「緒方貞子 難民支援の現場から」。並外れた決断力・行動力の源とは?国連難民高等弁務官としての10年を語る200頁。

★こんな人におすすめ!

●緒方貞子さんとは、どのような人物なのか知りたい人。
●人道支援の生の姿を知りたい人。
●「テロ・内戦を、どうすればなくせるか」を考えたい人。

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 「私は、最終的には、やっぱり人を生き延びさせる選択をとるよりほかにしょうがないんじゃないかと考えました。というのは、生き延びればもう一回チャンスが出てくるかもしれないんですよね、人間って。そこで殺されたら、それまでですから」
(本文引用)
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 「世界を変えた10人の女性」の記事で、緒方貞子さんが「世界に何をもたらしたか、人道支援の何を変えたか」について書いた。
 
 本書はさらに踏み込んだ本。
 何しろ緒方貞子さんの「声」が、そのまま収められている。
 生きた「緒方貞子さん」が、ここにいるのだ。

 NHKのプロデューサーが、緒方さんの真意を引き出すため、入念に準備を重ねて実現したインタビュー。

 「緒方貞子」とは、いったいどんな人物なのか。
 なぜ後にも先にも「彼女ほど有能な国連難民高等弁務官はいない」と言われる、行動ができたのか。

 本書を読めば、緒方氏の「並外れた決断力・行動力の源」がありありと見えてくる。

 「緒方貞子」という人物を知り、「世界」を考えるうえで、まず読むべき一冊だ。

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■「緒方貞子 難民支援の現場から」内容



 本書は、緒方貞子さんへのインタビューをまとめたもの。
 
 政治家・外交官の家系が人生に与えた影響、難民問題に関心を持った理由、国連難民高等弁務官としての日々、同時多発テロとの遭遇、アフガン支援・・・。

 緒方氏はそれぞれのステップで、大きな決断と、尋常ならざる行動力を示した。

 しかし世界はなかなか動かない、変わらない。
 無理に変えようとすると、命を奪われてもおかしくない。

 そのような危険な場で、緒方氏はなぜ多くの命を救う行動ができたのか。

 そして今後、世界に平和は訪れるのか。

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 NHKのプロデューサーが、「緒方貞子」の心の声に肉迫する。
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■「緒方貞子 難民支援の現場から」感想



 人間に対する絶望と希望。
 本書は、その両方を心の奥の奥まで痛感させる。

 緒方氏の原動力は「怒り」だという。

 「怒りかもしれないですね。何かうまくいかないと、がっかりするよりも怒りが出てくるんですよね。何とかしたいと、こんなことは受け入れられませんと」


 特に緒方氏が「怒り心頭」と語ったのは、人道支援の政治利用。

 旧ユーゴスラビア紛争において、UNHCRからの援助物資を、互いの勢力が妨害。
 民族を問わず、あくまで「無辜の市民の命を救う」という中立的立場で送った物資が、民族・国家間の勢力争いに使われたのだ。

 緒方氏はそこで、驚きの「援助停止宣言」。
 「怒り」による、この「宣言」が、本書の要。
 
 当時、かなり批判があったというが、その後、人道支援のあり方は大きく舵を切る。
 
 緒方氏の宣言は効果をてきめんに表し、援助は正常に再開されるのだ。

 こう書くとあっさりしているように見えるだろう。

 だが緒方氏のインタビューや、周辺の人物の声からは、どれほど「極限状態だったか」がよくわかる。

 砲弾が落ちてくるなか、昼も夜もなく働き、腕が上がらなくなった女性職員。
 激務の結果、心臓発作で倒れた行使・・・。

 国家・民族の枠を越え、「本当に困っている人を助けること」が、どれほど大変なことであるか。
 
 「生の声」が収められている本だからこそ、刺さるように実感。
 それとともに「人間には絶望と希望の両面が、確かにある」と思い知らされる。

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 また緒方氏は、現在の世界についてこう語る。
 

「正直に言って、現在の世界でこの仕事をしていて犠牲者ゼロというのはほとんど不可能だと思うんです。どこまで限りなくゼロに近づけるかということじゃないんでしょうかね」


 ここでいう「犠牲者」とは、UNHCRの職員。
 人道援助の職員が、武装勢力に殺される事件は後を絶たない。

 それでも今この世界で、命の危険を顧みずに援助物資を運ぶ人がいる。
 命をかけて交渉している人がいる。
 
 そして、そんな人を殺す人がいる。

 緒方氏の「生の声」は、今の世界の「生の声」。
 なぜ人は絶望と希望、そして絶望を繰り返すのか。

 難民支援の現場は、人間の本質を残酷なまでに暴き出す。
 
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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