ハマりすぎ危険!東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」。でもこれどうやって映画化したの?

評価:★★★★★

疑問の第二は、じつは崇史にとっては圧倒的にこちらのほうが肝心なことだが、智彦が恋人だと紹介した麻由子が、なぜ現在自分の恋人になっているのかということだった。
(本文引用)
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 映画「パラレルワールド・ラブストーリー」が5月に公開される。
 予告編を観ただけでも「面白そうな雰囲気」ムンムン。

 映画公開に向けて、原作をじっくり読んでみた。

 そこで思った。
 「・・・これ、どうやって映画化したの?」

 予告だけ観ると、素直なファンタジーに思える。
 「主人公の玉森裕太君と吉岡里帆さんが付き合っていて、でも染谷将太君が「僕の彼女」と言って紹介したのも吉岡里帆さんで、玉森君が大パニック!」・・・と、「ややありがちな人間入れ替わりもの」に見えるのだ。



 ところが!
 原作を読んでビックリ。
 「素直なファンタジー」とか「ややありがち」なんて単純なものでは、全くなかった。

 発禁本級の「人類の根幹を揺るがす問題作」だ。
 
 東野圭吾氏は本書について、こう語る。
 

 アイデアが生まれたのは20代。
 小説にしたのは30代。
 そして今ではもう書けない。


 ここで言う「今ではもう書けない」とは、東野圭吾氏自身にまつわることであろう。

 しかし「パラレルワールド・ラブストーリー」は、ある意味本当に「今は書けない」。
 AIの台頭に慄く今、「人間の脳の危うさ」にタブー寸前まで迫っているのだから。
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■「パラレルワールド・ラブストーリー」あらすじ



 敦賀崇史は大学院に通学中、ある女性に一目惚れする。
 彼女は、並走する電車の乗客・津野麻由子。

 崇史は電車と電車がグーッと迫るたびに麻由子の姿を見つけ、恋愛感情を抱く。

 しかし麻由子は何と、崇史の親友・智彦の恋人と判明。
 崇史は「何であいつと・・・」と嫉妬する。

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 場面変わって、崇史の部屋。
 崇史が目覚めると、ホットケーキの香りがする。

 ホットケーキを作ってくれているのは津野麻由子。
 麻由子と同棲中の崇史は幸せを感じるが、ふといままでにない不安を感じる。

 そういえば夕べ夢を見た。
 親友の智彦が、麻由子を恋人として紹介している夢を・・・。

 果たして麻由子の恋人は、崇史なのか智彦なのか?
 二つの世界が展開される真相とは?
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■「パラレルワールド・ラブストーリー」感想



 「今ではもう書けない」と東野圭吾は言うが、こんな物語は「東野圭吾にしか書けない」。
 
 「ガリレオ」シリーズでもそうだが、東野圭吾のすごさは「ヒトと科学技術」の見事な融合。

 脳科学について「これでもか」というほど緻密に描き、そのうえで恋愛・友情ともシットリ絡めちゃう。

 理科系の専門用語が飛び交い、チンプンカンプンになりそうなのに、ラストでホロリとさせる手腕は「さすが」である。

 しかしその一方で、本書には「恐怖」を感じる。

 「『私という人間』なんて、ちょっとしたことで壊れてしまう」・・・その脆さを残酷なまでにえぐり出しているからだ。
 
 機械には「私」という思考はない(たぶん)。
 「私はなぜここにいるの?」「『私』って何?」という疑問を持たないため、常に行動が安定しているといえる。

 だが人間は時に「自分」というものがわからなくなる。
 よって言動が不安定になり、社会に適応できないという事態も生じる。

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 「パラレルワールド・ラブストーリー」は、そんな「脳の弱さ」を危険水域ギリギリまで描写。
 あまり夢中で読むと、「私っていったい何なんだ!」という疑問が生じ、自分を壊したくなるかもしれない。

 非常に面白い小説だが、のめり込み過ぎると危険だ。

 5月に公開される映画は、いったいどのような作品なのか。
 どうやってこの数奇な物語を映像化したのか。

 今から新緑の季節が待ち遠しい。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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