何者 朝井リョウ

 想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。他の人間とは違う自分を、誰かに想像してほしくてたまらないのだ。
 (本文引用)
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 イタタタタタタタ・・・。
 
 この小説を読み、まず感じたことだ。
 これは決して、この小説がイタいという意味ではない。
 イタいのは、この私だ。

 平成生まれ、私より20歳近くも下の若者に、私は自分の胸倉をつかまれ思いっきり引っぱたかれてしまった。イタタタタタ・・・。
 
 そう感じてしまうのは、おそらく約20年前の就職活動のせい。
 私は様々な会社で「何者」かになりたがり、そして見事なまでに惨敗したからだ。
 (とりあえずもぐりこめた企業に、結婚・出産も経つつ何とか約20年も勤めていられるのは非常に幸運だといえるであろう。職場の皆様に改めて感謝。)


 さて、そんな就職活動をめぐる大学生たちの心模様、人間模様を鮮やかに描き出した朝井リョウ著「何者」。
 私のようなオバハンに果たして理解できるだろうか・・・とかなりドキドキしながら購入したのだが、読み終えて一言。

 「すっごく面白かった!」

 ・・・そして思う。
 朝井さん、なぜもう20年早く生まれてくれなかったのか(もしくは「私よ、なぜもう20年遅く生まれなかったのか」)と。
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 仲間同士でエントリーシートを見せ合い、キャリアセンターに足を運び、面接会場でバッタリ出会い、内定すればお互いに祝いあう。
 物語に登場する学生たちの活動は、一見どこまでも健全だ。
 
 しかし、その心中は壮絶なまでに毒々しい。
 その毒の吐き方は、まさにネット全盛の現代ならではのものなのだが、思う気持ちは世代を問わない。
 ちょっと表現ツールが違うだけで、誰にでも渦巻く感情だ。

 この小説は、その描き方が非常にうまい。残酷なまでにうまい。
 そのために、か弱い私は途中、胸の痛みと眩暈とで読んでいられなくなりそうになった。
 
 しかし実を言うと、そのちょっと意地悪な目線が、もうたまらなく面白かった。
 まるで橋田寿賀子か内舘牧子のドラマを観ているようで、最後の最後まで目が離せなかった(どこがか弱いんだか)。

 そんなブラックな気持ちで読み進めながら、私は自分の就職活動を思い出し、なぜ落ち続けたのかがようやくわかった気がした。
 
 「こりゃ、誰も採らないわな」と。

 ずいぶん長い月日を要してしまったが、それに気づけただけでも、この小説を読んで本当に良かった。私は今、満足感でいっぱいだ。

 20年前とは違い、今やSNSでいくらでも「何者」かになれる。「何者」かを量産できる。
 充実した毎日を送る「誰か」、ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか、とでも言いたくなる深い思想を持つ「誰か」、そしてそれを「上から目線」で傍観する「誰か」・・・。
 朝井リョウさんは「自分も含めた同世代に、こうした問題を提起するつもりで書いた」と語るが(2013/1/21 日本経済新聞 夕刊より)、同世代なんてとんでもない、あらゆる世代に十分提起できる問題だと、私は思う。

 実際、私もこうしてブログやツイッターを書くことで「何者」かになれると、まだ信じているのだから。
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 最後にひとつ、お願いが。
 朝井さん、次は純粋なミステリーを書いてはいただけないだろうか。
 なぜなら想像力が足りない私は、この物語の結末にひっくり返るほど驚いてしまったから。

 まさか、あの人が、ねえ・・・。

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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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