「いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか」感想。教員いじめ事件加害者の「謝罪文」がやっと理解できた。

評価:★★★★★

加害生徒が、「おもしろかったから」とか「遊んでいた」といったふうに答えることもある。このようなとき、彼らは「自分たちなり」の遊びとノリの秩序にしたがって、文字通り「おもしろい」からいじめている。(本文引用)
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 神戸で起きた教員いじめ事件。
 先日、加害者4人の謝罪文が公表されたが、多くの人がますます怒りと不信感を持つ結果となった。

 謝罪文が出る前から、加害者の供述にはただただ驚愕。

 「面白ければよかった」など、「相手の気持ち」を完全に無視した身勝手さには反吐が出る思い。
 
 さらに謝罪文からも、まだ「被害者がどんなに苦しんだかがまるでわかってない」様子がうかがえる。

 もはや憤りを通り越して、「呆れ」。
 世の中に事件は多々あれど、これほど「犯罪者の思考回路がわからない事件」は初めてだ。


 しかし本書を読み、「加害者の思考回路」がスルリとわかった。

 教員いじめ事件加害者の供述「面白いからやった」というのは、たぶん本音。
 疑いなく、本気でそう思っていたのだ。

 そして謝罪文中「自分の行動が間違っていたことに気づかず」という目を疑う一節も、おそらく本当。

 なぜなら「いじめ加害者」のなかでは「相手が苦しんでいても、ノリを保つこと」「相手が苦しむほどに全能感を得られること」が「善」だから。
 彼らにとって「いま・ここ」の「ノリ=いじめ」は、まぎれもない「善行」だからだ。
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 本書の著者・内藤朝雄氏は「いじめ研究」の第一人者。

 それだけに本書は、他の「いじめ本」とは明らかに格が違う。

 本書では「人間が、人間にとっての恐怖となる」=「モンスターとなる」心理を戦慄するほど深く鋭く解説。

 常人には理解できない「死に追い込むまでにいじめる心理」を、膝を打つほど納得できる形で解明する。

 なかでも強烈なのは、「いじめ加害者にとって、ノリは人間の命より重い」ということ。
 つまりいじめ加害者にとって、「人間の命はノリより軽い」という事実だ。

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 著者の取材によると、苛烈ないじめで自殺に追い込んだ加害者たちは、こぞって「反省の色がない」という。

 彼らは自分のいじめで死んだ人を、葬式の場でもいじめつづける。

 あくまで「あれ?死んじゃった?」というぐらいの軽い感覚。

 彼らは自分のいじめで人が死んだ後、またターゲットを変えていじめをする。

 なぜなら彼らにとって、「仲間とのノリ・悪ふざけ・奇妙な連帯感」は絶対的なもの。
 その「絶対的なもの」を保つことが、彼らにとって最高の「善」だから、もはや更生しようがないのだ。

 いじめは、そのときそのときの「みんな」の気持ちが動いて生じた「よい」ことだ。いじめは、われわれが「いま・ここ」でつながっているかぎり、おおいにやるべき「よい」行為である。いじめで人を死に追い込む者は、「自分たちなり」の秩序に従ったまでのことだ。
 大勢への同調は「よい」。ノリがいいことは「よい」。周囲のノリにうまく調子を合わせるのは「よい」。ノリの中心にいる強者(身分が上の者)」は「よい」。強者に対してすなおなのは「よい」。


 著者はいじめ加害者の心理について、こう分析するが、驚くほど「教員いじめ加害者の心理」に当てはまる。
 
 加害者にとって「激辛カレーを目に無理やり食べさせ、目に入れる」「車に乗ったり、汚したりする」「LINEでわいせつなメッセージを送らせる」など悪行の数々は、すべて「善行」。

 なぜならそれが「彼らのノリ・秩序・連帯感」を保つものだから。
 たとえそれがどんなに間違った行為でも、どんなに許されない行為でも 「彼らの共同体」のなかではまぎれもなく「良いこと」だったのだ。

 今までどうにも理解に苦しんだ「教員いじめ事件加害者」の思考回路。

 本書でやっと・・・本当にやっと、わかった気がする。

 今後の捜査や処分が気になるところだが、本書を読むかぎり、何らかの罰が下されても「本当の反省」は難しいのでは・・・と絶望的な気分になる。

 ちなみに著者の分析によると、いじめ首謀者というのは、「相手の気持ちがわからないわけではない」という。

 いじめの加害者は、いじめの対象にも、喜びや悲しみがあり、彼(彼女)自身の世界を生きているのだ、ということを承知しているからこそ、その他者の存在をまるごと踏みにじり抹殺しようとする。いじめ加害者は、自己の手(コントロール)によって思いのままに壊されていく被害者の悲痛のなかから、(思いどおりにならないはずの)他者を思いどおりにする全能の自己を生きようとする。


 相手にも「自分の人生・感情」があるとわかってるからこそ、それを破壊し、快感を得ようとする・・・。

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 もう全てが当該事件に当てはまりすぎて怖い。

 しかし「当てはまりすぎて怖い」からこそ、本書は読む価値がある。

 加害者の思考回路が手に取るようにわかれば、被害者側は対策を立てられる。

 普通の世界とはかけ離れた「善悪」の逆転、「ノリ」が最重要という偏狭な視野、相手に感情・人生があるとわかってるからこそ、破壊したくなる身勝手すぎる全能意識。

 本書でそれを知れば、いじめの「早期根本解決」が望める可能性大。

 「教員が苛烈ないじめをする」という、信じられない事件が起きた今、本書で「加害者の思考回路の真実」を知るべき。

 そして今後の「いじめ対策」に、ぜひとも活用すべきだ。 
  
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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