではない。
 読むうちに「もしかしてこの山って・・・自分の人生のこと、言ってる?」と愕然としてしまった。

 ラストは驚きの「告白」で、思わずフフッ。
 
 それまで「私、人生に囚われているのかぁ・・・。運命の手のひらに転がされてるのかぁ・・・」と落ち込んでいたが、そんな思いは一変。

 思わず一人で、こうつぶやいていた。

 「人生に囚われてみるっていうのも、案外いいかもしれないな」

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「囚われの山」を読むなら、事前に「死に山」を読んでおくとベター。
事の発端となる本なので、読んでおくと理解が深まります。↓
●「死に山」のレビューはこちら

 
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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