「線は、僕を描く」感想。雪舟展に行く前に読みたかった・・・。人生の転機をくれる一冊。

評価:★★★★★

 何もかもに投げ捨てられて、とても孤独だったはずなのに、とても孤独だったことがこんなにも広く大きな世界に繋がっていた。
(本文引用)
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 日経新聞の書評で高評価だったので、さっそく購入。
 メフィスト賞受賞・漫画化決定と、「2019年最大の注目本」「隠し玉」「大本命」と話題だ。
 
 舞台は水墨画の世界。
 そして著者は水墨画家。
 
 読むだけで、目の前で水墨画がスー・・・と描かれていくような。
 白黒の活字で、白黒の絵画を描いているのに、深紅の花びらや深緑の山、白と水色の飛沫がとぶ川の流れが見えるような・・・。

 モノクロなのに鮮やかな風景が見える上質な映画のような・・・何とも美しい一冊だった。
 
 賞をとるのも至極納得の傑作だ。



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■「線は、僕を描く」あらすじ



 主人公・青山霜介は大学生。
 交通事故で両親を亡くし、一人暮らしをしている。
 
 ある日、青山は水墨画展の設営を手伝うことに。

 そこに現れた一人の老人に、青山は才能を見出される。

 「彼は若いのにすばらしい目を持っているよ」


 さらに老人は、青山を弟子にすると言い出す。

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 実はその老人は、日本で知らない人はいない、水墨画の大家。

 大学で法律を学ぶ、絵画とは何の縁もない青山を「育てる」というが、いったいどうやって?
 そして老人の孫娘との、水墨画対決の行方は?

 すべてを失い、がらんどうだった青山の人生が、墨の線とともに動き出す。
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■「線は、僕を描く」感想



 ベストセラーのコツは「知ってることを書く」こと。

 以前読んだ「ベストセラー・コード」という本に、そう書かれていた。
 (たとえばジョン・グリシャムは弁護士経験を生かして、法廷ものを執筆。
  銀行員だった池井戸潤が、銀行ものでベストセラー連発等々・・・。)

 本書は水墨画家が書いた、水墨画の小説。
 「知ってることを書く」がフルに生かされた作品だ。
 
 そう聞くと、なかには「ズルい」といった印象を持つ人もいるかもしれない。
 「スタート地点が違うんだから、書けて当たり前」と思う人もいるかもしれない。

 しかしそれは全く違う。
 「知ってることを書く」とは「ズルい」どころか、利益を度外視して、読み手にとてつもなく大きなプレゼントをくれることなのだ。

 知ってることを書いてくれることは、つまり、私たちの知らない世界を見せてくれること。
 私たちの人生・可能性を広げてくれること。

 本書を読んでいなければ、「墨のすり方ひとつ」で絵が違ってくることなど、一生知らなかった。
 本書と出会っていなければ、墨が落ちるポチャンという音から作品が始まるなんて、一生わからなかった。

 そして白黒のように見えて、実は私たちは水墨画の向こうに様々な色を見ていること・・・そんなことにも気づかなかっただろう。

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 だから「知ってることを書いてくれること」は、読者にとって掛け値なしに幸せなこと。
 人生を何倍にもふくらませてくれる、プライスレスな贈り物なのだ。
 
 さらに本書は、水墨画について描くだけではない。
 線を描くことで、主人公の再生をしっかり描いている。

 一瞬で家族を失い、がらんどうの心で、がらんどうの部屋に住み続ける青山。
 
 透明だった青山の輪郭が、水墨画の上達とともにくっきりと浮かび上がり、彩られていく。

 他の弟子や孫娘、友人との関係もからめて、青山の人生の輪郭が強く太くなっていく過程は、読んでいてとにかく清々しい。
 久しぶりに、読書で心がサッ・・・と洗われる思いがした。

 読書で人生を広げたい、自分の知らない世界をのぞいてみたい。
 心が最近、毎日トゲトゲ。さわやかな気持ちになりたい。

 そう思っている方に「線は、僕を描く」は本当におすすめ。

 読めばきっと、今年が変わる。
 あなたにとって「人生の転機の年」となる。

 (※10年以上前、上野の雪舟展に行ったが、あの頃にタイムスリップしたい気分。
 「ああ・・・、『線は、僕を描く』を読んでから雪舟の絵を見ていたら、どんなに味わい深く鑑賞できただろう」と、もったいないやら悔しいやら。

 また水墨画を観る機会があったら、本書を再読してから観に行こう・・・。)

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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