「木曜日の子ども」感想。重松清史上最恐ホラー。「良い親」幻想は子どもをここまで追いつめる!

評価:★★★★★

「命を武器にして闘うしかない奴っていうのは、いるんだよ、どうしようもなく」
(本文引用)
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 「良い親であろう」と思うことは、悪いことではない。
 悪いことではないが、危険なことではある。

 「良い親であろう」と思うことは、時に子どもを追い詰める。
 「理想の親」像を追い求めると、子どもの姿が見えなくなる。

 重松清最新刊「木曜日の子ども」は、世の親たちにそんな警鐘を鳴らす。

 「良い親」であろうとする者の行き着く先は・・・とんでもない地獄かもしれない。

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■「木曜日の子ども」あらすじ



 主人公・清水は、今必死に「父親」になろうとしていた。
 結婚相手の女性に、14歳の息子がいるからだ。

 息子・晴彦は、以前苛烈ないじめに遭っていた。
 母親の離婚後、同級生の一部が、母親を侮辱する書き込みをネットにアップ。
 
 いじめはエスカレートし、晴彦は自殺未遂をする。

 そして今、晴彦と母親、そして清水は新生活を送ろうとしている。

 引っ越した先は閑静な住宅街。
 やっと落ち着いた生活を手に入れたと思ったが、そこからが事件の始まりだった。

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 晴彦の転校先は7年前、大量殺人が起きた中学。
 生徒が給食に毒物を混ぜ、生徒9人が死亡、多数の重軽症者を出す大惨事があったのだ。

 事件が起きた街では、加害者・被害者宅が空き家、更地になるなど爪痕が残る。

 しかし清水たちは「昔のこと」を気にせず、快適な新居に住みはじめる。
 隣人は気さくで、近所づきあいもうまくやれそうだ。

 清水一家は希望に満ちていた。

 しかし清水には、どうしても気にかかることがあった。

 事件当時を知っている人が、異口同音にこういうのだ。

 晴彦が、あの事件の犯人に似ている、と。

 その後、街には不審死が相次ぐように・・・。
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■「木曜日の子ども」感想



 本書は一言でいうと、サイコホラーだ。
 恐怖度は、日本文学史上最強レベル。
 描かれているような事件は、まず起こらないだろう。

 しかし本書を読んでいると、胸がざわついて仕方がない。
 明日にでも起こるのでは・・・という不安に襲われ悪寒が走る。

 なぜなら、この物語が突きつける問題はとてつもなく現実的だから。
 親として、絶対に一度はとことん考えねばならない問題だからだ。

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 子どもが誰かを殺す。
 はたまた、子どもが自分を殺す。

 そんな事件が起きた時、大人はいつも「命の大切さ」を唱える。
 親はわが子に、「あなたがいちばん大切」「絶対に自殺なんかしないで」などと語りかけるだろう。

 しかし子どもが本当に追い詰められた時、そんな言葉は何の効果もないことを、本書はバラシてしまう。
 正論なんかじゃ子どもを助けられないことを、本書は容赦なく言ってしまう。

 だからこの物語は恐ろしい。
 思いっ切りフィクションなのに、「今そこにある危機」に思えて仕方がないのだ。

 子どもだって本当は死にたくない。
 でも「自分の未来を終わらせることしか方法」がないというときもある。

 さてそんな時、親は何ができるのか。

 本書は凄惨なシーンを交えながら、世の親にギリギリまで問い詰める。
 「お前は、本当に『子どもにとって良い親』なのか?」と。

 今、「親らしくあろう」「良い親であろう」と必死になっている人は、ひと息ついて、本書を読んでみてはいかがだろうか。
 
 その理想像は、もしかすると「子どもの気持ちを無視したもの」かもしれない。
 理想像を追う親の姿は、子どもを追い詰めるものかもしれない。
 
 「良い親であろうとすること」-その幻想と執着を忘れた時、人は本当の親子になれるのだ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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