浅田次郎「姫椿」。ミステリーじゃないどんでん返しに二度読み、三度読み。

評価:★★★★★

 「それにしても愕いた。もっとも、トラブル・メーカーと異名をとった男の、いわばファイナル・ステージですから、そのポテンシャルの大きさといったらあなた、人間わざとは思えませんでしたよ」
(本文引用)
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 「浅田次郎さんって、本当に作家の名人だなぁ・・・」

 「姫椿」を読み、今さらながら心の奥からそう思った。
 本書に登場する「ある男」も、「人間わざとは思えない」行動をとる。

 しかし浅田次郎さんこそ、人間離れした業師。

 思わぬ結末に「ええーっ!?どういうこと?」と頭が混乱。
 二度読み、三度読み、四度読みし、見事にはさみ込まれた伏線に、思わず戦慄。

 「う、うまい・・・」と、北島マヤの演技を見た審査員(@「ガラスの仮面」)のような声を出してしまった。


 「どんでん返し」や「読者をだます」のは、ミステリーだけではない。
 フツーにありそうな日常ドラマのほうがよほど、人を頭から食ってしまうのだ。
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 「姫椿」は8編から成る短編集。
 
 飼い猫を喪い、新たな幸せを得ようともがくが、どうしても「誤った幸せ」を求めてしまう女性。
 死に場所を捜し求める間、運の良いタクシー運転手と出会う社長。
 堅実な商売で成功するが、誰にも言えない秘密を抱え、とうとう旧友に吐き出す者。
 飛行機で隣になった男性に、自暴自棄気味にサラリーマン人生を語る男性。
 外で倒れていた女性を介抱したところ、とんでもないトラブルに巻き込まれる紳士・・・。

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 どの話の主人公も、大きな後悔を携えながら、人生の大海を何とか泳ごうと必死。
 時に「このまま溺れてもいいかなあ」とヤケになるが、もがき苦しみながら生きている。

 さて、こう書くと「どこにどんでん返しなんてあるの?」と思われるかもしれない。

 確かに「どんでん返し」と言えば、ミステリーの専売特許。
 しかし本書を読んでいたら、少し考えが変わった。

 「日常の中にこそ、信じられないようなどんでん返しがあるのでは・・・?」

 そう強烈に思ったのは、第5話「トラブル・メーカー」。
 ある男性が飛行機でオーストラリアに向かう際、隣席の男性に話しかけられる。

 浜中と名乗る男は、会社の早期退職制度を使い、息子が住むブリスベンへ。
 妻とは別れ、娘は妻の側についたという。

 浜中は同期の仙田という男について、とうとうと語る。
 同期のよしみで、浜中は仙田と懇意にするが、実は仙田はとんでもないトラブル・メーカー。
 
 借金や女性関係で問題がつきず、ついに浜中や同部署の女性社員にもとんだ迷惑をかける。

 そしてついに仙田は、浜中の人生に決定的なダメージを・・・。

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 この結末は、全く予想できないもの。
 ラストを読めば十人が十人、「えっ? これ、どういうこと? えっ? えっ?」と思わず読み返すだろう。

 そしてよ~く読むと、「どんでん返し」をにおわす言葉があちこちに・・・。
 う~ん、まいりました!
 浅田次郎さん、やっぱり名人だわ・・・と、巨匠の手腕に深く深~くうなった。

 その他の物語も、ちょっとした「驚きの結末」が。
 人生、驚きの結末があるからこそ面白い。
 だから生きるのを、あきらめてはいけないんだろうな・・・と、強く勇気づけられた。

 ミステリー顔負けのどんでん返しと、浅田次郎作品らしい、何とも言えない温もり。

 名人作家の技が凝縮された一冊は、一食抜いてでも読む価値あり!だ。
                                                                     
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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