長岡弘樹「119」あらすじ感想。消防士版「教場」!焼けたからこそ浮かび上がる、残酷な真実とは?

 いまのところはっきりしているのは、それが、けっこうな無理をしてでも伏せたままにしておきたい過去らしい、ということだけだ。
(本文引用)
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 「教場」で長岡弘樹ファンになった方、お次は消防版「教場」はいかがだろうか。
 
 「119」が描くのは、消防士たちのミステリー。
 火災現場から見えてくるのは、隠しても隠し切れない「人間の思惑」。
 
 「焼けてしまえば証拠消滅」なんてとんでもない。
 焼けたからこそ、人間の画策がありありと浮かび上がるのだ。

 火災、自殺、事故・・・現場と被害者の行動から、消防士たちがハッと気づく「残酷な真実」とは?
 
 消防士として訓練された者だけがわかる、素人にはわからない「真相」とは?

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■「119」あらすじ



 本書は9編から成る短編集。
 全話、主人公は消防士か、その家族だ。
 
 たった一文字から、交際中の女性の闇を読み取る者。
 火災が起きた部屋から、被害者の財産を取った者。
 倒れたタンスがトイレのドアに。閉じ込められた末、苦肉の奇策で消防を呼ぶ者。
 火災現場に、謎の遠回りをして向かう者。
 小学校での講演依頼を、意外な思惑で引き受ける者。
 消防士である息子の死を、「消防士ならではの知識」ゆえに悔いる者・・・。

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 消防士としての知識と技能は、時に諸刃の剣となる。
 彼らは純粋に、正義のヒーローとして職を全うできるのか?
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■「119」感想



 「119」も「教場」と同じく、OJT系ミステリー。
 警察官ではなく、消防士としての訓練を通して、謎を解き明かす物語だ。

 ドラマや原作で「教場」にハマッた人は、間違いなく「これこれ! こういうのがたまらないんだよね~」と悶絶しながら楽しめるだろう。

 しかも「119」は「教場」より、さらに内容がマニアック。
 
 自殺を思いとどまったにも関わらず、再び自殺を図った女性の動機が、ある習慣と「一文字」から見えてしまう。
 火災現場の写真から、1つの事実が「あっ」と見えてきて、消防士転落事故が急展開等々。

 「消防士ならではの豆知識」から、事件の全貌が露わになる展開は、誰かに話したくなること請け合いだ。
 (私は実際に、家族に話した。
 「消防士さんって、こうやって現場に向かってるんだって! その理由はね」「現場の写真から、こんなこともわかるんだって! 悪いことってできないよね~」等々。
 いやもう面白くって、つい・・・。)


 特に「消防士ならでは!」の味がひかるのが、次の2話。
 「灰色の手土産」と「フェイス・コントロール」だ。

 「灰色の手土産」は、消防士が講演を引き受ける物語。

 消防司令(係長)の今垣は、部下・大杉に講演依頼をする。
 小学校で、命の大切さを伝えるという講演だ。

 大杉が渋っている間、ある事故が発生。
 公園で男性が、犬にかみつかれているという。

 犬が離れず、被害者が受傷中と聞き、今垣・大杉はすぐに公園へ。
 今垣が車内から病院に連絡し、大杉が犬と対峙し、被害者を救助する。

 その事故後、大杉は講演依頼を承諾し、無事遂行する。

 事故も講演も一件落着と思ったが、今垣は講演の内容を読み直し、ふと疑問が。
 
 「犬と対峙」「講演を承諾」・・・その二つの行動には、大杉の意外な思惑が隠れていた。

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 さらに「フェイスコントロール」は、消防士の知識を使い、読者の裏をかいたもの。
 消防士は救助する際、笑顔を見せないといけない。
 しかしただ一人、それがどうしてもできない消防士がいた。

 上司は、そんな不器用な彼を叱責してパワハラ寸前。
 そんなとき、上司が火事に巻き込まれて・・・?

 「119」を読み、改めて「完全犯罪は無理!」と認識。
 
 火は全てを焼き尽くすように見えて、「真相」だけを見事に残す。
 「焼いて証拠を隠す」のは、思いっきり逆効果。
 焼け跡ほど、「罪」を饒舌にしゃべるものはないのだ。

 そして「119」を読むと、「魔が差す」ことの恐ろしさに震えがくる。
 くすぶっていた憎悪の心が爆ぜた後、人はどんな心境に陥るか。

 もし現在、復讐などを考えているなら「119」を手に取ってみてほしい。
 一瞬の「魔」で、人生が破滅するかもしれない。
 
 ゆめゆめ「火を放って証拠隠滅」などと思いませぬよう・・・。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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