「かたみ歌」感想。「愛する人と会えなくなった。忘れるべき?」と思ったらおすすめ。

評価:★★★★★

誰かを護ろうという意思を持つ者は、きっと力強い姿でこの世に帰ってくる。
(本文引用)
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 愛する人と会えなくなった時、ふとこう思うことはないだろうか。

 前に進むには、忘れないと。

 しかし前に進むには、本当に忘れないといけないのだろうか。
 逆に、「忘れないからこそ前に進める」ともいえるのでは?

 もしあなたが、愛する人と会えなくなり、「忘れられない」と悩んでるなら本書がおすすめ。

 会えなくなっても、その人を思うことで、前に大きく踏み出せる。

 「かたみ歌」は、そんな励みをくれる短編集だ。


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  「かたみ歌」は7編から成る短編集。
 
 すべて、永遠の別れ・・・「死」にまつわる物語だ。

 ラーメン屋で起きた強殺事件、少年の命を脅かす謎の貼り紙、どうしようもない夫に悲観して無理心中を図る母親、詩の才能を夫につぶされ自死した女性・・・。

 こう書くと「ミステリー小説?」と思うかもしれない。
 「じゃあ、ホラー小説?」と思う人もいるかも。

 しかし本書はミステリーでもなくホラーでもなく、純粋なヒューマンドラマ。
 「死者と生者との交流」が描かれてるため、ファンタジー要素はあるが、ただただ純粋に「誰かを愛する」ということを描き切った人間ロマンだ。

 特に私が好きなのは、第一話「紫陽花のころ」。
 舞台は下町の商店街。
 ある若い男女がアパートに引っ越し、同棲を始める。

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 男は近隣を散策するが、そこである事実を知る。

 近所のラーメン店で強盗殺人事件が発生。
 殺されたのは店の主人で、妻と、重度の障害のある娘が遺されたという。

 男が現場周辺を歩いたところ、何やら不審な人物を発見。
 犯人はまだ捕まっていない・・・ということは、現場に戻ってきた犯人なのか?

 事実が露わになるにつれ、男女の仲にも変化が現れて・・・?

 本書の帯には「涙腺崩壊」と書かれているが、私は「紫陽花のころ」を読み、本当に涙腺が崩壊した。

 その理由は「誰かを思いつづけるということは、これほどまでに尊いものなのか」と頭を殴られたような衝撃を受けたから。

 そして「愛する人と会えなくなっても忘れる必要はないのだ」と、心の底から励まされたからだ。

 人が死ぬと、もう実際に姿も見えず声も聞けない。
 成長する姿も見られず、ともに何かを楽しむということはできなくなる。

 だからやはり、死は絶対的に悲しい。

 しかし時として死者は、生者に「生きていた時以上の何か」をくれる。
 生きている間にはわからなかった過ち、愚かしさ、幼さに、死者は気づかせてくれる。
 愛する人を置いて行った悔しさ、無念を心に抱えながら、生者をいつまでもいつまでも見守ってくれる。

 「紫陽花のころ」は、そんな「愛の永遠」を教えてくれるのだ。

 さらにそんな「永遠の愛の尊さ」が、若い男女の人生に一撃をくらわすラストが見事。

 私はその衝撃に、またまたはじかれたように涙が出た。

 死者は永遠に消えたわけではない。
 死んだからこそわかる真実を、生きる者に教え授けてくれる。
 現世に生きる「愛する人」を忘れることなく見守り、正しい道に誘ってくれる。

 死者はそんな役割を、永遠に担ってくれるのだ。 

 もしも今、「大切な人を忘れられず前に進めない」と悩んでるなら、ぜひ「かたみ歌」を。

 無理に忘れる必要はない。
 心に思いつづけることで、前に進めることもある。

 本書を読み、あなたがそう思えるようになった時、相手もきっと遠くで、あなたに笑顔を向けているだろう。
                                                                     
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「かたみ歌」を読んでから、この2曲を聴いたらますます涙が・・・。


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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