伊与原新「月まで三キロ」あらすじ・感想。人生に疲れた人へ。科学こそ「生きるエネルギー」になる!

「赤ん坊の月は、地球のそばにいるじゃないですか。幼いころは、無邪気にくるくる回って、いろんな顔を見せてくれる。うれしい顔、悲しい顔、すねた顔、楽しい顔、さびしい顔、全部です。でも、時が経つにつれて、だんだん地球から離れていって、あんまり回ってくれなくなって、とうとう地球には見せない顔を持つようになる」
(本文引用)
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 現在、「生きているのがつらい」と感じている人は、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
 本当に、だまされたと思って、第一話だけでも読んでみてほしい。

 「生きるのがつらい」と悩む人に、こんなお願いをするのは傲慢かもしれない。
 「あなたに私の何がわかる」と誹りを受けるかもしれない。

 でも「月まで三キロ」に綴られる文字を、登場人物たちの思いを、悲しみを苦しさを寂しさを追ってみてほしい。

 そして同時に、本書を読みながら「人間の悲喜こもごもに関係なく活動をつづける自然界」に、そっと目を向けてみてほしい。

 
 今まで、あらゆる美辞麗句で「人生って楽しいよ」と言われても動かなかった心が、何か「変わる」。
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■「月まで三キロ」あらすじ



 「月まで三キロ」は6編から成る短編集。
 
 全てを失い、死に場所を探し彷徨う男。
 「どうせ私は」と、恋愛も結婚もあきらめかけている女性。
 中学受験の重圧に耐えかね、学校と自宅から離れる少年・・・。

 主人公はいずれも、人生の展望を見出せぬまま、身体をひきずるようにして生きている。

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 そんな彼らはそれぞれ、ひょんなことから科学の専門家と出会う。
 科学の目で世の中を見ると、今までと違う風景が見えてきて・・・?
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■「月まで三キロ」感想



 本書の著者・伊与原新氏は、科学の専門家。
 東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程を修了している。

 よって、非常に専門的な科学知識が物語に盛り込まれるのだが、それが何とも心を揺さぶる。

 「科学知識が心揺さぶる? どういうこと?」と思われるかもしれない。

 しかし本書を読むと、「科学こそ人の心を震わせ、生きるエネルギーを与える」ことに納得できるはず。
 
 月が常に同じ顔しか見せないこと。
 雪の結晶、虹、雲間から射す光・・・自然界には「一瞬の美」があまた存在すること。
 自然の事物は、どんなに勉強しても、全て把握することはできないこと。

 そして、どんな事柄も原子レベルにまで突き詰めると、同じであること。

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 本書を通し、そんな自然界の法則を知ると、自ずとこんな思いがわいてくる。

 「なんだ。生きてるって楽しいじゃん」
 「世の中、まだまだ楽しいこと、美しいことが隠れてるのに、見なきゃもったいないじゃん!」

 落ち込んでいる時、誰かが言葉を重ねても、素直に受け取れないかもしれない。

 しかし本書を読むと、「科学の言葉なら受け入れられる」と心がちょっと和らぐはず。

 だって人間は裏切っても、科学は裏切らないから。
 自然や科学は、誰にでも同じ表情を見せ、誰にでも同じ法則で動き、誰にでも等しく接するから。

 人間よりはるかに大きな「自然」が、私たちを包んでいるのだから、「人間のせいで人生を終える」のは、とてつもなくもったいない!
 
 「月まで三キロ」を読むと、そんなことに気づかされ、生きる力が本当にわいてくるのだ。

 本を読む気力もない・・・そんな人もいるかと思うが、とりあえず本書の第一話だけでも読んでみてほしい。

 第一話のラスト、タクシー運転手は主人公にこう問いかける。
 

「-で、どうします?」


 

「下見、続けますか」


 読む前と、読んだ後とでは、運転手への答が変わってくる。

 変わってくることを、願う。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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