「凍てつく太陽」感想。日本推理作家協会賞・大藪春彦賞W受賞作だけど・・・それだけでいいの?

 「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのは」
(本文引用)
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 2018年度・大藪春彦賞、2019年度・日本推理作家協会賞受賞。
 そんな栄誉に輝いた本であるが、実際に読むと、正直「ええっ?」という印象。

 「凍てつく太陽」は、そんな賞では到底収まらない超大作。
 いや、決して大藪春彦賞や日本推理作家協会賞を「小さい賞」と思っているわけではない。

 海外出版されて、国内外でもっと大きな賞をもらっても良いのでは?と思ったのだ。

 「犯人と真相を追う」という意味では、確かに「日本推理作家協会賞」がふさわしいかもしれない。
 潜入捜査、破獄等々の場面も多く、ハードボイルド・冒険小説ともいえるだろう。

 
 しかし本書には「推理・冒険」なんていう枠をポーンと超えている。
 
 「誰が犯人で、誰がどうしたこうした」なんていうレベルで語れない、「全人類レベルの大問題」が描かれている。
  
 だから大藪春彦賞・日本推理作家協会賞だけでは勿体ない。
 さらに言うと、日本に閉じ込めておくのも勿体ない。

 本書のメッセージではないが、国も民族も越えて出版・評価されて良い傑作だ。
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■「凍てつく太陽」あらすじ



 舞台は太平洋戦争下の北海道。

 特高刑事・日崎八尋は朝鮮人になりすまし、鉄鋼会社の飯場に勤務。
 飯場から朝鮮人が脱走した事件を解決するための、潜入捜査だ。

 しかし日崎はある日、冤罪をかけられる。

 飯場管理者と、鉄鋼会社統括者の陸軍少佐二人が、殺される事件が発生。

 死因は毒殺。
 
 実は日崎の父が、かつて研究していた毒物と同じものと判明し、日崎に容疑がかけられたのだ。

 アイヌ出身で、内地の人間から差別を受ける日崎。
 今回の冤罪は、自分の出自のせいなのか? それとも・・・?

 軍と警察は日崎に罪をなすりつけつつも、真相を究明。
 一連の事件の、“真の黒幕”は・・・。
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■「凍てつく太陽」感想


 
 世界が分断され、ますます差別が激化している今、「よくぞ出てきてくれた」と言いたくなる一冊。

 本書を読むと、こんなことにハッと気づく。
 
 今、多くの人々は「自国を愛すること」=「他国を否定・排除すること」と思っているのではないか。
 「自分の民族を愛すること」=「他の民族を貶めること」と思っているのではないか、と。

 本書に登場する人々は、戦況下ということもあるが、国・民族の分断に苦しめられている。
 自身も「この苦しみは、本当に必要な苦しみなのか?」「国家・民族を分け隔てなく考えれば、もっと楽に生きられるのでは?」と、うすうす気づいている。

 しかしそれを口に出すことなど、到底できない。
 
 真意を口にできないから、事件の真相究明も遠のくばかり。

 「極端な国粋主義」・「他国の排斥」が、無辜の市民の人生をねじ曲げてしまう経緯は、苛立ちを通して悲しみすら感じるもの。

 だから本書は、「現代」に求められる一冊。
 差別・ヘイト・排斥の時代に必要な一冊。
 分断が進む全世界に、読まれてほしい一冊なのだ。

 タイトルも「あゝなるほど・・・」と深く納得。
 
 太陽は宇宙でたった1つ。
 その1つの太陽のもと、バラバラになって争う人類を、太陽はどう見てるのか。

 まさに凍てついていることだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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