「熱源」あらすじ感想。直木賞・「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞作。まさに生きる熱源となる名作。

 「そこには支配されるべき民などいませんでした。ただ人が、そこにいました」
(本文引用)
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 読みながら、胸がカァッと熱くなるのがわかった。

 心がたぎってくる、という感じだ。
 
 人は誰でも、幸せに生きる権利がある。
 しかし世界には、「幸せに生きる権利」を奪われている人がいる。
 
 いや「幸せに」どころか、「生きる権利」「存在価値」そのものを否定される人がいる。

 そのような理不尽な思いをしている人が、己の生きる道を探り、必死に幸せになろうとする。
 心が熱くならずにいられようか?

 直木賞受賞作「熱源」は、まさに熱源となる本。


 「私は生きていていい、生まれてきて良かったのだ!」と、心の底から自分を肯定できるようになる。

 ずばり「生きるエネルギー、ガソリン」となる一冊だ。 
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■「熱源」あらすじ



 舞台は明治時代初頭の北海道。
 主人公はアイヌの少年たちだ。

 ヤヨマネクフ(山辺安之助)とシシラトカ(花守信吉)は開拓使たちに故郷を奪われ、樺太を出ることに。
 北海道内のアイヌ集落・対雁で暮らしている。

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 アイヌ民族は故郷を追われるだけでなく、差別も受ける理不尽な日々。
 
 村内で疫病が蔓延するという苦難のなか、樺太への帰還を決意する。

 そして世界にはもう一人、「己の存在意義」を問い続ける人々がいた。

 彼らの名はギリヤーク。
 サハリン(樺太)に住む少数民族で、ロシア人に土地や仕事を奪われている。

 アイヌとギリヤークの人々は、故郷・来し方を侵略され、存在を否定された身。

 彼らは侵略・差別に苦しみながら、故郷への思いを熱源として人生を歩んでいく。
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■「熱源」感想



 元気が出る小説というのは、数多ある。
 「熱源」も、大雑把に言えば「元気や希望がわいてくる小説」といえるだろう。

 しかし「熱源」はレベルが違う。
 DNAレベルで、生きるエネルギーがわいてくる。

 「私とは何か」「なぜ私はいるのか」「私は果たして、生きていて良いのだろうか」「生きる意味とはなんだろうか」
 
 多くの小説は「私が存在することありき」で、元気・希望を与えるが、「熱源」は違う。

 「私が存在しないこと」を起点に、生きる希望を与えてくれる。

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 「自分」の素となった土地・経済・言語・祖先・・・全てを含めて「あなたは生きていて良いんだよ、幸せになる権利が確固としてあるんだよ」と教えてくれるのだ。

 本書の主人公たちは、祖国・民族の絶滅に瀕し、存在そのものを否定されながら一日一日を生きていく。
 
 ただ少数民族に生まれた、というだけで「自分らしく生きる権利」「心置きなく幸福を求める権利」を侵されるというのは、想像を絶する苦しさであろう。

 しかしその艱難辛苦のなか、主人公が己を立て直していく姿やメンタリティには、ただただ感動、とにかく胸熱!

 なかでも本書終盤、ヤヨマネクフが大隈重信と話す場面には思わず落涙。

 「俺たちは滅びるんじゃないか、そんな心配をずっとしてました」


 「けど自分のことを振り返ったら、なかなか死なないんですよ。病気が流行っても、戦争に巻き込まれても、南極へ行っても。だから他の同族たちの運命も、そう悲観するもんじゃないなと思いました」


 そして南極に立ったことで「アイヌが見直されるのでは?」と言葉に呼応して、ヤヨマネクフはこう語る。

 「見直される必要なんかなかったんですよ、俺たちは。ただそこで生きているってことに卑下する必要はないし、見直してもらおうってのも卑下だと思いましてね。俺たちは胸を張って生きていればいい」


 私とは何か、私はなぜいるのか、私は生まれてきてよかったのか、生きていてよいのか。

 そんな「自分の存在意義」に悩んだら、ぜひ「熱源」を読んでみてほしい。

 「自分がいること前提」ではなく「自分が生まれる前の時点」から、「己の存在価値」が見えてくる。

 「命果てるまで精いっぱい生きよう」と、燃え盛る火のごとくエネルギーがわいてくるだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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