「歴史の普通ってなんですか?」感想。「電車でメイク」は大正時代から!「昔はよかった」幻想、本当の原因とは。

 むかしは保育園がうるさいなんていう人はいなかった? むかしは地域の絆があって、社会全体でこどもを見守っていた? 歴史を直視せずにきれいごとを並べるのは、やめていただきたいものです。
(本文引用)
______________________________

 「昔」を美化する声が出るたび、こう思いませんか?

 「んなわきゃあない!」(タモさん風)
 
 「保育園建設反対」「児童虐待」「少年による凶悪事件」・・・そのような問題が起こるたびに、必ず飛び出すのがこんな声。

 「昔は子どもに優しかった」「昔の母親は必死に子どもを育てあげた」「地域みんなで子どもを見守った」etc.

 世の中には一定数、「自分の生きた時代」を「最高」と思いたがる人がいます。

 
 「自分の時代最高」の人は、今、何らかの社会問題や大事件が起こるたびに留飲を下げています。

 「それみたことか」とね。
 
 でも実は、こう思ってる人も少なくありません。

 「保育園がうるさいと思う人は、昔もいたのでは?」
 「児童虐待なんて、今に始まったことじゃないでしょうに」
 「凶悪な少年犯罪って、昔からあったよね・・・」

4a2d8f71e1d4112b4c8ebb7f77bf3fd9_s.jpg


 つまり多くの人は、心ひそかに思っています。
 
 「昔はよかった・・・なんてわけない」と。

 本書はずばり、そんな「んなわきゃあない」を証明する一冊。
 
 「保育園建設反対」「児童虐待」「ネイルで家事」「茶髪の無理やり染め」「電車でメイク」。

 そんな、あたかも「今始まったような社会問題」を、「今始まったわけではない」とバッサバッサとめった斬り。

 本書を読めば、「昔はよかった。一方、あんたたち若い世代は~」なんて説教を、思いっきり跳ね返すことができますよ。
 (聞き流すことも可。)
___________________________________

■「歴史の普通ってなんですか?」内容



 著者はイタリア人の劇作家パオロ・マッツァリーノ。
 日本文化史の研究家でもある。

 パオロ氏は、現代わきおこっている「社会問題」について、「本当に現代だけなのか」を徹底検証。

 調べてみると、どれもこれも「今に始まったことではない」と証明。

 歴史を知らずして「現代」を叩くことの滑稽さを、超辛口で説いていく。
_________________________________

■「歴史の普通ってなんですか?」感想



 本書を読み、とにかく驚くのが「昔と今が“あまりにも変わっていない”」ということ。

 保育園建設反対については、まあ想定内。
 「そりゃ昔から、共働きはたくさんいたし、保育園がうるさいのは避けられない事実だしねぇ・・・。建設反対は昔からあったでしょ」と想像できます。

 ところが、そんな「想定内」に収まらないのが、本書の魅力。
 
 ●「電車でメイク問題」は大正時代からあった。
 ●「生まれつきの茶髪を黒く染められた」は昭和40年代からあった。
 ●「ネイルで料理できなーい。漬物なんてできなーい」は昭和初期からあった。


 本書ではそんな「歴史的事実」を惜しげもなく公開。

 「昔は良かった」と酔いしれる人にとっては、かなり分が悪い内容となっています。

 さらに追い打ちをかけるのが、児童虐待。

 著者は昭和初期の「目黒もらい子殺し事件」を例にとり、「子殺し」の歴史を白日のもとに。

gyakutai.jpg


 乳児の遺体が大量に発見される現場を、野次馬(子どもも含む!)がゾロゾロ見物する様子まで紙面に収めています。

 そう聞くと「児童虐待とは違うのでは? 他人が殺害してるわけだから」と思うかもしれません。

 しかし著者の主張を読み込むと、様子が違ってきます。
 やはり「わが子の存在を消す」という行為は、昔からあったことがわかるんです。

 当時、「もらい子」ビジネスというものが成立しており、新聞にも「子授け」「もらい子」の依頼を掲載。

 「乳児の遺体が大量に発見されるのを、子どもを含む大衆が見物してる」という様子も含めて、「子どもの間引き」が意識の底に浸透していたことがうかがえます。

 さらに歴史をさかのぼると、江戸時代にも「子の間引き」は存在。
 
 つまり「自分の子どもを目の前から消す」という行為が、昨日今日のものではないとわかります。
 
 ここまでくると、もう「昔は良かった」という人は圧倒的劣勢に。
 
 「昔は良かったなんて言って、ごめんよ」
 「いえいえいいんですよ。私たちも至りませんで」
 
 世代が違う者同士で、こんな温かな会話も生まれてくるでしょう。

 ではなぜ、人は「昔はよかった」と言いたがるのでしょうか。
 これほどまでに「昔も今も変わらない」のに、自分の時代を美化し、異なる世代を貶めようとしてしまうのでしょうか。

 パオロ氏はその原因を辛辣に解説。
 「バ●は因果関係をひらめく」と主張します。

 たとえば少年犯罪について。
 もともと「母親は家にいるべき」と考える人は、「共働き」と「少年犯罪」を短絡的に結び付けて攻撃。
 

「未成年の犯罪が増えたのは、共働き家庭のせいに違いない!」


 と考えているのであろう、と著者は解説します。

 そこにパオロ氏は一撃。

 まともな高等教育を受けていない人たちは、よのなかは単純な法則に支配されていると思いたがる。だから、なにかとなにかが同時に増えている(または減っている)と気づくやいなや、そこに因果関係を見出してしまいます。ふたつの物事が偶然同時に増えるなんてはずねーじゃん。これ、ぜってーなんか関係があるんだよ。うわ、これに気づいた俺、マジ、神!
 宇宙の真理を発見してお喜びのところに水を差すようですが、残念ながらよのなかには偶然がたくさんあるのです。無関係なふたつの物事が偶然同時に増えたり減ったりする現象は、現実の世界ではむちゃくちゃたくさん起きてます。


 そう、物事の因果関係を証明するのは、実は非常に難しいこと。
 簡単に結論づけられるものではない、と熱く主張します。

 なんでも米国では、「ニコラス・ケイジの映画出演本数と、プールでの溺死人数の増減一致」というデータがあるとか。
 つまり「無関係の出来事同士が、たまたま一致するという偶然は存在する」ということです。

ecfd0e6f2525eca5928b0361eaeb794f_s.jpg


 昔を美化する原因は、増減の因果関係を安易に結び付けてしまうから。
 実は世の神羅万象は、「意外な偶然で増減が一致する場合がある」という事実を押さえていれば、「昔はよかった病」に陥らずにすむんです。なるほどー!

 年配の方に「昔はなかった」「昔は良かった」と言われそうになったら、ぜひ本書をスッと取り出してみて。
 
 相手は必ずグウの音も出なくなるはず。
 
 さらにそこから「どうすれば未来を良くできるか」、建設的な話し合いができれば理想的。

 でも逆に「どんなにがんばっても、人間は変わらないんだね」とあきらめちゃうかもね。

詳細情報・ご購入はこちら↓

関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告