「検疫官 ウイルスを水際で食い止める女医の物語」感想。常識外れの行動で感染症パニックを制した名医の判断とは?

「海外から入って来る感染症を食い止めることが検疫じゃないの? それが一歩越えたから私がやることではない、とそんな考えしか持てないのならば、検疫所はいらないことになりますよ。頭を切り替えてください」
(本文引用)
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 新型コロナウイルス感染拡大を受け、さまざまな対応がとられている。
 政府から、公立小中高・全国一斉休校という要請が出たが、自治体によって対応はいろいろ。

 「学童より学校に行ったほうが感染の危険性が低い」とし、「休校撤回」をした県もある。

 休校か、やや柔軟に対応するか、「休校せず」か。

 どれが正解かはわからない。

 ただ、独自に判断する自治体が出てくることは、こんなメリットがあると思う。

 「命令に簡単に従うのではなく、自分の頭で、『本当にその対策でよいのか』を考える」
 「たとえ常識はずれでも、本当に皆のためになる方法を、あらゆる視点から考える」


 同調圧力に屈することなく、現場を自分の目で見て、事実に即した対策をとる。
 そして周囲は、同調圧力に屈しない人を批判せず、ともに常識を疑ってみる。

 個々の対応を表明する動きは、そのように考える機会を与えてくれる。
自分の頭で考え、「一律に行動することに疑問を持ってみる」ということは、デマ拡散等のパニック防止にも有効だ。

 私がそんなことを思えたのは、この本を読んだから。
 
 新型インフルエンザの治療において、ただ一人、「本当に有効な方法」を唱え立ち向かった医師。

 岩崎惠美子の奮闘を知ったからだ。
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■「検疫官 ウイルスを水際で食い止める女医の物語」内容



 本書は、医師・岩崎惠美子を描いたノンフィクション。
 
 岩崎氏は耳鼻科医だったが、ある日、米国で一人の男性医師と出会う。
 彼は、「50歳になったら医師の仕事を社会に使いたい」と言い、50歳になった年、医療が整っていない中南米に本当に旅立っていった。

 岩崎は夫と3人の子どもがいるなか、仕事と家庭を両立させながら、耳鼻科医として奮闘。
 その日々のなか、時おり中南米に発った医師を思い出し、「自分も途上国で仕事がしたい」と考える。

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 かくして、岩崎はインドに赴き熱帯医学を究めることに。

 世界各国で疫病・感染症対策に心血を注ぐ。

 時には生物兵器のテロ対策に乗り出すことも。
 同時多発テロ直後、2002年のワールドカップでは、炭疽菌によるバイオテロにピリピリしながら対策を練った。

 そして2009年、ある感染症が出現。
 新型インフルエンザが世界で猛威をふるい、日本にも上陸。

 そのとき、岩崎が指揮を執る仙台だけ、ある対策を講じる。
 
 当初は「常識はずれ」と言われた岩崎の手法だが、徐々に風向きが変わることに。
 結果、岩崎による「仙台方式」が正しいことが日本中に知れ渡り、皆が「仙台方式」を採用することになる。

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■「検疫官 ウイルスを水際で食い止める女医の物語」感想



 災害や感染症が起きた時、最も必要なこと。

 それは事実や「信用できる情報」を選び取り、さらに「自分の頭で考える」こと。

 本書を読むと、心の底からそう思え、背筋が伸びる。

 岩崎氏は自身がマラリアと闘いながら、インドやアフリカ大陸で感染症患者を治療。
 「日本人で初めて、エボラ出血熱を現場で治療」という豊富なキャリアから、「自分の知識・先見力・感覚」を信じ、たとえ誹りを受けようとも「最良の方策」を実行。

 その勇気が、八方ふさがりの感染症対策に、風穴を開ける展開はただただ感動。
 
 「そうだ、こういうパニック時こそ、信用できる情報を見極め、自分の頭で考えることが重要なんだ」と痛感させられる。

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 もちろん、感染症の専門医と素人では同列に語ることはできない。
 専門家が「自分の頭で考える」のと、素人が「自分の頭で考える」のとでは、次元が違うのはわかっている。

 しかし本書を読むと、素人であっても「自分の頭で、自分なりに先々の状況を予想し、周囲に流されず冷静に行動すべき」とつくづく思う。
 
 新型インフルエンザ流行時、岩崎氏が実行した「仙台方式」のエピソードは、素人にとっても「パニック時の対応」を教えてくれる。

 1人ひとりが、信用できる情報を集め、自分なりの対策を遂行する。

 そんな、同調圧力に屈しない思考が、このたびの新型コロナウイルス感染拡大下では重要なのではないか。

 岩崎氏の行動を読むと、そう思わずにいられない。

 現在、ワクチン開発や治療法など、新たな情報がどんどん報じられている。

 情報があふれ、すぐに拡散する現代、戸惑うことも踊らされることも多いだろう。

 そんな時、「検疫官」を思い出し、「自分の頭で考える」ことを心がけたい。

 周囲に惑わされない思考・行動が、結局、自分の身も周囲の身も守る。

 新型コロナウイルスの行方がわからない不安な「今」だからこそ、岩崎氏の勇気と判断を思い出し、行動していきたいものである。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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