「ある晴れた夏の朝」小手鞠るい。ディベートを学ぶならこの一冊!「原爆肯定派・否定派」勝負の行方は?

評価:★★★★★超

「さきほどメイは、原爆は悪であると言いました。この定義に対して、ぼくは『イエス・バット・ノー』と返したい」
(本文引用)
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 今、子どもが学校で「学級討論会」を行っている。
 内容は「給食の終了時間」や「日直の人数」など。
 学校生活にまつわる問題を、肯定派・否定派に分かれて論を戦わせている。
 
 そこで買ってみたのが、子ども向けのディベート本。
 「ディベートの仕方」を解説しているのではなく、実際に子どもがディベートをしている小説だ。

 内容は「ヒロシマ・ナガサキへの原爆」。
 14、15歳の子ども8人が「原爆肯定派」と「否定派」の二手に分かれ、議論していく物語だ。

 「原爆を肯定? そんな意見があるの?」と思う人も多いであろう。
 しかし本書を読むと、「ああ、そんな考え方もあるのか」と驚き、目の覚める思いがするはずだ。


 さてあなたはどっちのグループを評価するか。
 そして軍配はどっちに上がるのか?
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■「ある晴れた夏の朝」あらすじ



 舞台はアメリカ。
 主人公のメイは、日本人の母と米国人の父を持つ15歳の少女だ。

 メイはある日、「公開討論会」のメンバーに誘われる。
 議題は「日本への原爆投下を肯定するか否定するか」。

 メイをスカウトしてきた生徒は、ともに否定派。
 彼らはメイが、被爆国・日本で生まれたことで、否定派への参加を依頼。
 メイ自身、否定派なので参加を決める。

 学校では時に「原爆は戦争終結のために必要だった」と教えることも。
 彼らはそんな教育に疑問を持ち、否定派として本番に臨む。

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 しかし敵もさるもの。
 肯定派もあらゆるデータや資料を持ち出し、「原爆の必要性」を主張。
 さらに日本人の歴史をひもとき、「投下されて当然」という意見も・・・。

 会場はその都度、肯定派・否定派に流れていく。
 そして彼らがたどり着いた結論とは?
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■「ある晴れた夏の朝」感想



 「この本こそ反戦そのものじゃないか!」
 私は読み終えた瞬間、体をブルブルさせながら、心の中で叫んだ。

 戦争のない世界とは、誰もが自由にものが言える世界だ。

 本書では自分の思想に凝り固まることなく、相手を受け入れ、冷静に論を交わしていく。
 どんなに相手と主張がかみあわなくても、相手の意見を頭から否定せず、そして決して暴力を用いることなく、共存共栄するがごとく論を発展させる。

 徹頭徹尾、そのスタイルを崩さない本書こそ、まさに「戦争のない世界そのもの、平和の実現維持そのもの」だ。

 「原爆投下の肯定・否定を争うなんて、最初から勝負は見えている」
 たいていの人はそう思うだろう。

 「原爆の肯定? そんな主張なんてできるの?」と、「馬鹿馬鹿しい」と考える人もいるかもしれない。

 しかし本書を読むと、そんな固定観念は根底から粉砕される。

 どんな「悪」も、個々人の思想・数値データ・言語・歴史的背景・家族の環境等あらゆる面から考えると、「肯定」も十分ありうる。
 よって、相手の主張がどんなものであれ、頭から否定し排斥することは「強制」であり「善」とはいえない。

 それは「善」のように見えて、人の思想・言論の自由を束縛する「悪」になりうるのだ。 

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 本書では「原爆の肯定・否定」以上に、「他者の意見をまずは受け入れ尊重する」ことを骨の髄まで教えてくれる。

 そしてそんな「他者を受け入れ尊重する精神」が、結局は差別・戦争・虐殺といった悲劇を絶つことにつながる。
 
 メイたちのディスカッションからは、原爆の否定・肯定関係なく「人類の過ちを繰り返さぬ思考法」がありありと見えてくるのだ。

 子どもたちが大人以上に、歴史を十分調べ、自分なりに咀嚼しまとめあげ、ディスカッションに臨む姿は読みごたえ十分。
 肯定派・否定派がどんどんブラッシュアップし、いよいよ迎える最終ラウンドでは、思わずゴクリ。
 最後の主張が終わった瞬間、私は本を開いたまま、涙をポロポロこぼしながら拍手をしてしまった。

 「原爆の肯定? そんなことできるわけない」と思う人ほど、本書を読んでみてほしい。
 「自分の結論」に変わりはなくても、「自分の結論に至るまでの思考の過程」に大きな変化が起こるはず。
 
 日本の8月に、ぜひとも読みたい名作だ。 

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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