「香港デモ戦記」感想。「タイトルそのまま」だからこそ「読む価値あり」と感じた一冊。

 「日本には民主主義があるが、香港にはない。だから、今、ぼくはここにいて戦っている」
(本文引用)
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 「タイトルそのまま」のまっさらな本。
 香港デモの様子を、余計な味付け(著者の思想等)なしで、ひたすら伝える本である。

 そう聞くと「物足りない」と思う人もいるかもしれないが、私は逆に「まっさらだからこそ読む価値があった」と感じている。

 香港デモに参加する若者の声を、シンプルにストレートに聞くことで、却って冷静に「では日本はどうなのか?」と考えることができた。

 これがもし「香港かくあるべし!」という、著者の思いが詰まった“熱い本”だったら、私も流されてしまったかもしれない。
 自分の本当の気持ちを見つめることなく「そうだ、そうだ! 香港はこうなるべきだ!」などと、香港の欠点にばかり目が行き、日本のことを棚に上げてしまっただろう。
 (井戸端会議で、誰かが誰かの悪口を言って盛り上がりだしたら、自分も「そーよねー」と言ってしまうような感覚。)

 しかし本書ではただひたすらに、「香港デモの様子と、参加者の生の声」を淡々とつづっていく。


 だから「悪口に思わず賛同」という心理状態に陥らず、「自国は果たしてどうなのか」と落ち着いて考えることができた。

 日本は本当に民主主義といえるのか?
 日本は本当に自由といえるのか?
 日本は本当に住みよい国といえるのか?

 「香港デモ戦記」は「香港」以上に、「自国を知る機会、自国について考えるチャンス」を存分にくれる一冊だ。
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■「香港デモ戦記」内容



 本書は、2019年に勃発した香港デモを追う本。
 
 以前から、普通選挙実現を求める運動等はあったが、デモを加速させたのは「逃亡犯条例の改正」。

 「中国本土に、刑事事件容疑者を引き渡せる」という改正案に、香港市民が「反対」の声を上げ、デモが拡大していく。

 その後、現在に至るまで「香港の独立性・誇り・民意尊重」を望む声は収まらず。

 著者は、そんな「香港の今」をあらゆる角度から緻密にレポート。

 「デモ参加者へのインタビュー」、「デモに関する各国の報道」、そして「著者の目の前で、今まさに起きているデモの様子」をじっくりと伝えていく。
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■「香港デモ戦記」感想



 先述したように、“香港デモをそのまんま写し取った本”。
 
 香港デモに対する賛否等、「どちらを支持すべきか」を知りたい人には、物足りないかもしれない。

 だが、誰に導かれるでもなく「自分は、香港をどう思うか。どのようにしていけば良いと思うか」を考えたいなら、本書はおすすめ。

 さらにそこから派生して、「日本はどうなのか」「そもそも、住み良い国とはどんな国なのか」まで、思いを巡らすことができる。
 
 なぜ本書を読むと、自国に引き付けて考えることができるのか。

 理由は「生々しさ」と「多面性」。

 周庭ほかデモ参加者のインタビューが豊富に盛り込まれているため、つい「日本だったらどうだろう」「自分だったらどう思うだろう」と、思わず想像。

 また著者は、アニメ等エンタテインメントの世界にまで「政府VS市民」の争いがおよぶ様子を細かくレポート。
 なかでも「ちびまる子ちゃん」「ポケモン」の表現方法にまつわるエピソードは、「大陸に対する香港人の複雑な思い」がヒシヒシと感じられるもの。

 とっつきやすいテーマからも「香港の深刻な事態」を詳細に伝えているため、「もしこんなことが日本文化にも起きてしまったら・・・」「日本でも娯楽・芸術が恣意的に統制されてしまったら・・・」と思わずブルッ。

 「香港の人々の生の声」「日常生活のあらゆる場面における影響」を豊富に盛り込んでいるため、否が応でも自分に引き付けて考えさせられる。

 つまり本書は「著者の考えを一方的に伝えてくる本」ではなく、「“考えること”は読者に託し、そのきっかけ・材料を存分に与えてくれる本」といえるだろう。

 だから私は「本書を読んで良かった」と思っている。
 徹頭徹尾、ニュートラルな立場で「香港デモ」について書かれているため、「自分で考えること」を放棄せずにすむ。
 「自分で考えること」で、「ならば日本はどうすればよいか」「日本にどうなってほしいか」「人々が本当に住み良い国とは、どんな国なのか」をとことん掘り下げることができる。

 もし本書が一方的に、賛否を押し付けてくる本だったら、こうはいかなかっただろう。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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