重松清「ニワトリは一度だけ飛べる」。刺激的であったか~い異色のビジネス小説。

評価:★★★★★

 「でもね、ニワトリだって飛ばなきゃいけないときはあるんですよ。ほんとうは飛べるんですから。自分が飛べるんだってことを、忘れちゃってるだけなんですから」
(本文引用)
______________________________

 小1の時、授業で先生が「ニワトリは飛べると思う人!」と聞かれ、手を挙げたのが私だけだった。
 先生は「●●さんだけが間違い」と言い放ったが、私は全く傷つかなかった。

 だって、私は見たことがあったから。
 祖父母が住む山口県で、ニワトリが飛ぶ(一瞬だけど)のを見たことがあったからだ。

 先生は「ニワトリが飛ぶ」と言った私を否定した。
 しかしそれで私はもっと嬉しくなった。

 「ニワトリが飛べると知ってるのは、クラスで私だけなんだ!」

 
 そんな猛烈な優越感に浸り、ウキウキしながら母親に報告したところ、母は大笑い。
 「そうよねえ、ニワトリ、飛ぶわよねえ! それにしても人と違う意見を言えた●●ちゃんは偉い!」

 母は「人と違うことを言った」と、私をおおいに誉めてくれた。
 だから私にとって「ニワトリが飛べる」ということは、ものすごーく嬉しくって楽しくって甘酸っぱい思い出につながっているのだ。

fbd71d4d3ed7193d6855973169f46574_s.jpg


 (ちなみに私の兄は「そうだよ!山口県には言葉を読める犬だっているんだから!」と鼻高々。
  それは叔父が運営していた植物園に「犬、入るべからず」と張り紙をしていたからだが・・・)

 だから私は、本書を即買い。
 読めばさっすが重松さん!

 ビジネス小説なのに童話が巧みに盛り込まれ、ココアのような温かく優しい物語に仕上がっている。
 重松さんの小説は、何でこんなに優しいんだろう・・・。

 またひとつ、「ニワトリが飛べること」が私の人生を彩ってくれた。

__________________________________

■「ニワトリは一度だけ飛べる」あらすじ



 酒井裕介は39歳。
 妻と、子どもが二人いるサラリーマンだ。

 ある日、酒井は突然異動の内示を受ける。
 異動先は「イノベーションルーム」。
 社史編纂などを一日中行なう、いわば「左遷部署」だ。

 イノ部屋に左遷されたのは、裕介だけではなかった。

 同期の出世頭・羽村もまさかのイノ部屋へ。
 
 そして他の支社から、若手社員の中川も異動。

 室長はミスが多いと有名な江崎だ。

514cfe4ed9e5cc39b2599641e7509db2_s.jpg


 突然の左遷にくすぶる裕介だが、彼のもとにあるメールが届く。
 件名は「ニワトリは一度だけ飛べる」

 さらに後日、裕介たちを「オズの魔法使い」になぞらえたメールが。
 
 羽村はカカシ、中川は「ブリキの木こり」、そして裕介は「臆病なライオン」に・・・。

 裕介は連日送られてくる、謎のメールに首をかしげながら、徐々に「働き方」を見つめ直すことに。

 そのうち、異動の謎があらわになり・・・?
 ________________________

■「ニワトリは一度だけ飛べる」感想



 サラリーマン小説に「オズの魔法使い」を入れてくるなんて、やっぱり「重松さんはすごいなぁ・・・。うまいなぁ・・・」と惚れ惚れする。

 ビジネス小説にありがちな「不正暴露」「大逆転」劇だが、登場人物を童話になぞらえるという斬新設定で、面白い面白い!

 勇気のないライオンは、心のない木こりに、どんな人間性を吹き込むのか。
 知恵のないカカシは、いつ自分の無能ぶりに気づき、本当の知恵を取り戻すのか。

 三者三様の長所・短所を生かしながら、「三匹のおっさん」さながら「三匹のビジネスマン」が正義を貫く展開は、何とも痛快。

e7843d13bb96d19aff7097e0719667bf_s.jpg

 
 さらに逆転までの道筋も、重松作品では珍しいほどサスペンスフル。
 「えっ?あの人がまさか・・・」と、意外な真相が明かされる。
 温かさのなかにも、胃が痛くなるスリリングさもあり、息を止めて読んでしまった。
 
 単なる「ビジネスマン逆転小説」とは、明らかに一線を画す「ニワトリは一度だけ飛べる」。
 
 「自分はいったいどのキャラクターだろう? ライオン?カカシ?木こり?」
 そんなことを想像しながら読むのもオススメ。

 己のキャラクターがわかったら、そしてその欠点を埋める努力をすれば、必ず人生大きく拓ける。
 
 より豊かな人生をおくる道筋が、ピカッと見えてくることだろう。

詳細情報・ご購入はこちら↓
関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告