「安楽死を遂げた日本人」感想。安楽死を遂げなかった人にこそ、安楽死の意味が見えてくる。

評価:★★★★★超

 なぜ、そんなに笑っているの? あなたは、あと2時間でこの世から去ってしまうというのに。そのベーコンがなぜ、喉を通るんですか。そんなに焦げている平たい一切れが、あなたの最後の料理でいいんですか。
(本文引用)
______________________________

 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と同じく、「本屋大賞ノンフィクション部門」ノミネート作。
 本書を読み、改めて「本屋大賞は日本一レベルが高い賞だ!」と確信。
 「これは読むべき」「読まない人生は考えられない」と言いたくなる本ばかりノミネートされていることが、よくわかった。

 本書はタイトル通り、「安楽死を遂げた日本人」を追ったルポルタージュ。

 多系統萎縮症を患う日本人女性が、実際にスイスで安楽死を遂げるまでの様子をつづった本だ。


 一見、まだ死を選ぶには早いのではないか?と思える女性。
 彼女はなぜ、「今」安楽死を望むのか。

 そして彼女の家族は、彼女の安楽死をどうとらえているのか。

 本書では彼女の他にも、安楽死を望む人たちが登場。
 
 安楽死を遂げた者・遂げられなかった者・やめた者・興味をもつ者・・・。

 彼ら・彼女たちの姿を通して見えてくる、「人生終末期の意味」とは?
____________________________________

 

■「安楽死を遂げた日本人」内容



 患者は51歳の小島ミナ氏。
 ミナは体が徐々に動かなくなる、多系統萎縮症を患っている。
 
 ミナは「安楽死を遂げるまで」を読み、ライフサークル(スイスの自殺幇助団体)の存在を認識。
 「安楽死を遂げるまで」の著者であり、本書の著者でもある宮下洋一氏にコンタクトをとる。
※「安楽死を遂げるまで」のレビューはこちら

 ミナの「安楽死」への意思は固く、介護する姉たちもすでに同意。

 「時すでに遅しが一番怖いんです」



 ミナは体が少しでも動くうちに、コミュニケーションがとれるうちに、スイスに赴かないと間に合わないと考えている。

 時機を逃すと、「安楽死する選択」すらできなくなる。
 そのような事態を避けたかったのだ。

 ミナは着々と安楽死への準備を始めるが、異国間ということでトラブルも発生。
 
 このままでは安楽死ができないほどに、病状が進んでしまう。
 ミナは、スイスの医師と必死にコミュニケーションをとりながら、ついに「その時」を迎える。
 
 一方、宮下洋一氏には、他にも「安楽死を望む者」がアプローチ。
 
 果たして彼らは安楽死を実現したのか?
 そして彼らは、本当に「安楽死」を望んでいたのか?
 
 著者は複数の「安楽死希望者」と接することで、彼らが本当に望むものを見出していく。
 ___________________________________

 

■「安楽死を遂げた日本人」感想



 本書のすごさは、「安楽死だけ」を描いていないこと。
 そして「安楽死を遂げた日本人」だけでなく、「安楽死を遂げなかった人物」もきっちり書いていること。

 この二点があるから、本書はただの「刺激的な本」に終わっていない。
 「安楽死ってどんな感じなの?」という下衆な感情に訴える、炎上本になっていないのだ。
cfbc092ffa95c76effabb4dd07847d49_s.jpg

 本書を読んでいると「人間が生きていくうえで、本当に大事なことは何か」がくっきり見えてくる。

 これは、「安楽死を遂げられなかった人・あきらめた人」も描いてるからこその産物。

 安楽死を遂げたミナと、安楽死ができなかった・しなかった人の間には、一見大きな隔たりがあるように見える。

 かたや願いを叶えた成功者で、かたや苦しんで死んだ失敗者のように思える。

 ところが本書を読むと、この両者は驚くほど「根っこが同じであること」がわかるのだ。

 たとえば、末期がんにおかされた日本人男性。
 たとえば、翌朝に安楽死を控えていたドイツ人男性。

 彼らは二人とも、安楽死を望みつつも、安楽死をしなかった。
 
 ミナと対照的な二人に見えるだろう。

 だが実はミナと彼らに違いはない。
 「安楽死をした」と「しなかった」という事実が異なるだけで、心情的な違いはない。
 
 生きるうえで、死ぬうえで、何をしておきたいか。
 自分の人生で、何がいちばん大切か。
 「いちばん大切なもの」を知ってから、ようやく人生を終える覚悟ができる。
 「いちばん大切なもの」を知らないままでは、とうてい死ぬわけにはいかない。

 そんな「死ぬときは、自分の人生でいちばん大切なものに気づいてから」という点で、両者は共通しているのだ。

 この気づきは、今後生きていくうえで大きな財産となった。

 「安楽死を遂げた日本人」。
 読まれる際にはぜひ、「安楽死を遂げなかった人物」にも注目してほしい。

 両者の姿を見ることで、「自分にとっていちばん大事なこと」「自分が生きている意味」が、ありありと見えてくるだろう。 

詳細情報・ご購入はこちら↓
関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告