「夏の災厄」あらすじ感想。医療従事者の方々に心から感謝したくなる、迫力の一冊。

 「たとえばさ、極端な話なんだけど、この患者さんが実は伝染病だったとしたら、どうするの? 教えてもらえなかったここの診療所は、汚染されていたりするわけでしょ」
(本文引用)
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 「夏の災厄」を読み、ハタと気づいた。
 
 新型コロナ肺炎が「今までにない病」とわかるまで、医療従事者の方々は患者と接していたということ。
 
 まだフェイスシールドやビニール幕もない状態で、「ただの風邪」と思い病院に来た患者を、親身に診察・看護。
 
 中には、患者から感染・重症化し、「この病気はいったい何? 今までと何か違う・・・」と苦しんだ医療従事者もいるであろう。

 今、医療従事者の方々に対する感謝の言葉が上がっている。
 しかし振り返れば、本当に本当にごくごく初期から、医療従事者の方は命がけで、人々を救いつづけてきたのだ。


 篠田節子著「夏の災厄」は、徹底的に医療関係者の立場から書かれたエピデミック小説。

 特に看護師の視点から描かれているのが、本書の特徴。
 医師と市民を結ぶ「看護師」ならではの鋭さで、疫病の本質に斬り込んでいく。
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■「夏の災厄」あらすじ



 房代は、保健センター勤務の看護師。

 ある日、一人の男性が頭痛を訴え来院。
 房代は男性の熱を測るが、その時、男性は奇妙なことを言い出す。
 

「いい匂いがするなあ」


 房代たち看護師は、香水などつけない。
 それにも関わらず、男性は「花のような良い匂いがする」と言っている。

 確か昨日も、女性患者が「いい匂いがする」と言っていた。
 そして翌日も、頭痛を訴える患者が「良い匂いがする」と発言。
 
 房代は彼らの共通点が気になり、その後の経過を調べる。

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 調べた結果、彼らは一様に重篤化。
 他の病院に搬送された者、急転直下で死亡した者・・・。

 「何かが違う」・・・房代がそう感じている間にも、同じ症状を訴える患者が日に日に増えていく。
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■「夏の災厄」感想



 本書は疫病について「発覚前」から「収束まで」を濃密に描写。
 
 590頁という長編だが、息をするのも忘れる思いで読んだ。
 
 まず「未知の病」に「動く」というのは、何と難しいことかと痛感。

 この症状、何かと違う。
 でも何なのかわからない。
 わからないけど、患者はどんどん死んでいく。
 わからないから、医療従事者への保護が充分でなく、命の危険にさらされる。
 そして、わかった後も変わらず「死の最前線」に立たされる。
 でも未だ、有効な予防・治療法はわからない。
 
 「わからないことだらけ」の病とは、人間にとって何と恐ろしいものであるか。
 本書を読むと、新型コロナのような「未知の病にまつわる“わからない”という恐怖」に戦慄する。

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 そして、ある事実に行きつき、ドキリとする。
 
 房代や和子、そして彼女たちを囲む医師や研究者の行動から、その「恐怖の最前線に立たされている」のは「医療従事者なのだ」と。

 「わからない恐ろしさ」、そして「わからないのに、他人のために身を投げうつ恐怖」を一番あじわっているのは、他でもない「医療従事者の方々」なのだと気づかされるのだ。

 今、医療従事者の々が差別される事態があるという。

 「母親が看護師というだけで、保育園から預かりを拒否される」
 「親が医師、看護師というだけで、クラスで『コロナ』といじめられる」
 「近所から白い目で見られる」・・・。

 「夏の災厄」を読めば、それがいかに理不尽な仕打ちであるかがよくわかる。
 
 そしてつくづく思う。
 医療従事者の方々には感謝しても感謝しても、しきれないということを。

 まだ本当の収束までには、時間がかかるだろう。
 でもいくら時間がかかっても、医療従事者の方々への感謝の気持ちだけは色褪せることなく持ちつづけたい。
 
 約600頁を読み終えた後、私はページを閉じながら、そっと目を閉じた。

 医療従事者の方々、毎日本当に、どうもありがとうございます。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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