「流浪の月」あらすじ感想。本屋大賞候補作!事件の本当の加害者は「読者」かもしれない。

 「わたしのしてることは、きっとおかしいんだろうね。病気だと思われてもしかたないんだろうね。心配してくれてありがとう。でも、もう見捨ててほしい」
(本文引用)
______________________________

 本屋大賞ノミネート作。
 SNSでも非常に評判が良いので、読んでみた。

 そして1ページめを開いた瞬間から「あ、これは買って正解」と予感。
 すぐにグイッと引き込まれ、家事も放り出し一気読みした。

 世間をにぎわせた少女誘拐事件。
 その事件に一生つきまとわれる、被害女性。

 だが本当に恐ろしいのは、彼女を囲む世間。
 つまり本書を読む私こそ、彼女を最も苦しめる加害者かもしれない――読みながら、そんな恐怖がわきおこった。

 怖い。自分の残酷さを突き付けられてつらい。もう責めるのはやめてくれ。
 そう思いながら、いや、そう思うからこそ、私は読む手を止められなかった。

_________________________________

■「流浪の月」あらすじ



 家内更紗は9歳のとき、19歳の男子大学生・佐伯文に連れ去られた。
 正確に言うと、自分からついていった。

 ついていった理由は、家に帰りたくなかったから。
 実は更紗は預けられていた伯母の家で、従兄弟から性的虐待を受けていたのだ。

 文は紳士的で、更紗に一切手を出さず、衣食住をきちんと整え生活していた。
 更紗は幸せだった。

 しかしついに行方を突き止められ、心穏やかな生活は終わりを告げる。

 その後、更紗はずっと「誘拐された子」「傷物にされた子」という目で見られ、「余計な優しさ」に傷つけられる。

4a1a5120781c639191559bb80e5390e7_s.jpg


 恋人の亮も多分にもれず、更紗に優しい。
 だがその優しさの裏には、やはり「更紗はひどいことをされた」という思い込みが隠れていた。

 そんな誤解・偏見に苦しんでいたとき、更紗は職場仲間とカフェに行く。

 マスターを見た瞬間、更紗の体はこわばった
 佐伯文、その人だったからだ。

____________________________

■「流浪の月」感想



 本書の魅力は、「とうていカテゴライズできない小説」であることだ。

 恋愛? ミステリー? ヒューマン? ホラー?

 どのカテゴリーに当てはめようとしても、なにか違う。
 どのカテゴリーに押し込めようとしても、思いっきりはみ出してしまう。
 一言で「●●小説です」などと片づけられない重みと、型にはめられない雄大さが、本書にはあるのだ。

 「流浪の月」は「少女行方不明事件」をとおし、世の偏見・人間の狡猾さを残酷なほどえぐり出す。

 更紗がどんなに「文の無実」「文の清廉さ」を訴えても、誰の耳にも届かない。
 とりあえず「ひどい目にあった更紗ちゃんはかわいそう」という構図に乗っかっておいたほうが楽。
 「良い人」アピールをすることができる。

a056e76f8bf40d81bb046759acd5860a_s.jpg


 そんな「世間の非情さ・人間のずるさ・浅はかさ」を、本書はこれでもかと描いて描いて描きまくる。

 誰と恋愛をしても、誰と一緒に働いても、家族との絆を深めても、更紗はそんな「人間のいやらしさ」から、どうしても逃れることができない。

 だから本書をカテゴライズするなど、とうてい不可能。
 恋愛やミステリー、さまざまな要素を持つものの、「人間の嫌な本質」が物語全てを覆いつくす。

 そんな「人類の問題点」を突きつけるスケールの大きさが、本書の素晴らしさだ。

 こう書くと、ひどく後味の悪い小説に見えるかもしれないが、読後感は意外なほど爽快。
 読みながら胸中に渦巻いていたヘドロが、ラストではザァッと一掃される。

 重苦しい空気を一変、青空が突き抜けるような空気に変える手腕は、ただただ見事。
 さすが本屋大賞候補作!
 読者の心を徹頭徹尾、グッと離さぬ傑作だ。

 「流浪の月」、ぜひ近いうちに映像化してほしい。
 勝手にキャスティングしてみたので、関係者の方、何卒ご検討を・・・。

●更紗:住田萌乃(子ども時代)、小芝風花(大人時代)
●文:横浜流星(←絶対!)
●亮:鈴木伸之
●安西:今田美桜
●谷:新木優子

詳細情報・ご購入はこちら↓
関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告