「人類と病」感想。感染症克服の合言葉、それは「病に国境なし」。

 身勝手なナショナリズムが蔓延る今だからこそ、感染症協力に内在する潜在力を最大限生かす政治的努力が求められている。
(本文引用)
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 世界中、誰にでも「健康でいる権利」がある。
 本書を読み、そんな当たり前のことに「ハッ」と気づかされた。

 自分の思考を振り返ると、コロナに対し「自分さえ良ければいい」「自分の周囲さえ安全ならいい」と思っていた気がする。
 心のどこかで、「ウイルスを持ち込むな・持ち込ませるな」という排除主義・分断主義に陥っていたかもしれない。
 
 だが本書で、そのような分断主義は「コロナ終息を遠ざける」とわかり愕然。
 
 世界中の人は皆、「健康でいる権利がある」と考え、手を携えていく。
 気候や経済状態がどんなに異なっていても、「健康でいたい」という気持ちは変わらず、それは叶えられねばならない。

 本書では「自分のコロナ対策」ではなく、「世界の感染症対策」に視座を上げ、病との闘いを解説。

 
 「真のコロナ対策・感染症への向き合い方」が、ありありと見えてくる一冊だ。
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■「人類と病」内容



 本書は「国際政治」の視点から、感染症の歴史と対策を解説。
 
 ペスト、天然痘、チフス、コレラ、マラリア、エボラ、ポリオ、エイズ、SARS・・・。
 そして新型コロナウイルスまで「人類が世界全体で、どう病と闘ってきたか、闘っていくべきか」を解いていく。

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 ワクチン接種や治療を、世界中でどう進めていくか。
 感染症克服に、人類が束となってできることは何か。

 国際政治学者の観点で、世界の人々を取りこぼさない感染症対策を教示する。
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■「人類と病」感想



 「病に国境はない」
 さらに言うと「病の対策に国境はない、国境を設けてはいけない」。

 本書を読み、最も感じたことだ。

 輸送や交通の発達で、感染症が世界にはびこるのは、今や避けられない。
 もちろん「水際対策」も重要だ。
 しかし感染症の収束には、「世界が一枚岩となって当たること」が欠かせない。

 これは、医学だけでなく「国際政治学」の視点で書かれた本書だからこそ、得られた知見だ。

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 象徴的なのが、ポリオとの闘い。
 種痘により天然痘根絶の目途がたった後、世界はポリオに注目。
 
 ポリオウイルスに感染すると、人間は四肢の麻痺や弛緩性麻痺などを引き起こす。
 20世紀初め、「子どもがポリオに感染すると麻痺を起こす」と恐れられたが、1950年以降ワクチン開発。
 
 ポリオワクチンが定期接種されることで、ポリオ患者は激減したのだ。

 この「ポリオの奇跡」は、ワクチン開発・実用化に向けた米ソの協力をはじめ、資金援助、WHOの貢献など「世界中の努力」の賜物だ。

 だが一方で、内戦などでワクチンが打てず、未だポリオに悩まされる地域もある。
 
 人類が「得体のしれない菌・ウイルスによる病」に勝つには、人間の都合で「取り残される人」を作ってはいけない。
 
 国や地域を越え、境を無くし、何人をも排することなく、ワクチン提供等の対策を行うべきなのだ。

 本書を読み終えた日、たまたま朝日新聞で、こんな記事を発見。
 
 国谷裕子氏と、世界経済フォーラム総裁・ボルゲ・ブレンデ氏はこう語る。

国谷  自国を何とかしようとするあまり、国際的な連携や協力が不足しています。米国にいたっては世界保健機関(WHO)への拠出を凍結すると言っています。
 
ブレンデ  同じ問題に直面していて、ウイルスには国境はないのですから、協力してあたるべきです。そうしないと、第2波、第3波を防げません。私たちはみな同じ船に乗っているわけです。1等客室も安全ではありません。先進国よりも大きな打撃を受ける途上国のことを語るべきです。

朝日新聞2020年5月21日朝刊 5面
「2030 SDGsで変える  グローバル化『負の部分』修正の景気に」より


 私はこれ以上ないほど、大きく首肯。
 おそらく「人類と病」を読んでいたからこそ、この記事に気づけたのだろう。

 本書の著者・詫摩佳代氏には、深く御礼申し上げたい。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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