「はじめての文学 重松清」。反抗期の子どもが「読みたい!」と熱望。親子ゲンカに効く一冊。

評価:★★★★★

 あった。
 裕太からの年賀状、来てた。
 『あけまして ごめん』

(本文引用)
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 小学校高学年の娘が、「どうしても買ってほしい!」とせがんだ一冊。
 盛大に親子ゲンカをした直後、某通信教育の教材に取り組みながら、そう訴えたのだ。
 
 子どもは国語の長文を読み「そうそうその通り!ホンットーにそうなんだよ!!」と熱狂。
 「ママ、このお話の続きが読みたい! どうしても読みたい!!」と言いだしたのだ。

 出典には、重松清『カレーライス』」との文字が。 

 「よーしよしよし、重松清さんならぜひぜひ読ませてあげよう」と思ったが、単行本にはなってない様子。

 ちょっと調べたところ、どうやら「はじめての文学」という短編集に収められているらしい。

 重松清さんの短編集なんて、「小学生の読書の入り口」として最高!


 というわけでさっそく購入。
 読みながら、私まで「わかるわかる~!」「そうそうそうそう、親だって大変なのよね~」と何度も首肯。

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 子どものために買ったはずが、私が夢中に。
 まるでオモチャの取り合いのように、親子で本書を楽しんでいる。

 そして気がつけば、親子ゲンカはすっかり終わっていた。
 
 それにしてもなぜ重松清さんの本には、大人も子どもも引き付けられるのか。

 さらになぜ重松清さんの本は、親子ゲンカを鎮めてくれるのか。

 「重松清の魔法」が凝縮された本書に、その秘密が隠されていた。
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 本書な8編から成る短編集。

 少年野球の監督になり、メンバー編成に頭を抱える父親。
 両親の離婚で、「新しいあだ名づくり」に悩む少年。
 出勤後の父親の「意外な姿」に、人生を見つめ直す高校生。
 父親とケンカし、「絶対にごめんなさいは言わない」と心に決める息子。
 友達と仲違いをしたまま、新年を迎えた小学生・・・。

 どれもこれも「人と人は、どうしてこうもわかり合えないのか」とじれったくなる話ばかり。
 しかしラストは「人と人は、どうしてこうもわかり合えるんだろう」とジンとくる。

 特に胸が熱くなったのは、第一話「卒業ホームラン」と第七話「あいつの年賀状」。

 徹夫は甲子園出場経験を買われ、少年野球チームの監督を任される。
 そこで悩むのがメンバー編成。

 上手下手だけで決められるなら、まだ楽だ。
 問題は保護者。
 あまり上手でない子の親から、「祖父母が来るので試合に出してほしい」などと言われると、一気に胃がキリキリしてくる。

 しかも徹夫の息子・小6の智は、野球がうまくない。
 父親として「試合に出してやりたい」という気持ちもかすめるが、そこはあくまで公平に。
 一向に上達しない智を「嫌にならないのか、腐らないのか」と不思議な思いで見つめている。

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 徹夫にはもうひとつ、悩みがあった。
 それは中二の娘・典子の態度。
 「勉強して何になるの? 努力して本当に報われるの?」と毎日反抗し、無気力な生活を送っている。

 徹夫は、典子に反論できずモヤモヤ。
 努力が報われない日々を送る息子・智の姿を見ているだけに、強く言えないのだ。

 そして第七話「あいつの年賀状」。

 主人公は小5の男子。
 親友・裕太と絶交し、年賀状も出すもんかと意地を張る。
 
 そんな時、裕太が転校するとの知らせを聞き・・・?

 本書の登場人物は、みーんな意地っ張り。
 「何でそんな意地を張るかなぁ?」と、ため息をつきたくなる人ばかりだ。

 重松清は作中で、特に仲裁するでも説教するでもない。
 ただただ意地っ張りさんや、意地っ張りさんに苦しむ人の心を淡々とつづる。

 だから重松清を読むと、不思議なほど素直に「ごめん」と言える。

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 「説教されたから謝る」のではない。

 「ああ、意地を張るってかっこ悪いな。失うもの多いな。
 私は今、意地を張っていて、大切な人を失う可能性がある。
 それでいいのか? いや、絶対にイヤだ。
 私はこの人が大切だ。今冷静になり、自分の非を認めないと、この人を失ってしまう。
 私はこの人を決して失いたくない。

 だから・・・意地を張るのはやめよう・・・」

 そんな気持ちが、心の奥から自然と芽生えてくるのだ。

 もし大切な人と仲違いをしてしまったら、ぜひ「はじめての文学 重松清」を。

 一話一話が短いため、ケンカ鎮静に即効性あり。
 
 家族が集まるリビングに、そっと置いておいてはいかがだろうか。
                                                                    
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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