「刀と傘」あらすじ感想。しびれるほど面白い幕末版「相棒」!時代物・ミステリー両方読みたいなら必読!!

 「賢い人は小石を浜辺に隠すだろう。樹の葉は森に隠すだろう。浜辺が、森がなければそこに新しく拵えるだろう-それと同じだ」
(本文引用)
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 「ミステリが読みたい!」第1位にふさわしい、震えるほど面白かった大傑作。
 品のある文章、二転三転する推理、時代背景と見事に融合した「意外な真相」・・・。
 時代物としてもミステリーとしても、完璧以上に完璧。

 ミステリー(=一度読めば真相がわかる)にも関わらず、好きすぎて4回も5回も読み返してしまった。

 2020年が始まったばかりだが、すでに「今年読んだ本第1位」の予感がして仕方がない。
 いや~、いや~、本っ当に面白かった・・・読んでよかった・・・(まだ浸ってる)。

 
 幕末から明治に起きた、不可解な5つの事件。

 犯人は誰?
 尊攘派か開国派か?
 
 それとも武士の誇りをかけた自害か?

 司法の祖・江藤新平が、盟友とともに難事件を次々解決。
 史実とフィクションが見事に融合した“幕末版「相棒」”は、「時代物とミステリー、どちらも読みたい!」という人に絶対おすすめの傑作だ。
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■「刀と傘」あらすじ



 時は幕末。
 
 政権を握るのは徳川か朝廷か。
 徳川擁護派と討伐派で、一触即発の状況だ。

 そんな動乱のなか、尾張藩士・鹿野師光は武力衝突を避けるべく奔走。

 徳川擁護派の同志と、日々知恵を絞っている。
  
 実は鹿野は、一人の男をかくまっている。
 彼の名は五丁森。
 開国を声高に叫んでいるため、攘夷派にとっては邪魔な存在。
 鹿野は五丁森の身を守るべく、誰も知らない場所に五丁森をひっそり住まわている。

 ある日、鹿野は五丁森に、ひとりの男を紹介される。
 彼の名は江藤新平。
 佐賀から来た男で、文武両道と評判の才人だ。

 鹿野は江藤と一緒に、五丁森の隠れ家に赴く。
 訪れると戸は半分開き、中からは異臭が。

 「もしや!」と思い部屋に入ると、畳は血で染まった状態。
 五丁森は血飛沫のなかで、すでに事切れていた。

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 彼の居場所を知っているのは、鹿野を入れてたった4人。
 江藤は鹿野ら4人を疑うが、現場に遺された「書簡」から、意外な事実が浮上して・・・?

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■「刀と傘」感想



 著者の年齢を見てビックリ。
 28歳で、しかも本書がデビュー作。

 この内容と文体は、どう見ても「巨匠」レベル。
 「28歳?・・・10万28歳とかじゃないよね・・・。えっ、デビュー作? 超有名人気ミステリー作家が“別名でデビュー”とかじゃないよね・・・?」と疑ってしまった。

 本書の帯にも「これは凄い新人が現れたと、興奮した」と書かれているが、まことその通り。
 デビュー作がこのレベルとは、末恐ろしさにブルッと震えがくる。

 とにかくこの「刀と傘」、格調高い文体が「時代物」としても一級品だが、ミステリーとしては特級品。
 「謎解き」が二転三転四転五転して、最後は思わぬ地点で10点満点の着地。

 犯人が判明し、「なるほど~そういうわけか~」と安堵したところで、もう一声。
 明治に入っても息づく「武士道」の心、開国か攘夷かで揺れる、日本の中枢たちの思い・・・。

 ただのトリック・謎解きから、「幕末の人々の誇り・信念」にまで踏み込むと「アッ」と仰天。
 現代人には思い及ばぬ「ホントの真相・思惑」に、膝を打ち、涙しながら、幕末の世の喧騒・戸惑いに思いをめぐらすことだろう。

 なかでも秀逸なのは、第三話「監獄舎の殺人」。
 第十二回ミステリーズ!新人賞受賞作。
 日本推理作家協会および、本格ミステリ作家クラブの年間アンソロジーにも選ばれた作品だ。
 
 明治初期、平針六五という男が投獄される。
 平針は謀反で死罪を宣告され、刑の執行を待つ身。

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 長らく執行が延期されていたが、事態が一変。
 急きょ「今日の夕刻執行」と決定する。

 執行を伝えたのは、尾張藩士から司法省に移った鹿野師光。
 平針は鹿野の目の前でおかゆを口にするが、その途端に平針が死亡。
 死因は、おかゆに入っていた毒だった。

 「本日死ぬ」とわかっているのに、平針は自害したのか。
 「本日死ぬ」とわかっているのに、誰かが平針を殺したのか。

 鹿野は江藤新平とともに、真相を追究。
 江藤は、犯人は「平針の死刑執行日を知らない者」と断定。

 ある人物に容疑をかけるが・・・?

 前述したように、本書の物語は全て推理が二転三転四転五転・・・とどこまでも転がっていくのが魅力。
 
 私が「幕末版相棒」というのも、それが理由。
 最後の最後まで、まったく気が抜けない。

 「もしかすると、とんでもない思い違いをしていたのかもしれません」と、それまでの推理をひっくり返す真相が最後の最後で見えてくるのが、「刀と傘」の素晴らしさだ。

 特にこの「監獄舎の殺人」は、「ホントにホントの真相」が「におわせ」で終わってるのがたまらない!

 だからといって、不完全燃焼というわけではない。

 真犯人と、真犯人の思惑は明らか。
 でも「皆まで言わない」ところに、「刀と傘」の深みがある。

 フィクションとはいえ「現代の日本は、ずいぶん大きな罪のもとに築かれたのだなぁ」と、思わず足元を見つめてしまう。

 時代物ミステリーは数あるが、「刀と傘」ほど「歴史ロマン」を感じた本はない。
 謎解きを存分に楽しみながら、「己の礎」に遠く遠く、深く深く思いをはせた。

 彗星のごとく現れた新人・伊吹亜門による、絶品ミステリー「刀と傘」。

 「時代物とミステリー、両方一度に楽しみたい」という方は、ぜひご一読を。

 いやもうホント、面白いから。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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