小松左京「復活の日」あらすじ感想。東京五輪の年に書かれた予言的名著。感染症はなぜパニックを引き起こすのか。

  人間は永遠に手いたい試行錯誤によってしか、物事を知ることができないものなのだろうか?
(本文引用)
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 「初版あとがき」を読み、思わず「ウソッ・・・!」と叫んだ。 

 「昭和三十九年八月      小松左京」


 昭和39年は、東京五輪が開かれた年。
 奇しくも、感染症で世界中がパニックに陥る小説が「東京五輪開催年」に出版されていたのだ。

 人気俳優の死を皮切りに、各地で突然死が続発。
 その真相は、全身麻痺を起こす細菌だった!

 小松左京著「復活の日」は、感染症によるパニックを緻密に描いたSF小説。

 しかし読めば読むほど、とてもフィクションとは思えない。
 
 なぜ「フィクション」とは思えないのか。

 
 それは今、実際に起きている“新型コロナウイルス・パニック”と、ゾッとするほど似ているからだ。
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■「復活の日」あらすじ



 ある日、イタリアでスター俳優が交通事故で死亡する。
 
 同乗していた女性によると、突然ハンドル操作を誤ったという。

 死因を調べたところ、俳優は「神経麻痺による心臓停止」を起こしたという。

 しかし彼に持病はなく、関係者は首をかしげるばかりだ。

 その後、世界のあちこちで心停止・痙攣による不審死が続発。

 人間だけでなく動物も謎の死を遂げる。

 当初は「チベットかぜが原因」としていたが、調べを進めるうちに、何かが違うことが発覚。

 アルプス山中で発見された遭難機付近に、ジュラルミン製トランクの破片が散乱。
 
 そのトランクの中身こそ、急性心筋梗塞を起こす魔の細菌。

 雪解け、知らずに踏みつけた捜索隊の下山・・・細菌が地上に降り立つとともに、謎の突然死が頻発しはじめたのだ。

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■「復活の日」感想



 有り体に言おう。

 もう、ホンットーーーーに読んだ方がいい!
 
 新たな感染症が現れると、人間がいかに理性を失うか。
 なぜ教育も文明も発達しているのに、性懲りもなくデマに踊らされてしまうのか。

 感染症まん延に伴う人間心理を、非常に克明に描いているからだ。

 震災や疫病が起こると、それ事態も怖いが、いちばん怖いのは「冷静な判断ができなくなること」だ。

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 今回の新型コロナウイルスも、今や感染そのもの以上に、「物資の品薄」に対する恐怖が上回っているように思う。

 デマが発端となったトイレットペーパー買い占めに始まり、ティッシュペーパーやオムツ、生理用品まで店頭から消えている。
 
 「オイルショックの反省が活かされていない」と、眉をひそめる専門家もいるという。

 無駄な買い占めは、本当に必要としている人に物資が行きわたらなくなる。
 また物資不足による不安はストレスを与え、ますます人々の体力・抵抗力を奪ってしまう。
 
 「復活の日」は半世紀以上前に書かれた本であるが、新型コロナウイルスに伴う「パニック行動」を、恐ろしいほど見事に言い当てている。

 それが「東京五輪の年」というのは本当のたまたまの偶然であろうが、50年以上前に書かれた苦言が的中しているというのは、好ましくない偶然。
 いや、「人間は学ばない動物である」という“必然”なのかもしれない。

 新型コロナウイルスのデマ拡散や買い占め騒動を通じ、今こそ「災厄の時に、どんな行動をとるべきか、何を学ぶべきか」を真剣に考える時であろう。

 本書ラストで、著者はこう綴る。

 「行く手にはまだ、疾病はじめもろもろの未知の危険がまちかまえているだろうし、人数が増えて行けば、“人の心”もまた危険となるだろう」


 「復活されるべき世界は、大災厄と同様な世界であってはなるまい」


 「あの“知性”というものが、確率的にしかはたらかず、人間同士無限回衝突したすえにようやく、集団の中に理性らしきものの姿があらわれるといった、きわめて効率の悪いやり方をふたたびくりかえすことになるのかもしれない」


 そしてこう主張する。

 「その迂回路を少しでも短くする責任は-一番最初の責任はわれわれにあるのである」

 
 一番の責任は、今、われわれにある-今最も耳が痛く、最も肝に銘じるべき言葉である。
 
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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