「駅までの道をおしえて」感想。満足度200%の名作短編!大切な人を永遠に失った人だけ「見えるもの」とは?

★「駅までの道をおしえて」は、こんな人におすすめ!

●つらい死別をした人。
●「つらい死別をした人」の気持ちに、寄り添いたい人。
●大切な人の死を信じられずにいる人。
●「短時間で泣ける小説」をお探しの人。
●お腹いっぱいに満足できる短編を読みたい人。

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 「本当なんだ。今は遠くに行ってるだけできっと帰ってくるんだよ」(本文引用)
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 映画公開中の「駅までの道をおしえて」
 
 つらい死別をした人は、涙なしでは読めないだろう。

 なぜなら「駅までの道をおしえて」は、「死別した人の気持ち」を驚くほどそのまま描いてるから。

 私など本書を読んだ時、思わずこう叫んだほどだ。

 「これ、父が死んだときの母と、同じことを言ってる!」
 
 大切な人と死別すると、どんな気持ちになるのか。
 大切な人と死別すると、今まで見てきた風景はどう変わるのか。


 そんな疑問を持ったら、ぜひ「駅までの道をおしえて」を読んでみてほしい。

 「経験者にしかわからない気持ち」というものが、本当にこの世にあるのだと、思わず瞠目する。
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■「駅までの道をおしえて」あらすじ



 主人公のサヤカは、8歳の少女。

 最近、飼い犬のルーを失った。

 しかしサヤカはルーの死を信じられず、街を駆け出していく。

 サヤカは街なかで、一匹の犬と出会う。
 ルーとそっくりなので「やっぱり生きてた!」と思ったが、それは人違いならぬ犬違い。
 
 フセコウタローという老人が飼ってる犬だったのだ。

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 サヤカはコウタローと話すうちに、コウタローの家族について知る。
 
 幸せそうなコウタローの人生と家族。
 しかしコウタローの周辺の人と交流するうちに、「自分と同じ風景を見ていること」に気づいていく。
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■「駅までの道をおしえて」感想



 「駅までの道をおしえて」は、あっという間に読み終えてしまう短編だ。

 しかし心に残るものは、大長編より重い。
 
 大切な人を失ったつらさ、事実を受け入れられない戸惑いが、一文字一文字から溢れてる。
 一文字に百文字分ぐらい、「死別のつらさ」が詰まってる。

 だから短編であるにも関わらず、大長編に溺れに溺れて読んだような充足感がある。
 
 しかしそれは、私が「大切な人と死別した人」を、間近で見ていたからかもしれない。
 
 私の母は、父を亡くした時、サヤカたちと同じことを言っていた(あえて「サヤカたち」と書いた理由は、本書をお読みいただくとわかります)。

 まさか「本当にサヤカと同じことを考えていた」わけではない。
 
 しかし「そう思っていたものよ」と、しばしば口に出す。

 「駅までの道をおしえて」を読んだ時、母の「そう思っていた」にピッタリ当てはまっており驚いた。

 人は大切な人を失うと、それまでの自分では考えられないような思考に陥る。

 それはほとんど超常現象。
 おそらく、実際に体験した人でないとわからないものだ。

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 「駅までの道をおしえて」は、そんな「実際に体験した人でないとわからない気持ち」を、見事に文字にしている。
 言葉にできない悲愴、激情、錯乱を、恐ろしいほどリアルに文章化している。

 だから薄い短編なのに、内容は鉄のように重厚。
 「他者にはわからない思い」を伝える情熱が、一文字一文字に込められてるから、大長編に負けない「読んだ!感」があるのだ。

 これはやはり伊集院静さん自身、大切な人をあまりに早く失ったからだろうか・・・。

 そんな下衆の勘繰りをしながら、私は流れ出る涙を止めることも忘れ、ページを閉じた。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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